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“手ブラなウケビト”  作者: タクト
 一章
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 スケルトンを突破しろ

 グレン達がモッチョと戦ってるとき、エルフはスケルトンに包囲されていた。


 スケルトンは不死実験の副産物として生まれた魔物とされ、実験の余波が全世界に広がり、各地で自然発生する様になったと言われている。

 そんな魔物が十三体、中に入ったエルフを歓迎した。


 最初の不意打ちをなんとか回避し、反撃に抜き払った剣で一体を倒した。


 「思ったより、軽い……いけるか」


 三体がスクラムを組み体当たりを仕掛けてきた。

 大きく回り込んで避けようとして、その方向に投げ付けられた頭蓋骨に退路を阻まれた。

 避けられない、覚悟を決めて剣を横一文字に持ち、腰を落とし構えた。

 

 衝撃。

 ガラゴロと骨の砕ける音がして、陣形の真ん中一体が砕けた。

 その砕けた仲間の骨を盾にし、残りの二体がエルフを強引に抑え込む。


 背後をチラ見すると、尖った骨を構えた別のスケルトンが二体、こちらに突っ込んでくる。


 エルフは剣を構えたまま、魔力を放出した。

 “ファイアボール”とも呼べないが、大きな火球が一瞬、スクラムを組むスケルトンの眼前を走った。

 二体が驚き、抑え込む力が一瞬弱くなり、その隙にスクラムから抜け出し、“バーニア”も併用して横に大きく跳んだ。


 直後、背後からこちらを狙った二体とスクラムを組んだ二体がぶつかり、お互いの骨を撒き散らした。


 再度“バーニア”を使い、一度大きく間合いを取ってから、エルフは息を吐いた。

 こいつらはさっきから自身が壊れる前提で動く上、壊れた味方の骨を躊躇いなく武器にして攻撃してくる。

 自我がなく、一つの目的を確実に達成するために動いている。そう感じた。


 呼吸を整えている間に残りのスケルトン達は、壊れた仲間から骨を拾い新たな得物として構えている。

 その内の一体は、何が面白いのか仲間の骨を床に叩きつけ始めた。

 

 「ファイアボール」


 エルフが炎を放ち、スケルトンが仲間の頭蓋骨を投擲しそれを打ち消した。


 再び接近戦になり、骨棍棒で武装したスケルトンと斬り合う。

 右から来たスケルトンを片手に持った剣で受け止め、鞘で横殴りにし、壊す。


 背後に回り込んだ一体が骨棍棒を振り下ろす。

 反応が間に合わず、後頭部に直撃を受けた。

 幸い、骨が脆かったのか、打撃と同時に骨が砕け、そこまでの衝撃では無かった。


 痛む頭と一瞬遠のく意識を何とか繋ぎ、背後のスケルトンに振り向き様に上段回し蹴りを入れ、首の骨をおかしな方向へ向けさせ、一時的に退かせた。


 最初に一体目を壊した所に陣取る二体が、一体目の骨をでたらめに投げてくる。


 剣で骨を弾きながら二体の頭上を見ると、丁度真上に小さなシャンデリアが吊るされていた。

 “ファイアボール”で吊り下げている金具を壊し、二体の頭上に落とした。

 追撃にもう一度“ファイアボール”を撃ち、とどめを刺す。


 背後から聞こえるガコガコ言う足音に振り向き様に腰の回転力を乗せた斬撃を放つ。

 こんなヤバい所に一般人が無言でやってくる訳がないと、確認してない。

 やっぱりスケルトンだった。二体が一度に砕け飛ぶ。

 

 首がおかしな方向へ向いた一体が再度、仲間の骨を両手に持ち、こちらへ殴りかかってきた。

 右手の横薙ぎを避け––フェイントだ。

 左手の骨を両手で構え直して頭上から振り下ろす。

 エルフは頭上に掲げた剣でその一撃を防ぐが、スケルトンは、顎門を開き、その剣を口で押さえ込んだ。

 さらに骨棍棒を捨てて、空いた両手でエルフの右肩と左腕を握り、そのまま押し進み、柱に押し付けた。


 「くっ、放せ」

 

 さっきからずっと仲間の骨を床に叩きつけていたスケルトンが立ち上がり、こちらに向かってくる。

 手には、鋭く尖った骨が握られている。

 首がおかしな方向へ向いたスケルトンの肋骨の隙間からその尖った骨を突き出しエルフ刺した。


 「どふっ…」


 胸の中心を刺された。血がたちまちに溢れ出す。

 スケルトンが骨を抜き、もう一度構えた。

 やられる!

