『鑑定』結果
とりあえず、商人になって早速やってみたいことをしてみる事にする。
『鑑定』と『収納』のスキルだ。まずは『百花繚乱』を手に取って……と。
「スキルを使うには言葉にすればいいのか?」
「ええ、でもここじゃ目立ちすぎるし、あっちに行かない?」
そう言うとイロリナはギルドの奥の方を指差した。その方向に視線を送ると、いくつかテーブルが並んでおり人々が話し合っている。ギルド内であることも考えると、冒険者たちの参戦会議に使うテーブルだろうか。
「そんなに物々しい所じゃないわよ。今日の戦果はどうだったー、とか、あそこの魔物は手強かったーとか、そういう情報交換をするところ。勿論、ご飯なんかも食べられるわよ」
よく見ると確かに食べ物や飲み物が並んでいるテーブルもある。商人になった『職石』の近くは人の入れ替わりが多く、少し慌ただしい。スキルの確認をしながら話し合うにはあっちの方が良さそうだ。
「そうだな、じゃ向こうに行くか」
そう言って空いているテーブルを見つけ腰かける。テーブルの上にはメニュー表があり日本語で料理や飲み物の記載がしてあった。いや、『エレファン』が元で良かったよ。きっと海外産のゲームだと英語なんかが基本語になっていたんだろうな。
「何か頼む?」
俺がメニュー表を眺めていたのに気づいたのだろう。イロリナから声をかけられる。今の手持ちは銀貨八枚に銅貨が九十六枚。麦酒が銅貨三枚って書いてある。ビールかぁ……一杯くらいなら良いかな……あれ、イロリナって未成年だっけ……?
「イロリナって酒飲めるのか?」
「え? 飲めなくはないけど……昼から飲むの?」
それもそうだ。大人しく水を貰うことにする。水は無料だった。ラッキー。
「さて、それじゃ今度こそ……」
「ん、『鑑定』ね?」
「ああ、まずは『百花繚乱』からだな。よし、『鑑定』!」
『百花繚乱』を手に取り、『鑑定』と言葉を紡ぐ。すると視界に入っている『百花繚乱』の下の方に何か表れてきた。
Name:百花繚乱
☆☆☆☆☆☆☆
STR+500
AGI+200
?????????????
あら?
なんか武器の名前とステータスが表示されているけど……肝心の能力説明がよく分からない。とりあえず攻撃力に加えて速度も上げてくれる良い武器だってことはわかるんだが……
「なあ、文字が見えないんだけどなんだかわかる?」
「え? どういう事?」
どうやらイロリナもよくわかっていないようだ。ワクワクした顔でこちらを見ていたが、俺の言葉に明らかに困惑している。まあ、当然だろうが『鑑定』した本人にしか情報は見えないんだろう。
「七ツ星の武器で、STRが+500、AGIが+200する武器だって書いてあるんだけど……どんな能力だかは文字が『?』で見えないんだよ」
「えぇ!? そんなの有りえるの!?」
うーん……イロリナにもわからないんだと困るなぁ。ナビゲーターイロリナは万能では無かったか。
とりあえず性能的には良さそうだ。文字は気になるが、一先ず置いておいて『紅蓮の煙管』も『鑑定』してみるか。
「ひ、一先ずこっちも『鑑定』してみる。七ツ星だからかもしれないしな」
「そ、そうね。六ツ星なら簡単に『鑑定』できるかも!」
『紅蓮の煙管』を手に取り『鑑定』を行う。やはりややもすると同じように『紅蓮の煙管』の下側に文字が表れてきた。
Name:紅蓮の煙管
☆☆☆☆☆☆
STR+95
?????????????????
あー……ま、た、だ、よ!
何なんだよ!
『鑑定』使えば道具のミスが無くなるんじゃなかったか!?
詳細な能力説明が全くわからないじゃないか!
「あー……もしかして……」
俺の様子でわかったのだろう。イロリナが恐る恐る話しかけてくる。
「ああ、全然詳細はわからない。『鑑定』で道具の詳細がわかるって言ってたよな?」
「う、うん……あたしの服とか、腕輪とか、ちゃんと『鑑定』してもらった時に説明も聞いたよ?」
「じゃ、何でこの武器には説明が出ないんだ? やり方が悪いのか?」
「う、うーん……商人にはなったこと無いし……間違ってない、と思う……」
そう言ってイロリナは顔を顰める。まあ、別に彼女を責めたいわけじゃ無い。これ以上きつく言ってもしょうがないだろう。
「……悪い、当たっちまった。でも、なんでなんだろうな?」
「ううん、理由はわからないけど……わかる人ならいるんじゃないかな?」
「どういう事だ?」
「これだけ冒険者がいるんだもの。誰かしら知ってる人もいるでしょ。それに、それこそ長い事商人をやってる人もいるかもしれないし」
そう言いながら辺りを見回し始めるイロリナ。確かに、昼間でもこのシーボの町のギルドは賑わっている。一人、二人は商人がいるかもしれない。そう思って俺も辺りを見渡してみた。
そうやって見渡しても何かいるわけ……
いた。
いや、商人じゃない。そもそも見た目だけで商人かどうかは俺には判断できない。明らかに商人風でもJOBは違う事もあるだろう。だが、あれは見間違えない。綺麗な銀髪ストレートのショートヘア、その頭の上には可愛らしい狐耳がついている。腰には左右に伸びた小太刀がかけられ、その威力は『エレファン』において最大級のぶっ壊れ、初心者救済用とまで言われたリセマラ第一候補のキャラ。『孤影燦然・シスイ』だ。
まさかこんな所にリセマラ必至の七ツ星キャラがいるとは……どうしよう、声かけてみようかな……いやいや、今の俺はきっとLUKが低い。イロリナの時のように上手くはいかないだろう。
どうしたもんか、と悩んでいると俺の視線に気づいたのかイロリナもシスイを見つけたようだ。
「お! いいとこに!! シスイー! ちょっと来てー!!」
って、普通に声かけちゃいましたよ?
