第16話 ここはひとつ宣言をしていただけますかな?
「それでは次の案件ですが、魔法科一年、魔法科目の授業について――」
ダグラスが魔法科の副担任となり、魔法の授業を受け持つようになってから本日で一週間。その日の職員会議で、議長の麻村教頭からそういった議題があがった。
「話によると、マグナマル魔法科一年副担任、キミは魔法の授業と称し生徒をただ走らせているだけらしいが、それは事実かな?」
全員がダグラスに顔を向ける。会議をつまらなそうに頬杖をつきながら聞いていた彼が、「ああ、そうだ」と素っ気なく応えた。
「――そうですか。私は魔法に関してあまり知識がないので教えてほしい。ただ、走るだけで魔法は上達するものなのかな?」
それを聞いたダグラスは「プッ――」と思わず吹き出してしまう。
「いや、失礼。いくら知識がないといえ、そんな質問をされるとは思わなかったからな」
黒縁眼鏡の温和な面持ちである麻村も、さすがにそのような言い方をされると気分が悪い。「それで、どうなんだね?」とそれまでの口調が変わって、少し威圧的になる。
「走るだけで魔法が上達するわけないだろ?」
あっさりと答えるので、一年の学年主任である岳田が、ディスクを叩いて立ち上がった。
「いい加減にしろ! じゃあ、なんで生徒を走らせる!?」
岳田は今年で三十八歳。年齢よりも若く見え、社会科の先生というより体育教師のような筋肉質の体格をしている。そんな男が怒鳴るものだから、会議室の雰囲気が気まずくなった。
「も、申し訳ありません。マグナマル先生と授業内容について、これから話し合いますので……」
天然アフロにビン底眼鏡の魔法科担任、舘林が慌てて謝るのだが、岳田は怒りが収まらないという表情で、舘林を睨みつける。すると、舘林はうつむいて黙ってしまった。
「――その質問には答えない」
「なっ!」
ダグラスがそんな言い方をするので、岳田はカーッとする。自分の席を離れ、生意気そうな若造へ向かって歩き出した。
「おまえ、人をバカにするのも――」
「まあ待ちなさい、岳田君」
そう声をかけたのは麻村だった。
「いいでしょう。答えたくないというなら、ムリに答える必要はありません。しかしマグナマル先生、清野校長とある約束をしたとお聞きしてます」
少し笑みをこぼしながら、彼は話を続ける。
「魔法競技の三校対抗戦で、今年中に一勝する。そんな約束をしたそうですが、それは間違いないですか?」
会議室がざわついた。清蓮学園は対抗戦で全戦全敗。それも完敗に等しい内容で終わっている。それを知っているので、勝利なんてとても望めないと誰もが思っているのだ。
「――ああ、そういう話があったな」
「では、ここはひとつ宣言をしていただけますかな?」
「宣言?」
それまで、つまらなそうに聞いていたダグラスが顔を上げ、麻村を見た。
「あなたの進退をかけて、今年中に一勝をすると――」




