第17話 ただし、条件を変更する
「ダグラス副担任、あなたの進退をかけて、今年中に一勝をすると宣言してください」
麻村がいきなりそんなことを言い始めるので、再び会議室が騒がしくなる。
「校長、彼を雇ったのは生徒の魔法技量向上。そのくらい当然ですよね?」
ことの成り行きを黙って聞いていた校長で理事長でもある清野蓮。全員の視線が彼女へ向く。
「――教頭、ひとつ聞いていいですか? 私とマグナマル先生が校長室で会話していた内容をなぜ知っているのでしょう?」
麻村は「おや? 校長がお話しませんでしたか?」ととぼけるので、清野は「――まあいいでしょう」とつぶやく。
「――そうですね。確かにそのくらいの気持ちでやってもらわないと困ります」
彼女がそう応えると、麻村は『承諾を得られた』と判断し、ダグラスに説明する。
「実のところ、理事会でも保護者会でも魔法科の存続意義が問われています。せめて一勝くらいしてもらわないと、年末までに魔法科の廃止について決議を求められる可能性があるのです。キミの進退だけではないのですよ」
麻村がニヤけた顔でそう言うので、(なるほど、そういうことか……)とダグラスは考えた。
「――わかったよ」
ダグラスがそう応えると、麻村は「では、そういうことで――」と話をまとめようとするので――
「ただし、条件を変更する」
「なんだと!? おまえ今、了承しただろ!」
岳田がまた立ち上がって怒るので、麻村が「まあまま、落ち着きなさい」となだめる。
「それで、その条件とは?」
「オレが受け持っている一学年が次の競技会で優勝する。それができなかったら、オレはこの学校を出て行く。それでイイか?」
「――!?」
一勝どころか、優勝!? しかも、次の競技会で!?
「本気で言っているのですか? 次、つまり夏季大会まで二か月しかないのですよ」
「ああ、二か月もあれば十分だ」
「わかりました。校長、それでイイですね?」
清野は「彼がそう言うのだから、私は構いません」と応えた。
「――それでは、この件は議事録に残しておきます。他になければ解散してください」
麻村の合図で会議室からバラバラと出席者が出て行くなか、学年主任の岳田が麻村のところに近寄り、耳元でささやく。
「教頭、あの異世界人、思っていたよりバカですな」
こちらが用意していた条件より分の悪いことを約束するなんて――と、岳田は口角を微かに上げる。
「夏季大会で魔法科が惨敗し、あの生意気な異世界人はクビ。当然、理事会、保護者会は魔法科存続に反対する」
「それだけはないですよ。校長には役に立たない人間を雇った責任を取ってもらい、学校の経営から退いてもらうことになるかもしれません」
「なるほど! さすが教頭。そこまでお考えでしたか!」
二人は「フ、フ、フ……」と微かに声をあげて笑う。
「しかし、万が一……万が一ですよ。一学年が夏季大会で優勝したりしたら――」
「その心配は無用です。あの方がすでに動いてくれています」
「そうでしたか――それなら安心ですな」




