第五話「出てきた!エミリーちゃん」
「ま、真斗!!」
扉に手をかざして笑っているのは、クラス一のイケメンモテ男、濱田 真斗だ。
今日も茶髪のストレートヘアーが眩しい。
健はホッとした表情を見せた。
「は、濱田くん……っ」
振り返った優香は顔を赤くした。
「ほーんと、懲りないわねあんたら。廊下まで聞こえるわよ? 今日も元気だね、優香ちゃん!」
真斗の後ろから、モデル並みのスラっとした女の子が現れた。
「……リ、リリ子さん……」
リリ子と呼ばれる少女は、長い髪をヒラリと翻し、楽しげな笑顔を見せる。
健は恐る恐る優香に目をやった。
優香は今日一と言っていいほど、怒りに満ちた表情でリリ子を睨んでいた。
「そーんなに怖い顔しないでよ! いっつも怒ってばっかだと、すぐにシワシワお婆さん顔になっちゃうよ?」
リリ子は駆け寄り、優香の頬を指で突いた。
優香は不快そうに手で跳ね除けた。
「や、やめてよっ!! あなた、なんでここにいるの? 6年生は上の階でしょっ!?」
「あら、彼氏のお見送りくらいしてもいいでしょ? それにこのクラス、いつも何か起こるから楽しいんだもん!」
「…………」
優香がイライラを募らせる後ろで、健たちは自分たちが見せ物になっていることに、呆然としていた。
「で、今日は一体何の騒ぎなんだ?」
歩み寄ってきた真斗が聞いた。
「昨日の放課後、健と絢がイチャこいて乳を触ってたんだ」
「しかも剛が見ている前でらしいよ」
「違うわーーーーーっ!!!」
剛と潤の歪みまくった説明に、健はすかさずつっこんだ。
「きゃー! なぁにそれ、羨ましい! 私も真斗にそんなことされたい!!」
リリ子は両頬に手を当てて、顔を赤らめて言った。
「……健の様子だと、事実は違うみたいだな」
顔を赤くして呆れながら、真斗は言った。
「もぅ! 真斗ったら照れちゃって! 」
「〜〜〜〜っ」
積極的に真斗の腕を組むリリ子だった。
真斗は赤い顔でため息をついている。
イチャこくカップルに、周りは呆れた表情を向けた。
「と、とりあえず、何があったのか、ちゃんと説明してくれよ」
真斗は我に返った。
彼は、事実をねじ曲げるクラスメイトのことをよく知っているため、一番まともな健に事情を聞いた。
「……じ、実は僕……昨日の放課後、掃除当番で最後まで教室に残ってたんだ。そしたら、志堂さんと一緒になって……」
チラッと目を向けた健は絢と目を合わせた。
絢は顔を赤くして、慌てて前へ出て真斗に説明した。
「そ、そうなのっ! 私、委員会で遅くなっちゃって……そしたら、高宮くんと教室でバッタリ会って、少し話してたら、剛士が来たのよ」
絢は剛士を指差した。
みんながそちらを向き、剛士はハッとして答えた。
「えっ!? あー……っと、俺は、グラウンドでサッカーやってたんだけど、健のヤツがなかなか来ねーから、ボール返すついでに様子見に来たんだ」
「それで? なんで絢ちゃんの胸を触ることになるの?」
リリ子が聞いた。
「そ、それが、その……」
健は視線をそらせ、言いづらそうにモジモジした。
「わ、私が、机につまずいたのを、高宮くんがかばってくれたの。……そしたら……その……」
見かねた絢が代わりに説明したが、彼女も恥ずかしくなってうつむいた。
みんなは「なるほどな」と納得した。
「じゃあ何? あなたたちの言ってること、まるっきり嘘だったってことじゃない!」
優香は剛士と潤を睨んだ。
「お、俺は嘘なんかついてねーよっ!」
剛士の発言に、すかさず絢が返した。
「何言ってんのよ! もとはといえばあの時、剛士がケンカ売ってきたせいで、転びそうになった私を高宮くんが助けてくれたんでしょ!」
(……おめーじゃねーか……)
全員が剛士を見ながら呆れた。
「これで真相がわかったな」
「さっすが真斗! いつものスピード解決ね!」
リリ子が、また真斗の腕にしがみついた。
「…………」
その様子を、優香は不快そうに見ている。
「田代さん」
それに気がついた真斗が彼女に声をかけた。
優香はドキッとして、そちらに目を向けた。
「そういうわけだから、コイツらのこと許してやってくれよ」
真斗は後ろの三人に親指を向けた。
「……高宮くんは、とりあえず絢に謝ってよ。……そこの二人には、反省の意を示してもらいたいわね」
優香はギロっと剛士と潤を睨んだ。
「えっ! お、俺っ!?」
「な、なんで……っ!?」
慌てる二人を見て、真斗が割って入った。
「まぁ、何を言ったのかだいたい見当がつく……。二人とも、田代さんに謝れよ」
呆れ顔の真斗に促され、剛士と潤は顔を見合わせると、渋々《しぶしぶ》前に出た。
「大山くんは絢にも謝ってよ!」
鋭い目で睨む優香に言われ、剛士は「えー……」と頭をかいた。
「わ、悪かったって……。こんなに大ごとになると思ってなかったんだよ。……あ、絢も……」
剛士は顔を赤くして、チラッと絢に目を向けた。
「……わ、わざと触らせたなんて言って、悪かったよ……」
「……剛士……」
気まずそうに謝る剛士を見つめ、絢は頷いて許した。
剛士の謝罪が済み、みんなは今度は潤に目を向けた。
露骨に「ゲッ」という表情をした潤だが、決意を固めて優香の前まで歩いた。
優香は赤い顔で、じっと睨んでいる。
「……そんなに傷つけてるとは思わなくて……。ごめん……」
潤は目をそむけながら謝った。
「…………ほんとに思ってるの?」
疑いの目で見られた潤は、たまらず言い返した。
「っ!? なにそれ? 思ってるよ!」
「……なら……いいわよ……」
優香は赤い顔を隠すように、フイッとそっぽを向いた。
潤は腑に落ちない様子で顔をそらした。
「じゃ、次は健だな」
真斗に言われ、健は覚悟を決めて絢に目を向けた。
「っ!?」
絢はドキッと胸を高鳴らせた。
「…………」
「…………」
二人は見つめ合った。
「……し、志堂さん……あ、あの……」
その時だった。
「おはよーございマース!!」
通学カバンを背負い、教室へと元気よく入ってきたのは、憧れのエミリーちゃんだ。
(エっ、エミリーちゃんっ!!?)
