第15話 これは面白くなってきた
メグミたちが走り出したのを確認したダグラスは――
「さて……舘林先生、ちょっと生徒たちを任せていいですか?」
用事を思い出したので、少しだけこの場を離れると告げる。
「用事って、何のですか?」
「すぐに戻ってきます」そう言って、ダグラスはさっさと離れていく。
生徒たちから見えない校舎の陰にはいると、突然、ダグラスの姿が見えなくなった。
いや、見えなくなったわけではない。自分に強化魔法を付与し、校舎の壁を駆け上ったのだ。そのまま屋上に到着する。
「ざっと数えただけでも十数個はあるな」
彼が数えたのは魔力を帯びたモノ。ダグラスにいた世界では魔道具と呼ばれ、魔力操作や結界などに使われているものだ。
ふつうの人間にはただの石ころ程度にしか見えないのだが、賢者クラスの魔導士なら見分けができる。
それが、学園の敷地を取り囲むように複数存在していた。
「目的は結界……というわけではないな。となると魔力感知あたりか」
魔力感知――文字通り、魔法を使用したときに発生する魔力を感知することだ。魔道具にあらかじめ魔力感知の魔法を封じ込め、魔法を使用した形跡を調べるのである。
魔道具を操る術者の能力によっては魔力の有無だけでなく、魔法の種類や魔力量も計れる。
つまり、この学校で使用している魔法を誰かが調査している?
「……いずれにせよ、これがあるということは、それを操る者がいるということだ。魔力の存在が発見されたのは十年前――清野がそんなことを言っていたが、はてさて、実際のところはどうなんだ?」
そんな独り言をつぶやくダグラスだったが、何かの気配を感じさっと飛び上がる。
刹那、黒い矢が数本、ダグラスが立っていた位置に突き刺さった。
「挨拶もなしに攻撃とは失礼なヤツだ。せめて姿を見せろ」
そんなことを見えない相手に伝える。何の返事もない。
「それなら……」
またダグラスの姿が見えなくなる。今度は隣の校舎屋上に現れるとその場所にいた人影に迫った。
「オマエは誰だ? オレに何の用だ?」
慌てて逃げ出す相手に、「そうはさせるか」とダグラスは右手を振り抜く。すると光の輪が飛び出し、相手のカラダに絡んだ!
「――!?」
動けなくなった人影はそのまま横たわる。
ダグラスはそれに近づくと、「チッ」と舌打ちするのだった。
「逃げられたか」
捕らえたと思ったそれは土人形だった。変わり身の魔法なのか、最初から人形がダグラスを攻撃していたのかはわからない――が、
「この世界にも賢者クラスの魔導士がいるのは間違いないな」
清蓮学園の校長、清野蓮から説明されたこの世界の魔法レベルとはかけ離れた術者が確かに存在する。
清野が嘘をついた?
いや、そういうわけではないだろう。この学校の生徒たちが使える魔法は確かに清野の言うとおりだ。
それでは、今のは?
「……これは面白くなってきた」
ニヤリとしたあと、ダグラスは屋上から飛び降り、何食わぬ顔で校庭に戻ってくる。
「ちょっと! いったい、どこをほっつき歩いていたのよ!」
メグミの声がしたので、ダグラスは「フフ……」と笑った。
「私もいろいろと忙しいのだ。ムダ口を叩くほど余裕があるなら、もっとペースを上げろ」
「忙しい――って、いつも寝ているか、ふらっと散歩に行くがどちらかじゃない。このエセ教師」
そんなことをつぶやくメグミ。
「おい、聞こえているぞ」




