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Job補正

「商人の所に行くのも良いけどさ、せっかくだから先にステータスチェックしておかない?」


 いざ商人の元へ向かおうとした矢先、イロリナがそんな提案をしてきた。別に町にいる今、そんなにこまめにチェックしなくても良いと思うんだが……


「ウチは構へんよ。ステータスくらいならすぐ済むやろ? ちゃっちゃっと済ましてきい」


 シスイも別に構わないと。まあ、俺だけ急いでも仕方なし、二人の意見に賛同してステータスチェックをしておこう。


 識石に向かい、『ステータスオープン』と慣れた言葉をかける。何回目だろ、もう感慨も無くなってきたな。


Name:ユウゴ

Age:20

Level:22

Job:商人

Type:人族

HP:155

MP:22

STR:40

VIT:55

DEX:47

AGI:30

INT:40

CHR:22

LUK:31


 お、出た出た。えーっと、案の定LUKは下がりっぱなしだ。ここまで『紅蓮の煙管』を手にしてから全く祀ってないからな。人並くらいの運しかないだろう。

 それから……こまごましたのはよく覚えていないが、レベルが上がってる割に伸びは少ない気がする。VITとINTは前よりもずいぶん高いかな? なんとなく、商人のイメージとして間違っていない感じか。商品確保に体力勝負なところもあるだろうし、他人を出し抜く知性が無ければ商人としてはやっていけないだろう。きっと、Job補正も掛かってるんだろうな。MPは減ってる気がする……

 

「あ、やっぱりMP減ってる? 商人ってあんまりMPないらしいのよね」


 隣で一緒に識石を覗き込んでいたイロリナが教えてくれた。ああ、確かに商人って魔法を使うイメージないもんな。


「それと、『鑑定』したときに虚脱感とか無かった?」


「いや? 特に何にも感じなかったけど?」


「あら? じゃあ『鑑定』は特にMPを使わないのかしら」


「そやね、『鑑定』と『収納』には特別MPは必要あらへんよ。ただ星が少なければ能力が低いっちゅーだけやな」


 後ろから聞いていたのだろう。シスイが補足してくれた。イロリナは一人で、踊りは星が増えると効率も良くなったのに……最初から使いたい放題じゃないの……なんて呟いている。しかし、踊り以外は中途半端な知識が多いな。まあ一芸特化型だし仕方ないっちゃ仕方ないか。

 それにしても、うーむ……MP消費が無いのは良いことだが、やはり星が少ないと『収納』の能力も低いのか……


「商人の星ってどうやって増やすんだ?」


「さあ? ウチも商人じゃないし。それも含めて聞いてみはったら?」


 ま、そうだよな。シスイのステータスはわからないが、『エレファン』そのままなら戦士系、それも近接特化のぶっ壊れスキルだったはずだ。少なくとも、商人ではない。


「とりあえず、ステータスはこんなもんか。じゃ、今度こそ商人さんに案内してもらって良いか?」


「ええで、こっちや」


 そう言ってシスイはギルドの扉を開いて町へと繰り出していった。




 のだが……足速いって!!

 追いつくのに必死で正直街並みとか全然わからん!

 もっとこう、異世界転生してこんな街並みでしたーとか、記憶に残しておきたいのにそれどころじゃない。全力で走らないと見失う。一芸特化型のイロリナはと言うと、平気な顔して付いていっている。そう言えばAGIは高いんだった。いや、商人になってVITが上がってなかったら、今頃ばててぶっ倒れてたかもしれない。それぐらい全力で走りっぱなしだ。


 体感で三十分超、もしかしたらもっと短いのかもしれないし実際にはもっとかかっているかもしれない。とにかく、それくらい走ってようやくシスイは立ち止まってくれた。


「ま、ウチの試験としては合格かな。ちゅうても赤点ギリギリやけど」


 なんだ? 試されていたのか?


