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下衆の末路

 ハヅキが仲間に加わる事を説明したら、二人とも喜んで受け入れてくれた。回復役が欲しかったし、ちょうど痒い所に手が届いた感じだな。


「それで、奴隷契約はもう解けたのか?」


「いや、まだだよ。いくらボクでも、奴隷の主人抜きで契約破棄はできないからね」


「契約破棄……? どういう事だ?」


「簡単に言えば、違法に締結された契約を、なかった事に出来るんだよ。ハヅキ君の場合、自らの意思で奴隷になった訳じゃないからね。十分、破棄が通ると思うよ」


「それ、どうやるんだ?」


「どうって……主人格の前で突きつけるだけだよ? この契約は違法だから無効です、って。これが既に完全な契約の上で奴隷になっていたら、流石にどうにもならなかったけど……幸い、あの倉庫にいた人達は売却待ちだったからね。全部まとめて、破棄しちゃうよ」


 と、いつもの様子で淡々と言ってのけるアンバーレッド。ようは、あれか。クーリングオフか。ちゃんとした契約じゃないから無効でーす、って事か。


「そうなると、早く自警団の所に行った方がいいわよね」


「そうだな……よし、行くか!」


「はい、お願いします……」







 三人を伴って、ジブリールのいる自警団へと向かう途中、昨日どうして俺の居場所がわかったのか尋ねてみた。


「ああ、それはね……」


「はい! たまにはあたしが説明したい!!」


 と、背筋を伸ばして手を挙げるイロリナ。アンバーレッドは苦笑しつつ、どうぞ、と両手を前に出した。


「へへへ……一回やってみたかったのよね……昨日はね、この『不離はなれずのピアス』のお陰で、ユウゴを無事見つけられたの!」


「ピアス……?」


「そう! ユウゴがやった『ガチャ』で、もう一つ五ツ星が出てたでしょ? 全部説明する前で別れちゃったけど……これがそうなのよ」


 あぁ! そう言えば、戦利品の確認も不十分だったな。


「それで、そのピアスは俺の居場所を特定出来るのか?」


「そうなのよ。本来の使い方は、二つ一組のピアスを持ち合って、居場所の確認をするらしいんだけど……実は所有者の位置もちゃんと知らせてくれる優れものだったの!!」


 イロリナはオーバーに腕を回しながら教えてくれる。人によっては嫌う人もいるだろうけど、こういうとこが可愛いんだよな。


「それで……って、ちゃんと聞いてる? もうっ!」


 今度は頬を膨らませて詰め寄ってきた。腕を組むことで、所謂『わがままぼでー』が強調され、つい目がいってしまう。もちろん、イロリナにはばれた。


「……どこ見てるのよっ!! 変態っ!!」





「……えーと、早く来てくれてありがたいけど、傷が癒えてからでも良かったんだよ? まだ、顔の辺り腫れているじゃないか」


 自警団に付いた俺達は、ジブリールを呼び出し話を進めようとした、が……開口一番にこれだ。だけど、これは昨日の傷じゃない。そもそも俺のせいじゃない。不可抗力だ。事故なんだったら!


「いや、見た目の割りに、ダメージは小さい。話をするくらい大丈夫だ」


 むしろ変に突っつかれる方が精神的にくる。これ以上の詮索は無駄だ、と言わんばかりに睨み付けて先を促す。


「そ、そうか……なら、昨日のまとめをしよう。えーと、とりあえずあいつらの末路から話そうか」


「そうだね。今、どこにいるの?」


「今は自警団で拘束して法治都市への移送待ちだ。用があるのか?」


「法治都市から、隷属契約を破棄出来る様な商人はくるのかな?」


「事情は伝えておいたが……そんなに都合良く凄腕の商人はいないだろう。手っ取り早く解放するのに、死刑でも言い渡すんじゃないか?」


「それでも、到着まで二、三日はかかるよね? 代わりに、契約破棄だけしても構わないかな?」


 その言葉に、ジブリールは心底驚いたようだ。商人なら誰でも契約破棄できるのかと思っていたが、この様子だと違うようだな。


「頼めるのか!? いやぁ、有りがたいな。法治都市の連中、腕は良いけど文句が多くてなぁ……奴隷の契約破棄じゃなくて、もっと凶悪犯を裁かせろ、とか……それじゃあれか?

