第10話 ちょっと先生の肩を持ちすぎなんじゃない?
「遅い! 五分で出てこいといっただろ! 十分は経ったぞ!」
いきなり、仁王立ちしたダグラスに文句を言われるメグミたち。
「女の子は準備に時間がかかるのよ」
まったく、このセクハラ男は――と、メグミはイライラするのだが、ダクラスの横暴はまだまだ続く。
「まあいい。それじゃ、校庭を走れ!」
「――えっ?」
走れ?
「ちょっと! だから、体育の授業じゃないのに、なんで走らなければならないのよ!」
「その質問には答えない」
「なっ!」
さすがに、ムカついてしまう。
「質問に答えないって、どういうことよ!」
「いいから走れ!」
「あのねえ――」
「メグちゃん、先生が走れって言うのだから、走ろ?」
マナミがメグミのジャージを掴んで引っ張った。リナも無言で走り始める。メグミも(仕方ない……)という顔で、校庭に描かれた一周二百メートルのトラックへ向かった。
「それで、何周走ればいいの?」
「いいと言うまでだ」
なんか、反論するのもバカバカしくなり、言われたとおりに全員トラックを周回する。
「おい! どこのクラスだ!? 勝手にトラックを使うな!」
そう怒鳴っているのは、体育教師の小掠。ダグラスのところにやってくる。
「これはすまん。空いていたから使ったのだが、オマエが使うのか?」
そう言われ、ムッとした顔をする小掠。
「使わないが、今は体育の授業じゃないだろ!? さっさと教室へ戻れ!」
「あれ? 清野からは、使っていなければどこを使ってもいい――そう聞いていたのだけど?」
校長であり理事長でもある清野の許可があるとなると、小掠も文句が言えなくなってしまう。「荒らすんじゃないぞ!」とだけ注意してその場を離れた。
「ねえねえ、あの小掠を一言で追い返したよ。なんかカッコ良くない?」
一緒に走るマナミがそう声をかけてくるので、「校長の威を借りてるだけでしょ?」とメグミは呆れた声で応える。
「ねえマナミ、ちょっと先生の肩を持ちすぎなんじゃない?」
「だって、ダグラス先生、異世界の大賢者なんでしょ? スゴいじゃん!」
まあ、そう言われればそうなのだけど――
(本当にアイツ、大賢者なの?)
確かに召喚魔法によって召喚されたのだが、彼が異世界人であると断定されたわけではない。ましてや、大賢者だなんて、本人の自己申告でしかないのだ。彼が魔法を使っているところを一度も見ていなし、考えれば考えるほど、信じられなくなる。
ふと、彼を見ると――大あくびしながら、ベンチにだらしなく腰かけている姿が見えた。
そのまま、居眠りを始める。
(ちょ、ちょっと! まさか、ただ自分がサボりたかっただけ⁉)
結局、その日の授業は走るだけで終了し、メグミたちは疲労感と筋肉痛に悩まされるのだった。




