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初めての魔法

 魔術師になって、早速先程までの狩場へと向かうことにした。既にウルフやスケルトンは何度か打倒している。いくらかステータスダウンの影響があるかと心配したが、それ程苦に感じず退治出来ている。大分地力がついてきた証拠だな。


 しかし、戦士だった時と比べると、やはりどことなく体全体を巡るものを感じる。筋力とか、覇気とかそういうのじゃない。多分、これが魔力なんだろう。目に見えるようになったらオーラとかチャクラとか、そんな名前が付くんだと思う。今の所、俺の身体から溢れ出ているようには感じない。


「で、魔術師の感じとしてはどうなの?」


 黙りこくって魔力の感覚を捕らえようとしていたら、イロリナから話しかけられた。どう、と言ってもな……正直言って、どうしたらいいのかわからない。この魔力をどうすれば魔法になるのか、そんな説明をしてくれる人はいなかった。星を増やしていくことで魔法が使えると言っていたが、魔物を倒しても中々感覚は掴めない。


「イロリナは魔術師の知り合いはいないのか?」


「うーん……いるけど使い方を聞いたことは無いよ。大体、魔法が使えない人間に魔法の使い方は教えないでしょ」


 それもそうだ。何か、こう……きっかけが欲しいな。魔力は感じられているんだから、それを形にしてやれれば魔法になりそうなもんだが……



「魔法を使うのに詠唱とか必要ないのか?」


「えっと、簡単に魔法の名前は聞いたことあるけど、複雑なのは知らないかな」


「お、やっぱりあるのか。どんな名前なんだ?」


「火の魔法が『ファイア』でしょ、水の魔法が『アクア』、風の魔法が『ウインド』、土の魔法が『アース』、大体基本とされる四属性の魔法がこれかしら。それぞれが威力が上がったり、範囲が広がったり、そういう風に派生していくみたい」


 ふーん……まんま、なんだな。ってことは、この魔力に詠唱を込めてみたらいけるかな?

 思い立ったが吉日、早速右の手の平に意識を集中させてみる。体の中を巡っていたものを右手に押し込めるイメージ。お、集まってきた感じがするな。これに詠唱を加えるのか。よし、ここは火の魔法にしよう。


「『ファイア』」


 すると、右の手の平から小さな灯火が飛び出した。いや、小っさ!! 小っさいよコレ!!

 ああ、ほら、イロリナがまた可哀そうな物を見る目で見てる。


「なんて言うか、火は出たけど……ドラゴンには通用しないんじゃないかなぁ……?」


 わ、わかってるよ……でも魔法が手から出せるようになったんだ。これから向上させれば良いんだ。まだ余裕はある筈だ。


「と、とりあえず前進ってことで。他の魔法も使ってみようかな」


「使うのは良いけど、倦怠感とか無いわけ? MPが減ってくると怠い、とか頭が働かない、とかそう言うのがある筈なんだけど」


「いや、まだ何ともないぞ」


「まぁ、あれくらいの魔法じゃそんなにMPも減らないか。じゃ、やってみましょう」


 多分、手の平全体で魔法を放とうとしたから上手くコントロールできなかったんだと思う。今度は指先から、勢いよく魔法が飛び出る感じで魔法を使ってみよう。イメージとしてはホースの口を絞る感覚だ。

 再度、魔力を右手に集中させていく。これはそんなに難しくない。さっきも簡単にできたもんな。今度は、右手に集まった魔力をさらに指先に寄せる。少し、手が熱くなってきた。魔力の暴発とかあるのかな……ちょっと怖いが……


 十分に魔力が指先に集まったのを感じ、詠唱を行う。今度は水の魔法にしよう。ホースのイメージだから上手くいきそうだ。


「よし、『アクア』」


 指先から勢いよく水が飛び出した。さながら高圧洗浄の機械のようだ。勿論、その比ではないが。先程の『ファイア』とは打って変わって、今度のは実用に足る威力だと思う。目を白黒させているイロリナの表情もそれを物語っているだろう。


「な、何よそれ……」


「え、水魔法だろ?」


「いや、普通の『アクア』はそんな勢いよく水が出ないわよ。今日魔術師になったばかりの魔法じゃないわ。高位、とまではいかなくても、中級の魔術師相応よ、それ」


 うーん、そんなもんなのか。生憎、魔術師はまだ見たことが無いから比較ができない。でも、成長の度合いとしては早いようだ。中級なら魔術師の星も三個か四個になっているかもしれないな。


