第二話「男同士の抱き合い」
次の日の朝。
住宅街は、登校途中の子どもたちで賑やかだ。
角の一軒家。
この青屋根の平凡な家の門の前に、ランドセルを背負った一人の少年が立っていた。
少年は『高宮』の表札の下にあるインターホンを鳴らし、応答を待っていた。
「はい」
「美舟です」
「あ、潤くん? ちょっと待ってね。健、今支度してるから」
健が遅いなんて珍しいなと、彼の幼馴染である美舟 潤は思っていた。
「…………」
焦茶色の癖毛を風に揺らし、腕を組んで待っていた。
だが、なかなか出て来ない健に、潤は苛立ち始めた。
(〜〜〜っ、なんで僕がこんなに待たされなきゃいけないんだよっ!)
そう思っていると、右隣にただならぬ気配を感じ、潤はハッと視線を投げた。
「のわあっっ!!?」
驚きのあまり、潤は声を上げた。
そこには、正気を失い亡霊のような顔で立っている健がいた。
まるで周りに人魂をフワフワ浮かせていそうな佇まいだ。
「なっ! 健っ!? 急に現れるな!」
潤は心臓を押さえながら怒鳴った。
死にそうな顔の健は、ゆっくりそちらに目を向けた。
「……潤……。僕……っ」
「……?」
健の様子がおかしいことに、潤は眉をしかめた。
「じゅん〜〜〜〜〜っっ!!!」
途端に健は潤に泣きついた。
「……は? な、何……」
抱きつかれた潤は、困惑しながら健の顔を覗き込んだ。
「……僕っ……もう、だめだぁ……学校いけないよ…………!」
いつになく、弱気な発言をする健だった。
そんな彼の腕の力に苦しさを覚えながら、潤はとりあえずわけを聞こうと、体を離すために肩に手を触れた。
「わー、見てー! 男同士が抱き合ってるー」
「うえーっ! 気持ちわるー」
近くを通る下級生の女の子たちがこちらを見てひそひそと言った。
「……離れろっ!」
「おぅっ!」
潤は『ベシッ』と健の顔に張り手を喰らわし、体を離した。
「はぁっ? 志堂さんの胸を触ったぁ!?」
「……う、うん……」
(……コ、コイツ……、見かけによらず大胆なヤツ……)
潤は顔を引きつらせて、思い悩む健に目を向けた。
二人は周りの子どもたちの波に乗りながら、通学路を歩いていた。
「休むってのも考えたけどさ、それだと余計に罪悪感が残るし、志堂さんともっと顔を合わせづらくなるだろ?」
健はランドセルの両肩紐を持ちながら、ため息をついて続けた。
「けど、どんな顔して学校行けばいいだろうって考えてたら、もうわけわかんなくなってきて……」
健が下を向きながら話すのを、潤は黙って聞いている。
「ねぇ、潤。僕、どうしたらいいと思う?」
「…………謝ればいいと思う」
潤はしれっと答えた。
(……んなことわかってんだよっ! こっちが聞いてんのは、どうやって謝るかなんだよっ! ……それに第一……)
苛立っていた健は、再び思い悩むように下を向いた。
(エミリーちゃんにこんなことバレたら、印象悪くなるじゃないか……これじゃあ、彼女に告白する前に嫌われる……。彼女が登校する前に、なんとか志堂さんに謝って誤解を解かないと……!)
健はランドセルの紐をギュッと握った。
「けどさ、彼女が出てくる前に謝った方がいいと思うよ」
「ぇえっ!?」
まさか、今考えていたことが読まれたのか?と、健は驚いて潤に顔を向けた。
大袈裟に驚く健に、潤は怪訝な顔をしながら言った。
「ほら、志堂さんの横にいっつもくっついてるヤツ」
潤は露骨に嫌そうな顔をした。
「あ……ああ……。田代さんか……」
エミリーちゃんのことはバレていないと、ホッとしたのも束の間。
また新たな試練が浮上し、健の足取りは重くなった。
次回へつづく!
第二話も最後まで読んでくださってありがとうございました!
活動報告にて、AIの「見立て」によるキャラクタープロファイリング【健とエミリー編】
を載せています。
本編と合わせて楽しんでいただけたら嬉しいです!
次回「とんでも発言」もよろしくお願いします!!




