第26話 あれって、女児向けのアニメよね?
小さいころ、メグミは週末の朝に放映されるテレビアニメを楽しみにしていた。
いわゆる、戦う魔法少女が主人公の女の子向け番組。絵柄や登場キャラは時代によって変化していったが、複数の魔法少女が現れ悪人を懲らしめるスタイルは放映開始以降、変わりない。
彼女は歴代の魔法少女にあこがれ、大変なファンでもあった。主人公のモノマネをして両親や大人たちを楽しませてきたのである。
そんな時に、魔法が発見されたというニュースが幼い彼女の耳にも入った。十歳の時に魔法覚醒因子を接種すれば、数年後、魔法が使える可能性がある。そんな夢のような話が現実となったのである。
メグミは両親に頼んで、覚醒因子を接種した。
中学に進級した十三歳の春。その結果がもうすぐわかる――待ちに待ったその日がやって来るのだと、彼女は期待にムネを弾ませていたころであった。
月曜日――昨日は魔法少女の大活躍で宿敵を爽快に倒した。メグミは気分よく学校に向かうことになる。(自分も魔法が使えるようになったら、彼女たちのような悪に立ち向かう正義の魔法使いになる――)そんなことを思いながら……
「おはようメグ、今日はご機嫌だね」
中学に入って仲良くなった中守寿々がメグミに挨拶する。
「おはよう寿々、フ、フ、フ……だって、昨日はエイミーが大活躍だったんだもの!」
「エイミー?」
寿々は良くわからないという表情を見せていた。
「ファンシーマギカのエイミーだよ」
タイトルを聞いて、「ああ……」と寿々は微妙な表情になる。
「メグって、まだそんなの観てるの?」
まだ? そんなの?
「――えっ?」
メグミは混乱する。
「私たち、もう中学生だよ。あれって、女児向けのアニメよね?」
女児向け――その言葉にショックを受ける。
パステルカラーを基調とした絵柄は確かに子供っぽい。
(でも、主人公は中学生の設定だし、人間関係も結構リアルで、戦闘シーンも本格的。そんなに子供向けとも思えないのだけど――)
「そもそも、中学生にもなって魔法少女の話なんて恥ずかくない?」
魔法少女が恥ずかしい?
「だ、だけど、魔法は本当にあったんだよ? 私たちだって魔法が使えるようになるかもしれないんだよ」
「もしかして、メグって接種したの?」
「――えっ?」
「魔法の能力に覚醒したら大変だって聞いたよ」
覚醒したら大変? どういうこと?
「研究機関へムリやり入らされて、モルモットにされるんだって?」
「そ、そんなこと……」
確かに接種後の説明で、魔法能力が覚醒した場合、指定の高校と大学へ入学。その後は複数の企業や公的機関が就職先として予定されている――そういう話だった。
その就職先が研究機関だとしたら――?
「それじゃ、寿々は……」
「私は接種しなかったよ。お父さんが強く反対してね。私もしなくてよかったと思っている――」
メグミは言葉を失った。魔法少女に憧れて、将来、アニメの主人公のような正義の味方になる――そんな夢が幻だったと知って、絶望した。
その日の夜、メグミは大事にしていたファンシーマギカシリーズのグッズを全て処分した。騙された――そんな気分になり、しばらく立ち直れなかった。
それから一か月。やっと魔法に対する期待を払拭できたと思った頃、一通の封筒が家に届く。
『魔法覚醒因子――陽性』




