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出港

 ボーッと垂らした釣糸を眺める。かの有名な太公望翁は返しのない針を垂らしていたと言うが……俺には無理だな。

 海に出てからこれで三日。ただ海を眺めるのにも飽きて、今朝から釣りを始めたが……何の釣果も出ていない。そもそも、船が動いているときに魚って釣れるのか?


 そう、ハーバルタウンを出港して、実にもう三日が過ぎている。幸い、波に揺られて船酔いを起こすという事はなく、航路は順調そのものだ。たぶん、船も『ガチャ』産なんだろうな。揺れを吸収するような緩衝機構アブソーバーがどこかについているんだろう。


 しかし、いかんせん暇だ。時折魚型の魔物が飛び跳ねてくるが、ハヅキが『イーグルビーク』を振り回して一蹴してくれている。イロリナは舵取りに夢中だし、アンバーレッドは読書に勤しんでいる。

 俺はやる事がない。せいぜい、風向きの調整に風魔法を使う程度だ。イロリナから指示が出るまで、現場待機が基本路線となっている。


「ユウゴー! お願ーい!!」


 お、来た来た。風の出番だな。

 帆の後ろに回り海に向けて風魔法を唱える。帆船は向かい風を受けて進むと聞いたことがあるが、後ろに向かって強風を巻き起こし、その反動で進んだ方が速かった。


「きゃー! きたー!! はやーい!!」


 舵を取るイロリナは、はしゃぎながら船を進むべき航路に乗せてくれている……たぶん。

 何分、俺は地図を逐一確認していないから、今どの辺かわからない。アンバーレッドの話だと、通常の帆船で妖精族の大陸まで五日かかるそうだ。少なくとも、後二日はこの海と仲良くしないといけないのか……


「はやーい!! すごーくはやーい!!」


 しかし、イロリナは可愛いな。あれくらいの事で大はしゃぎしてくれるとは。その内、文明開化が進んで、ジェットコースターでも出来たら、連日連れ出されそうだ。俺、ジェットコースター苦手だけども。あと、某炎竜の名前は絶対に言うなよ?


 そんな益体の無い考えを捨てて、再び釣竿に手をかける。どうせすぐには釣れないし、と出港の時を思い返してみた。









「じゃ、これで出発できるの!?」


「はい……発進と停止は問題ないと思います」


「後は操舵か……それはやって慣れるしかないな」


「そうだね。魔物相手には慣れているんでしょ? なら気を付けるのは、高波と急旋回しての転覆かな?」


 まあ、そうなるかな?

 海の魔物って、強そうなイメージがあるけど大丈夫なんだろうか?


「海の魔物が陸の魔物と比べて強いのはね、地の利を生かして戦ってくるからなんだ。ボク達は海中に入ると息が続かないだろう? だから陸地――つまり船の上で戦いたいんだけど……あいつら、海中に引きずり込んでくるって言うんだよね……」


 俺の疑問に、アンバーレッドはいつもの様に淡々と答える。いや、やっぱり強いんじゃないか。


「それに、引きずり込まれたら最後……周囲から魔物が寄ってきて、身体中を食いちぎられ、痛みと呼吸のできない二重苦で死んでいくだろうね……」


 先程までの淡々とした口調が一変、恐ろしく低い声で告げるアンバーレッド。

 いや、マジで?

 それ、怖すぎだろ。イロリナなんか青い顔してるぞ。船なんか乗らない、って今にも言いだしそうだ。


「でも、ユウゴ君のお陰で大丈夫。この『イーグルビーク』はね、凄い機能を秘めた七ツ星装備なんだ」


 そう言って、『イーグルビーク』を差し出すアンバーレッド。そういえば、七ツ星装備の二つ目が出ていたな。対人間には殺傷力が強すぎるから使わなかったが。


「ふふ、久々に『鑑定』してみる?」


 ん?

 珍しく俺に『鑑定』を振ってきたな。知らない内に商人の星も上がっていたのかな?

 そう思い、『鑑定』と心の中で呟く。お、出てきた、出てきた。


Name:イーグルビーク

 ☆☆☆☆☆☆☆

 STR+???

 DEX+???

 AGI+???

 ?????????????


 な・ん・じゃ! こりゃ!!

 全然意味が分からないじゃないか。前はステータスの上がり幅くらいは見えていたのに、今は名前しかわからん。悪化してんじゃないのか?


「ふふ、全然見えないだろう? これはね、特殊武器なんだ。この武器のステータスの上がり幅は、持ち主のステータスに依存するんだよ。つまり、より強く、より速く投げれば威力は増す、って事さ」


「へぇー、七ツ星って凄いのね」


「それがどうして海の魔物対策になるんですか……?」


 もっともだ。そのまま投げつけたんだったら、魔物に刺さって回収できなくなるだろうに。


「それが『イーグルビーク』の特殊能力の一つだね。イーグルの名の通り、鷹の様に飛来したこの短剣は、相手を追尾し切り裂いてくれる。その上で、持ち主の所に戻ってくるなんていうトンデモ性能さ」