「ま、悪いとは思うたけど……ウチとしてもイロリナとは仲良うやってきた一人なんよ。それを急にぽっと出の兄ちゃんに取られた思たらなぁ……せやから、ちょっとだけ意地悪させてもらったわ。でも、ちゃんとはぐれんで付いてきたし、約束通り口利きだけはしたったる。その後はアンタらの交渉次第や」


「もう、シスイ何も言わずにそういうことするんだもん。疲れるでしょ!」


「イロリナにはそんなにきつくないように走っとったつもりやけどなぁ」


 そういう二人には汗一つ見当たらない。シスイに至っては、尻尾もなだらかに動いている。狐の習性なんかは知らないが、一般的な犬猫と一緒と考えるなら、リラックスした状態でいるってことだろう。俺は息も絶え絶えで返答できないぐらいなんだが……星の差はやっぱりでかいようだ。




「ちょっとは息も落ち着いてきたかな? ほな、いくで」


 結局、五分ほどその場でへたってから知り合いの商人さんとやらに案内してくれることになった。実際、商人さんの家のすぐそこまで来ていたそうで、そこから三十歩も歩けば目的地だった。


 知り合いの商人さん、とやらはどうやらかなりのやり手のようだ。家、というより屋敷と言った方が早いその建物は横にも縦にも大きい立派なものだった。洋風作りの建物でそこかしこに窓ガラスも出来ている。中心部には煙突が見えるし、多分暖炉もあるんだろう。庭は芝生で覆われていて噴水なんかも作られている。パーシェスの村じゃわからなかったが、ここを最高水準だとすると、文明レベルは結構高いんじゃないだろうか。流石に車は見なかったし、ガスコンロとか電気なんかは無いと思うけど……


「なあ、何でそんなにテストしてまで協力してくれてるんだ?」


 ふと、屋敷の入り口でシスイに尋ねてみる。決して彼女は俺の仲間になったわけではない。ただ手伝ってくれただけだ。でも手伝う理由もないし……何となく訊いてみた。


「ん、ああ……イロリナとは仲良うやっとったって言うたやろ? 昔から仲良うやっとったねん。別にアンタが困っとるから助けてるわけやないで? イロリナが困っとるから助けとるだけや。だから、気にせんでええよ?」


「あ、あぁ、そう……」


 仄かに、お前とは関わり合いにならないよ、と言われているようでちょっとショックだ。まあ、見ず知らずの他人を無償で助けるほどお人よしでもないだろうし、それは別に良いんだけど……もうちょっと優しくしてほしいなーなんて……


「でも、助かった。ありがとう」


 ま、御礼ぐらいは伝えておかないとな。もしかしたら今後に繋がるかもしれないし。いや、決していかがわしい意味でなく、戦力的に、です。ハイ。


「律儀やねぇ……ま、ええわ。いくで」


 そう言って、シスイは屋敷の門をくぐっていった。心なしか少し頬が緩んでいた気がする。うん、誰だって感謝されたら嬉しいもんな。魚心あれば水心、いくらか伝わってくれていると良いんだけど。


 門前には警備兵も何もいなかったが、屋敷の玄関の所に門番が立っていてまさに大豪邸と言った感じ。シスイは顔見知りのようで、一言二言話すと簡単に中へと入れてくれた。

 

 しかし、『エレファン』に商人キャラなんてそんなにいなかった気がするんだけどな。まして七ツ星のキャラなんて絶対にいなかった。

 未実装? NPC?

 いやいや、改めてここが現実だと認識させられる。ゲームさながらの『スキル』に『ガチャ』があれど、ここは現実だ。今回の交渉も下手を打てばどんな不利益を産むかわからない。慎重に行動しよう。目標は七ツ星の鑑定、厳しかったら商人の星の上げ方、それでも駄目だったら……しょうがない、地道に頑張るか。

 ま、相手の出方次第で考えてみるかな。

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