 それに、今ので何となく魔術の使い方のコツも掴んだ。要は、自分のイメージを詠唱にするんだ。そうしたら魔力が変化してくれる。もしかしたら、わかりやすい魔法の名前なのもそれが影響してるのかもな。そのまんまな名前の方がみんなイメージしやすいし。ん、待てよ……それなら……


「なあ、ちょっと魔物に試し打ちしても良いか?」


「良いけど……あたしに向けないでよ?」


 すこーしジト目になっている。そんなに心配しなくても人に向けては放つもんじゃないってわかってますよ……

 

 しばらく魔物を探していると、おあつらえ向きにスケルトンの群れが現れた。全部で四体いる。今までは武器で一匹ずつ退治していたが……今度は魔法がある。初の実戦だが、何となく上手くいく気がする。

 スケルトンは比較的動きが緩やかだ。魔法の実験には丁度いい。相手の動きに注意しながら、右手に魔力を集中させていく。その雰囲気を察したのか、スケルトンがこちらに駆けてきた。だが、遅い。既に俺の右手には魔力が溜め込まれている。スケルトンに向け人差し指を突きつけると


「『ファイアウィップ』」


 と、詠唱を唱えた。言葉通り、炎の鞭がスケルトンを襲う。一体、二体と鞭がスケルトンを捕らえると、そのまま炎が体に巻きつき身を焦がしていく。やがてその体を燃やし尽くすと、炎と共にスケルトンは消えていった。


「す、凄いじゃん! 何、今の?」


「いや、思いつき。上手くいったな」


 思った通りだ。イメージが魔力を変質させるなら、それに合った言葉を紡いでやれば魔法を変化させることもできるようだ。これなら十分ドラゴンにも相手に出来そうな気がする。


「思い付きって……あんな魔法初めて見たわよ」


「今まではどんな魔法だったんだ?」


「えぇ? ファイアストームとか、アクアガンとか……そう言うのが多かったかな」


「ふーん。ファイアストームは今のと違うのか?」


「そうね。近いけど、もっと広範囲に火が回っていたと思う。というか、火が巻きつくなんてことは無かったわ」


 あー、高火力で焼き尽くすイメージなのかな? 次に魔物が出てきたらちょっとやってみよう。


「それで、今も何ともないの?」


「え? あ、怠いとかそう言うの? ないな」


「そんなにMP余ってるの……?」


 どうだろうなぁ。そう言えばステータスチェックしないで来ちゃったからな。今のMPがどれくらいかはわからないな。


「ま、いいじゃないか。ドラゴン相手に攻撃手段が出来てきたんだから」


「そうね。今の魔法ならあたしの『踊り』と組み合わせれば結構効くかも」


 そうか。実際はイロリナのバフ効果も見込めるんだった。これなら、いくらか戦えそうだな。しかし、慢心はしない。もう少し、せめて今の四属性魔法が同じくらい使えるようになるまでは練習をしておきたい。


「よし、じゃあ次に行こう。ナビ、頼むよ」


「なび……? あ、索敵の事? もう、変な呼び方しないでよね」


 そう言いながら魔物を探してくれている。うん、気を付けよう。ちょっと気が大きくなっていた。ナビ呼ばわりされたら流石に気分を害すよな。この世界にナビが無くて良かった。



 その後も、イロリナは順調に魔物がいるところを感じ取ってくれたので、効率的に魔物退治が行えた。魔法も火、水、土、風、それぞれ応用編と言っても良い魔術を使えるようになったし、今回の魔物退治は大成功だろう。

 唯一つ、俺の魔法の使い方には欠点があった。それは、手の平全体から魔法を放てないという事。指先から放つ魔法では『ファイアストーム』の様に広範囲の魔法は使用できなかった。詠唱を変えても、炎がレーザーの様に一直線に飛ぶだけだ。

 試しに、手の平全体から『ファイアストーム』をイメージして魔法を使ってみたが、火の嵐どころか、先程の灯火がちょろっと飛んだだけだった。

 火にしろ、水にしろ、指先からしか魔法は出せない。まあ、威力はあると思うし、ドラゴン一体を相手にするなら別に構わないんだけど。今後、もっと大勢を相手にしようとしたら、ちょっと難儀するかもしれないな。要検討項目だ。


 一先ず、ドラゴン戦の目処は付いた。気づけば日も暮れかけている。今日は、町に戻ろう。幸い、野宿はしなくて済んだ。今日はゆっくり休んで、明日ベルンス山へ向かいドラゴンと対峙だな。そうすれば、シスイよりも早くドラゴンと戦えることになる。

 一日のアドバンテージがどれだけ働いてくれるか……とにかくやってみるしかないな。

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