  違法奴隷商人は凶悪じゃないのか!? 勝手に人さらいをしてきておいて……」


 また熱くなってるし……こうなると長いんだよな。急いではいないが、このまま愚痴を聞いているのも疲れる。とっとと本題に入ってもらおう。


「……それで、犯人はどこにいるんだ?」


「あ、あぁ……すまないな。奥に簡易だが牢がある。拘束はしっかりとしているから、手は出せない筈だ」


「わかったよ。じゃ、さっさと済ませようか」


 アンバーレッドは『収納』の空間から何枚か紙を出すと、牢へと近付いていった。後ろから様子を伺いに付いていく。


「キヒッ、今度はずいぶんと可愛らしいお嬢さんが出てきましたね」


「何度来ても無駄だ。俺達は何も話さないぜ」


 そういやアンバーレッドとは会っていないんだな。下衆二人は彼女に向かって息を巻いているが……後ろに俺の姿を見つけると一気に態度が変わった。


「「ぁぁぁああっっ!! お願い、お願いぃ!! 薬、クスリをちょうだぁい!!」」


 おぉう……下衆二人が身を寄せあいながら、クネクネ蠢いている。はっきり言って、気持ち悪い。


「ユウゴ君、何したのさ?」


「え? 俺のせい?」


「どう見てもユウゴを目にした瞬間に態度が変わったんだけど……」


 そう言われてもな……薬は『魔女の妙薬』とやらをぶっかけただけだぞ。その事を伝えると、アンバーレッドは呆れ顔で肩を竦めた。


「どう考えてもそれだよ……完全にフラッシュバックしてるじゃない」


 そんな危ない代物使おうとしてたのか。なんか腹立ってきたな。弱めの『アースミサイル』で下衆二人の頭を狙い打っておいた。


「あぁぁあ! もっと、もっとぉぉぉ!!」


 ……やめときゃ良かった。絵面的によろしくない。なんでこんな薔薇色全開を見なきゃ行けないんだ……


「もうっ! 話が拗れるから、ユウゴ君は姿を出さないで!! 向こうでジブリール君と他の話をしておいてよ」


 結局、アンバーレッドに追い出されて自警団の客室に戻された。いや、おぞましいものを見なくてすむから、俺としてはありがたい。


「君も凄いな……いきなり土魔法をぶつけるなんて」


「牢の中じゃ手が届かなかったからな」


「そういう問題じゃ……いや、また脱線してしまいそうだ。あの小さい女の子の言う通り、他の話を進めよう」


 小さい女の子……ね。見た感じ、ジブリールは俺と同年代だ。たぶん、アンバーレッドは年上だと思うけど、それこそ脱線する。黙っておこう。


「他に伝えておくことは、君達の報奨と今後の注意点だ」


「注意点?」


「まあ、ちょっとな……先に報奨の話をして良いか?」


 注意点、という言い方に引っかかりを覚えるが、どっちが先でも構わない。首を縦に振り、先を促す。


「こいつら、あくどい商売でたんまり儲けていたからな。本来なら捕縛に協力してくれたし、ちゃんと報奨金を出すんだが……」


 そう言うと渋い顔をするジブリール。

 あ、嫌な予感。


「捕物をするときにかなりの量の物資が破壊されていてな……そこの弁償代だけで随分と赤字になってしまう。家の安全権と引き換えにしてもらえないか?」


「安全権とは?」


「君達、冒険者だろう? しばらく家に帰れない事もある筈だ。空き巣はそういった家に目がない。家の主人が帰ってこない間に、財宝が盗まれるなんて、よく聞く話だ」


 そうだなぁ……現実でも、泥棒は投函物が溜まってるような、人気がない家を狙うっていうし、家を空けている事が多ければ狙われやすいだろうな。


「そこで、我々自警団が、留守の間の自宅回りを警備しよう。普段は月に金貨一枚、年間契約で金貨十枚を報奨に貰っているが、今回は年間を無料で警備する……それで手を打ってもらえないだろうか?」


 んー……確かに金貨十枚はお得なんだけど、そもそも、それって警備会社になるんじゃね? 普通、自警団ってボランティアじゃないのか? それを尋ねると、ジブリールは首を横に振ってこう続けた。


「確かに警らはボランティアだが……それだけでは俺達の生活は成り立たなくなってしまうだろう? そこで、冒険者を相手にビジネスを行っているんだ。結果的に、町から犯罪者は減るし、町民からの支持もある」


「仮に、俺みたいな六ツ星の冒険者が襲撃してきたら?」


「やられるかもしれないが……そこは警備しきれなかった我々の落ち度だ。それこそ、賠償をしよう」


 うーん……仕方ないのかな。そもそも物を壊してしまったのは、俺のせいでもあるし。家が決まったら、警備をお願いするとしよう。


「わかった。任せておいてくれ」


 了解を伝えると胸を張って答えるジブリール。その様子から自信も伺える。きっと、今まで大きな失敗もなかったんだろうな。


「それで、もう一点なんだがな……」


「ああ、注意点だっけ? 何だ?」


「恐らく、君達は『ジャグアヘッズ』に目をつけられると思う。この町の違法奴隷を潰した訳だからな……報復があるかもしれない」


 えぇっと……『ジャグアヘッズ』ってなんか危ない地下組織だったか? そんなのに狙われるのはゴメンなんだけどなぁ……


「どうにかならないか?」


「うむぅ……すまない。直接的に手を出していて、顔を隠していた訳でもないからな……既に町には情報が広まってしまっている」


 あー……『ガチャ』で出た『黒頭巾』でも装備しとくべきだったな。まあ今更だが。


「ほとぼりが冷めるまで、別の大陸へ出るのも一つの手だと思うが……」


「まあ、別の大陸へは向かう予定だったけど……」


「お、そうなのか? もう船は予約したのか?」


「いや、船自体は持ってる。むしろ、その乗組員を探しているところだ」


「ふ、船持ちっ!? 君、存外に金持ちなんだな……」


 貧乏神様に取り憑かれている俺を捕まえて、金持ちと?

 何の冗談だ、まったく。


「なぁ、さっきの警備の代わりに、誰か一緒に船に乗ってくれないか?」


「船か……皆生活があるからなぁ……」


 ジブリールは、ばつが悪そうに頭をボリボリと掻いている。やっぱり無理か。


「一応、紹介するよ。そこからは、お互いに相談してみてくれるか?」


 お、知り合いがいるみたいだ。アンバーレッドも伝手があると言っていたが、候補は多い方が良いだろう。

 まずは、俺一人で船を動かす事を避けなければ。

 ジブリールは船乗りの居場所を書いた紙を持ってきてくれた。よし、交渉、頑張ってみよう。

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