「お、おい、知り合いなのか……?」
「え? あー、前に臨時で組んだことがあって……」
テヘッ、と言う感じに笑うイロリナ。いや、そんな有名人と知り合いだったなら『鑑定』の事ももっと知っておこうよ。
「なんや、イロリナやん。どないしたん?」
気付くとシスイはこちらまで来て話しかけていた。いや、さっきまで向こうにいたと思うんだけど……足速くない?
っていうか、関西弁なん?
狐耳に関西弁って……また、コアな部分を刺激してくれる……
「いやーシスイ久々だねー! どう? 元気してる?」
「ああ、ウチは元気やで。イロリナも変わりなさそうで何よりや。それで、どないしたん?」
「それがね、せっかく商人になって『鑑定』したのに詳細な情報が得られないのよ」
「へぇ、イロリナが商人?」
そう言うとシスイはチロりと片目を閉じ疑惑の視線を向けている。
「また似合わんこと始めたなぁ。悪い事言わんからはよ踊りに戻り? イロリナに商人は向かんて」
「いや、商人になったのは俺なんだが……」
そう言うと、初めてシスイはこちらに顔を向けた。そう、今まで全く視線が合っていなかったのだ。
「誰やの?」
「えーっと、色々あってこのユウゴとクランを組むことに……」
「あ、どうも」
軽く会釈をしておく。第一印象って大事だよな。
「はぁ? 何言うてんの? あんだけ色んなクランに誘われながらどうしてこんな名前も知らないような奴のクランに入ったん?」
うぐ……確かに無名だが……どストレートに突っ込まれると辛いな。
「それがさ、このユウゴが七ツ星の装備出しちゃったのよ。それも『百花繚乱』」
「はぁ? 七ツ星? そんなんあるわけないやろ」
「それが本当なのよ。ほら」
俺の持つ『百花繚乱』を示すイロリナ。ついでに星が見えやすいよう柄の部分を見せてあげる。
「またそんなこと言うて……ってほんまやん!!」
ないわー、そんなん嘘やわー、とか呟いている。口調がきつい割には案外素直だな。
「はぁ……わかったわ。それで『鑑定』の結果がようわからんことになっとったんやな。商人になりたてで七ツ星の『鑑定』なんて無理に決まっとるで」
「え? そうなの?」
「そうや。大体が自分の星と同じくらいまでの『鑑定』能力しかあらへんのよ。むしろちょっとでも『鑑定』できただけ良かったんちゃうん?」
えー……っていうか結構簡単な理屈じゃんよ。イロリナも知っておこうよ……
抗議がましくイロリナを見ていたらシスイから
「まあ、イロリナの装備は良くて四ツ星やし? ギルドで『鑑定』を生業にしてる商人やったらそれくらいは簡単にできるからな。知らんのも責めんたってや」
と窘められた。まあ、七ツ星が異常なんだ。そう考えとこう。
しかし、そうすると違う問題が出てくるな。誰なら『鑑定』できるんだ?
「ちなみに、七ツ星が『鑑定』できる人って……」
「あー、城で抱えとる研究者とかよっぽどの大豪商でもない限り無理やろねぇ」
こりゃアウトだな。流石にそんなとこまで『鑑定』を頼みに行けないわ。むしろ頼んでも断られるだろ。後は自分が七ツ星の商人になるか……商人の星ってどうやって増えるんだ? やっぱり商売か?
「まあ、頼んでみるだけなら口利いてあげてもええよ?」
そんなことを考えていたらシスイから助け舟が出された。
「え?」
「ま、七ツ星の効果なんてよくわかってないのが多いし? ウチも興味はある。せやからウチの知ってる商人に話をしてあげても構へんよ。ただ見てくれるかは別やけど」
「ホント!?」
「ま、イロリナの為やしな。とりあえず、行ってみよか?」
こりゃまたラッキーだ。後に残るは『収納』の方だけど……これも星に依存して収納量が変わるのかなぁ……ま、とりあえずその知り合いの商人に会ってから考えるとしよう。