健はドキーッと胸を高鳴らせた。
みんなもエミリーちゃんに目を向けた。
「あ、おはよう、エミリーちゃん」
近くにいた女の子たちが彼女に挨拶した。
「おはよーございマス! とーしたんデスカ? なんだか様子がおかしいデス」
エミリーは健たちが集まっている後方に目を向けた。
健はギクリとして、歩み寄ってくるエミリーから視線をそらした。
「何かありまシタ? どうしてみんな、ここに集まってマスカ?」
エミリーは不思議そうな顔で、健や絢たちの顔を見た。
「ね、ユウカ! また何かありましタカ?」
純粋な笑顔を向けるエミリーに、優香は仕方なく答えた。
「高宮くんがね、昨日絢の胸を触ったらしいのよ。……わざとじゃないみたいだけど」
優香はジロッと健に目を向けた。
(〜〜〜っ!? も、もうダメだぁぁぁぁぁっっ!! 僕の恋は終わったぁぁぁぁぁっっ!!!)
健はギュウッと目をつむり、エミリーからの非難に備えた。
「……へ……? ムネ……?」
エミリーはキョトンとして、絢に目を向けた。
すると、なんのためらいもなく近づき、両手で彼女の胸を揉んだ。
「っっ!!?」
クラス全員が驚き、唖然とした。
揉まれている絢も、突然のことに訳がわからず硬直している。
「な、何してるのっ!? エミリーちゃんっ!!」
優香が慌ててエミリーの腕を掴んで引き離した。
手が離れ、絢は慌てて腕で胸を隠した。
「ムネって、ここデスカ? チガウ?」
エミリーは振り返って聞いた。
「そ、そうだけど……」
予測不能な彼女の行動に、優香はたじたじになっている。
エミリーは健に目を向けた。
「ケン!」
健の肩がビクッと跳ねた。
「は、はいっ!?」
エミリーは歩み寄り健の前に立った。
(エ、エミリーちゃんが……っ、憧れのエミリーちゃんが、こんなに近くにいる……っ!)
健の鼓動はバクバク鳴っている。
すると、エミリーは人差し指を健の顔の前に出した。
「いいデスカ? オトコノコが、オンナノコのムネを触ってはいけませんのヨ!!」
エミリーは「めっ」と健に注意した。
「……あ……ハイ……。ごめんなさい……」
健は素直に頭を下げた。
「……あのねぇ、高宮くん。謝るなら絢にでしょ?」
優香が呆れた顔で言った。
「あっ! そ、そうだった……。あ、あの、志堂さん」
「……っ」
絢は恥ずかしそうにする健を見つめた。
「き、昨日は、ごめんなさい。……嫌な思いさせてしまって……」
絢のもとへ来た健が頭を下げた。
「……あ……。も、もういいの。気にしないで高宮くん……。わ、私、そんなに嫌じゃなかったから……」
「……え?」
健は顔を上げた。
「えぇっ!? あ、ちがっ……っ!! 〜〜〜〜っっ!!!」
みるみる顔を真っ赤にさせた絢は、健に背中を向けた。
絢は恥ずかしさに耐えられず、走って教室を出て行った。
「え? ちょっ、し、志堂さんっ!?」
「絢っ! もうすぐ授業始まるわよ!?」
優香は慌てて絢の後を追った。
「…………」
健は呆然と佇んでいた。
(……罪なヤツ……)
健の後ろで、剛士、潤、真斗が意味深な目を向け、同時に思っていた。
「アヤ、どうしたんでショーカ?」
エミリーに聞かれたが、健は何も言えず、かぁっと顔を赤らめた。
「授業が始まりマスネ」と、エミリーは何事もなかったように自分の席へと向かった。
剛士と潤も何事もなかったように自分の席へ向かい、真斗は自分の教室へと向かうリリ子を送り出している。
(…………エミリーちゃんと、ついに話したぞ……!)
いつもの風景へと戻っていく教室。
一歩先へ進んだ恋に、健は心の中で大きくガッツポーズをしたのだった。
「気づいて! エミリーちゃん」おしまい。
最終話も最後まで読んでくださって、ありがとうございます!
AIの「見立て」によるキャラクタープロファイリング、今回は【真斗とリリ子編】を活動報告に載せています。
合わせて読んでいただけたら嬉しいです!
シリーズとしてまたお披露目できる機会があればいいなと思っています。
最後まで見届けてくださった皆さま、本当にありがとうございました!!
以前に投稿した「ワンド&ソード 〜王の守護者〜」の簡潔版をカクヨムにあげていますので、そちらもどうぞよろしくお願いします!!