「そりゃあ……トンデモだなぁ」


「勿論、相手を切り裂けないで刺さったままになってしまえば、戻ってくることは無いよ。STRが低い人間が投げれば、刺さるだけで終わるだろうね」


 それは……七ツ星を回収できなかったらへこむなぁ……


「他にも能力があるの?」


「うーん……応用みたいな感じだけど、見える範囲なら遠方から投げ込んでも百発百中だよ」


 鷹の目は遠く広くを見渡すと言うからなぁ。その名に恥じない性能になってる訳か。


「それでは……出来るだけSTRが高い人間が使うのが良いという事ですね?」


「そうだね。この中で一番素のSTRが高いのは……間違いなくハヅキだろうね」


「決まりだな。『イーグルビーク』はハヅキに使ってもらおう。巫女さんだけど、短剣くらいは扱えるだろう?」


「はい、大丈夫です!!」


 ハヅキに『イーグルビーク』を渡そうとしたが、まだクランに入っていないことに気付いた。ついでに、クランの名前が決まっていないことも。


「なあ、クランの名前……どうしよっか?」






 結局、その後クランの名前決めに難儀した。俺はEエターナルDディフェンダーズを再度推したが……


「却下」

「それは嫌かな」

「ちょっと……」


 と三人から断られた。やっぱり、E・Dって響きが良くないんだろうか……


「でしたら、桔梗五星プラティコドンというのはどうでしょうか?」


 悩んでいた俺達に、ポンと手を叩き意見を出したのはハヅキだ。ぷら……何だって?


桔梗五星プラティコドンです」


「それ、花の名前よね? どういう意味なの?」


「悠護さんの星、五芒星みたいでしょう? 私の故郷では、桔梗という花が五芒星に例えられる事があるんです。こちらでは、プラティコドンって言うんでしょう?」


「それで、桔梗五星プラティコドンか。うん、良いんじゃないかな」


「ま、ユウゴはクランのリーダーだし……花の名前も入ってるし、あたしは良いよ」


 そんな訳で、クランの名前もようやく決まり、いそいそと冒険者ギルドに向かって手続きを済ませた。これで、ようやくハヅキはクランのメンバーとなった。

 早速、ハヅキに『イーグルビーク』を手渡すと、その手にしっかりと握りしめて『むふー』と息巻いている。うん、可愛い、可愛い。


「冒険者ギルドにいるし、ついでに識石でも見て良いか?」


「いいよー? ついでに、職石も触ってく?」


 お、それ良いな。魔法戦士も大分板についた気がするし、転職しても良いだろう。


「取りあえず、先に『ステータスオープン』」


 なんか久々な気がするな。そういや、コンプガチャをするときに調べたが、LUKだけに目がいってしまって、その他の項目は全然見てなかった。ちゃんと見ておこう。

 識石に触れていつもの言葉をあげると、石にステータスが浮かび上がってきた。


 Name:ユウゴ

 Age:20

 Level:75

 Job:魔法戦士 ☆☆☆☆

 Type:人族

 HP:872

 MP:420

 STR:220

 VIT:225

 DEX:120

 AGI:115

 INT:120

 CHR:18

 LUK:318


 おー、随分レベル上がってるな。これ、もうすぐカンストしちゃうんじゃないの?

 その割に随分CHRが低いが……大丈夫か、コレ?

 LUKもとりあえずは大丈夫だ。このまましっかりと祈祷を捧げていれば問題の無い範囲だろう。


「レベル上がったねー。やっぱり、竜を倒したのが効いてるのかな?」


「そうだろうね。ましてや、竜の貴族だったわけだし……もっと上がっていても不思議じゃないと思うよ?」


「魔法戦士だったのですね……通りで、凄い魔法を使えるわけです」


 三人それぞれがステータスを覗き込み、感想を言い合っている。まあ、こんなとこだろう。次は、職石だ。

 職石に触れて、転職できる職業を確認する。モヤーっと文字が浮かんできた。よしよし、何があるかなーっと。


 選択可能Job

 戦士 魔術師 僧侶 商人 旅人 冒険者 格闘家 魔法戦士 義賊




 何個か見たこと無いのが混じってるな。僧侶と義賊か。っていうか、義賊って職業なん? どっちかっていうと、盗賊の亜種なイメージなんだけど。しかも全然特色が思い浮かばない。一応、僧侶は巫女と被るし、海の上で格闘も無いだろう。義賊にしておくか。

 銀貨を三枚入れ、義賊を選択する。ガコッと音がして、義賊の文字が中抜きになった。この辺は何処も変わらないな。


「さて、これでギルドでの準備は一通り済んだね。後は、この町のお世話になった人たちに挨拶して……食材も準備しておこうか」


「じゃあ、そっちは頼めるか? 俺達は挨拶回りをして、明日には出港できるようにしておく」


「うん、任せて」












「それで、船を出して、今に至るんだよな……」


 意外とイロリナが操舵が上手かったのは思ってもみない幸いだったな。風魔法をぶん回してもぐいぐいと船を操ってくれた。それでもまだ妖精族の大陸には到着していない。まあ、夜間はしっかりと船を泊めて休んでいるし、五日かかる航路って言ってたからしょうがないが……


 それと、結局、義賊の意味はまったくわからない。ちょっとDEXとAGI、INTは上がっていたが、MPやSTRは下がっていた。INTが上がるのにMPが下がるとは……ま、それでも船を動かす程度の風魔法はわけないけどな。


「ユウゴー!!」


 はいはい、また風魔法ですね。


「ちょっと!! どこ行くのー!? 島、見えてきたよー!!」


 お? もう見えてきたの? ってか、大分早くない?

 もしかして、道、間違えてないよな?

 でも、なんか新しい大陸ってワクワクしてくるな。ちゃんと妖精族の大陸でありますようにっ!!

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