第22話 手本を見せてもらえますか?
その日の午後――
いつものように魔法の授業となるのだが、今日は校庭ではなく魔法競技場へ集まるようにダグラスから指示される。そして、魔法競技、ウィッチシュート用の防護スーツも着用するように言われていた。
防護スーツは厚手の布地で全身を覆う形態である。ダイバーのウェットスーツをイメージするといいだろう。ただし、耐火、耐衝撃の超ハイテク素材を使用しており拳銃の弾丸程度なら防げるというスグレモノ。なぜ、そのようなスーツを着用するのかというと、競技では相手への直接攻撃が認められているからだ。
かなり体にフィットするので、思春期の少女たちには少し恥ずかしさも覚えてしまう。
担任の舘林も授業に参加し、生徒と同じ防護スーツを着用していた。普段のおとなしい服装では気づかなかったが、こうして見るとナカナカ、出るところが出ている。
「あのう、先生は防護スーツを着用しなくていいのですか?」
舘林が尋ねると、ダグラスは「あんなものはいらない」と即座に答える。そもそも、彼用のオーダーメイドスーツは間に合っていない。借り物のスーツはサイズが合わず、逆に動きが緩慢になると言うのだった。
「今日はひとりひとり、魔法のレベルを確認しようと思う」
魔法科の生徒三十人を整列させてダグラスはそう説明する。
「各自、センターラインからゴールボードに目掛けてファイアボールを一回だけ放て」
生徒がざわつく。ウィッチシュートという競技のコートはバスケットボール程度の大きさで、センターラインからゴール板までは十五メートルほど。今年の四月から魔法の練習を始めたばかりの彼女たちにとって、そこまで魔法を飛ばすのは全力でも届くかどうかという距離。ましてや五十センチ四方のゴールボードにコントロールするのは至難の業だ。
「先生!」
その声は亜紀だった。
「手本を見せてもらえますか?」
先ほど企んでいたことを早くも言ってきた。もちろん、彼の魔法レベルはたいしたことがない――そう思ってのことだ。
「手本か……」
ダグラスは少し考えたあと――
「いや、手本はなしだ」
「ちょ、ちょっと! 逃げるつもり!?」
亜紀がバカにしたような言い方をするのだが、ダグラスは「そうじゃない……」と応える。
「先に手本を見せるとレベルの違いに困惑して、本来の実力が出せないかもしれないからな」
「そんなことを言って! 本当は魔法が使えないんじゃないの?」
そう挑発するのだが、ダグラスは「フ、フ、フ」と笑う。




