第四話「歪んでゆく……」
剛士が笑いながら健のもとへやって来た。
「よぅよぅ! 昨日はこの俺にえらいもん見せつけてくれたじゃねーの!」
「〜〜〜っっ!!?」
何も返せない健は、恨めしい目で剛士を睨んだ。
「剛士、昨日のこと知ってんの?」
潤が剛士に聞いた。
「ああ! 俺、昨日グラウンドでサッカーやってて、ボール返しにきた時に、二人が堂々といちゃこくのを見ちまったってわけなんだな、こりゃ!」
かなり語弊があった。
「ってことは、剛士がいる前で、健が志堂さんに襲いかかったってこと? ……どんな状況っ!?」
案の定、潤は思い切り勘違いした。
「潤っ!? お前、僕をそんな人間だと思ってたのかっ!!?」
すかさず健は潤に吠え掛かった。
「健がちゃんと話さないのが悪いんだろ」
潤は腕を組んでムッとした。
「……どういうことなの?」
その声を聞いた三人は、反射的に肩を跳ね上げた。
冷や汗をかきながら、健はゆっくりそちらに目を向けた。
「大山くんが言ったこと、本当なの? 高宮くん」
そこには、優香が腕を組み、仁王立ちで佇んでいた。
後ろには、赤い顔で慌てて彼女を止めようとする絢がいる。
「……た、田代さん……」
健は顔を引きつらせて一歩たじろいだ。
(出た……)
剛士と潤は、露骨に優香から視線をそらせた。
優香は構わず健に詰め寄ってきた。
「本当なのね? 昨日の放課後、絢のこと待ち伏せして狙ったっていうのは!」
かなり真実が捻じ曲がってきた……。
絢と健は慌てて弁解しようとした。
「ぼ、僕は狙ってなんか……っ!」
「違うのよ、優香! 高宮くんは別に……っ」
「絢は黙ってて。私に任せておけばいいの」
(いらん正義感持つなって……)
男三人は思った。
「ゆ、優香〜っ!」
聞く耳を持たない優香は健を睨んだ。
(な、なんで僕が一方的に悪くなってんだっ!?)
健はたじたじになって冷や汗を流した。
(だいたい、今エミリーちゃんがきて、こんなとこ見られたらどーするんだよっ!? まったく、コイツらがデタラメばっかり言うからっ!!)
健はだんだん苛立ち始めた。
そんな時、剛士が助け舟を出すように前へ出た。
「まぁまぁ、田代さん。俺見てたけど、健だってわざとやったんじゃねーんだしさ。そんなにに怒ることねーじゃん?」
「何言ってるの!? 絢は立派な被害者なのっ! まずは謝りなさいよっ!!」
良かれと思ったが、逆に優香の怒りを買ってしまい、彼女に怒鳴られた剛士は『ヒェッ』とたじろいだ。
「で、でもさぁ……あ、絢のヤツだって、昨日何も言わずに帰ったんだから、健に触られて、まんざらでもなかったんじゃねーの?」
「っっ!!?」
完全アウトな剛士の発言に全員固まった。
(〜〜〜っ!! 剛士〜〜〜っっ!!!)
健は絶望的な表情で剛士を睨んだ。
真っ赤になって言葉を失っている絢を庇うように、優香は前に出て怒鳴った。
「ふざけないでっ!! 大山くん! あなた今自分が何を言ったか分かってるのっ!? どうやら、女子全員を敵に回したいみたいね!!」
「い、いや……俺はただ、あん時絢が拒んでるように見えなかったってゆーか……。乳デカいのをアピールしたかったんかなぁって……」
弾丸のように言い返された剛士は、タジタジになりながら答えた。
「なっ……そ、そんなワケ……っ」
絢はとっさに胸を両手で隠した。
絢が否定する前に、優香がすかさず割って入った。
「何考えてんのよっ!? あなたそんなこと、本気で思ってるの!? 男子って、ほんとサイテーっっ!!」
「な、なにもそこまで……。絢だったらありうるかなって、ちょいと思っただけなんだけど……」
優香に大声で罵倒された剛士は、気まずそうに頬をかきながら呟いた。
「……要するに、自分がないからって、ひがんでんじゃないの?」
「っ!?」
この場において、爆弾を放り込む潤の発言に、全員背筋を凍らせた。
「〜〜〜〜〜っっ」
噴火寸前の優香は、体を震わせた。
『ダンッ』と大きな音を立てて優香は健の机に手をついた。
男三人の肩はビクッと跳ね上がった。
「……喧嘩売ってるの……? いい度胸じゃないの、美舟くん…………」
優香は恐ろし形相で潤を睨んだ。
知らん顔をする剛士の横で、健は冷や汗をかいて潤を横目で見た。
怒りで震える優香を見ながら、潤はしれっと返した。
「ああ、失言だった? 核心突いたのかな?」
「〜〜〜〜っっ!?」
優香は拳を握りしめて言葉を詰まらせた。
(やめろやめろやめろーーーっ!! もうやめてくれ潤ーーーっっ!!)
どんどん悪化していく事態に、健は冷や汗をダラダラ流しながら、心の底で願っていた。
優香と潤はどちらも引かずに、火花を散らして睨み合っている。
「…………っ」
埒が明かないと思った優香は、健に顔を向け、鋭い目で睨んだ。
「っ!?」
「こっちきたっ」と健はビクッと驚いた。
「高宮くん! もとはといえば、あなたが悪いのよ!? 事情がどうであれ、絢に謝りなさいよ!!」
怒りに満ちた優香の向こうで、絢は赤くなってうつむいている。
(そりゃあ、僕だって悪いと思ってるよ……。志堂さんが一人の時に謝ろうと思ってたのに……こんなクラス全員の前で……。なんでこんなことになってしまったんだぁ……)
健は視線をそらして躊躇った。
「どうした? またお前ら、また田代さんを怒らせてんのか?」
教室の扉から聞こえる爽やかな声に、全員そちらに顔を向けた。
長身な少年が、そこに立っていた。
次回へつづく!
第四話も最後まで読んでくださって、ありがとうございます!
AIの「見立て」によるキャラクタープロファイリング、今回は【潤と優香編】を活動報告に載せています。
ぜひぜひ読んでいただけたら嬉しいです!
最終回「出てきた!エミリーちゃん」もよろしくお願いします!!




