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第20話 オレだったら、こっそり練習するぞ

 ダグラスは生徒たちに「最近魔法を使ってみたか?」そんな質問をした。


 魔法を――?


「私たちは授業以外で魔法を使ってはいけないと言われているのよ」


 危険性があるということで、授業以外での魔法使用を禁止されている。生徒だけではない、卒業生も含めて、魔法を使用するには行政の許可が必要なのだ。


「そんな約束をいちいち守っているのか?」

「ま、守っているのかって……」


 教師からルールを破ることを勧める!?


「オレだったら、こっそり練習するぞ」

「――!?」


 本当に魔法を覚えたいと思っているのなら、ルールに囚われず、誰にも迷惑をかけないところで魔法を使ってみたいと思うはずだ――そう、ダグラスは言い切る。


「な、なにを言っているの?」

「せ、先生、生徒にそんなことをおっしゃっては……」


 舘林が言いかけたところをダグラスは遮って、「それで、魔法を使ったものはいるか?」とあらめて質問する。すると、ゆっくりと手を上げる生徒が一人――


「マ、マナミ!?」


 驚くメグミ。仲のイイ彼女がルールを破って魔法を使った!?


「ちょっと――授業で走るようになったら、なんか体調が良くって――そしたら、魔法も調子が良くなるかな……なんて、思ったりして……」

 そんなことを言うマナミに、メグミは言葉を失う。


「それでどうだった?」


 ダグラスが尋ねると、マナミは「それがね!」と急にテンションが上がり――

「同じファイアボールの魔法でも、威力が全然違うの!」

「えっ?」

「威力だけじゃないんだよ。前は一回魔法を使うだけで何とも言えない倦怠感があったのだけど、それがほとんどないの!」


 マナミが言っていることに理解が追い付けず、メグミは呆然としてしまう。


「先生! もしかしたら体力がつくと魔力量が増えるんですか?」


 マナミの質問に、「それは少し違う」とダグラスは応える。


「人は生まれながらに魔力量が決まっている。だが、魔力を放出するためには体力と精神力が必要になる。魔力、体力、精神力、そのバランスが重要なんだ」


 彼の説明をマナミは目を輝かせて聞いていた。


「体力をつけるために、先生は走るように言ったんですね!」

「体力だけでないぞ。走ることで精神力も鍛えられる」

「だ、だったら――」


 二人の会話に口を挟むメグミ。


「だったら、最初からそう言えばいいじゃない! なんでそう説明しないの!?」

「――その質問には答えない」

「なっ!」


 さすがに頭にくる。


「なんで、マナミの質問には答えて、私の質問は答えないのよ! 思いっきり依怙贔屓(えこひいき)じゃない!」


 ダグラスはヤレヤレという表情を見せて――


「それじゃ、また特別にヒントをやろう。藍川の質問と大埜の質問には大きな違いがある」

「なによ、それ。どこが違うのよ」

「そもそも、大埜のは質問でもない」

「なっ!?」


 自分の質問は質問でもない!? まったく理解できない。

 だが、ダグラスは――


「まずは質問とは何か――それを理解することだな。それが指導を受ける者の心得だ」

 それだけ言うと、教卓の前を舘林に譲った。


「え、えーと……他に質問がある人――」


 戸惑いながらも舘林がその場を引き継ぐと、誰からも発言がないので、「それじゃ、ホームルームを終わりにします」とため息をつきながらダグラスと一緒に教室を出て行った。

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