 

 「どぅえらぁああぁ!」

 

 押さえ込まれたまま強引に“バーニア”を使い、二体を巻き込んで対面の本棚へ肩から突っ込んだ。


 ガラコンと盛大な音がして、最後の二体が砕けると、そこらに散らばっていたスケルトンだった骨の山は一斉に文字の塊と化して霧散した。


 本棚からばら撒かれてのしかかる本をどかしもせず、エルフは荒い息を吐いた。

 

 仲間の死を当然のように見過ごし、連携を取り続けられる魔物、いや生き物など、記憶喪失で常識感が欠落しているエルフからしても不気味だ。はっきり言って怖い。

 誰かに制御されているのか、あるいは元から自我が無かったのか……

 

 とにかく、エントランスには誰も居ない。

 もっと奥へ行ってみないと状況が分からない。


 本を除けて立ち上がろうとするが、身体にまるで力が入らない。

 刺された胸がずっと痛みを訴える。

 そういえば、背中が湿っぽい……


 エルフは苦労して起き上がり、刺された胸を見て目を見張った。

 

 血が止まらない。

 黄色いポロシャツが真っ赤に染まり、流れた血が地面にまで広がっている。


 「嘘……だろ」

 「なかなかやるのぉ、お若いの。

 この数のスケルトンをあっさり仕留めるとは驚いたわい」


 声の主へ視線を向けると、そこには老婆が立っていた。

 白銀の栞紐が付いた大きな本を片手に持ち、灰色の髪をした老婆がこちらを見下ろしている。


 「あぁ、お前はそう簡単には死ねんから安心せい。

 ん、聞いておるか?」


 エルフは意識を失っていた。

  

 老婆、リリーナは本から大量のスケルトンを章喚し、図書院の外へ放った。


 モッチョを倒し、いざ図書院に入ろうとしていたグレン達は行手を大量のスケルトンに阻まれ、それ以上図書院に近付く事は出来なくなった。


 エルフの身を案じ、一人で中に飛び込もうとするグレンをメイズが宥め、ウケビト達は依頼人に失敗の旨を伝える事になった。

 

*(๑^. .^๑)۶ 〜

 


 「で、なんでこんな危険な仕事を俺たちみたいな半端者に斡旋するんだ?」


 一通りの話、中央大図書院から魔物が沸いてきて、討伐隊を派遣した事の顛末を聞いたショウタが不機嫌さを隠さずにロジーナに聞いた。

 

 「なぜって、身寄りの無い天涯孤独のお前らなら、万が一死んでも、悲しむ人がいないからさ。

 それに、採集や護衛と違って、失敗してもうちの信頼問題には全く影響がない。

 ノーリスクさ。

 ウケビトの集まりも悪く人手も足りない。

 難易度だけはやたら高い。

 その結果クソガキ共が選ばれたのさ」


 悪びれもせず真顔で言ってのけた。


 「前から思ってたけどこのクソババァ、相当性格悪いぞ」

 「しかも、言っている事は全て正しくて、微妙に言い返しにくい所が腹立たしいわ。

 それでも、無謀な仕事を押し付け、結果ウケビトを死なせたなんて噂が出回るのは歓迎しないんじゃない?」

 「あの、姐貴?その方向だと俺ら死ぬ前提なんだが」

 「そのときゃ、あんたらが人の静止も聞かず勝手に行って勝手に死んだと言いふらすさ。

 第一死なないだろう?」


 コトミの放った捨身の反論?すら無効化し、ロジーナは無情に言い放った。


 「お前らには中央大図書院内部の調査を依頼する」


 事のあらましはこうだ。

 結局中央大図書院周辺のスケルトンを全滅させる事は出来なかった。

 発生原因は中にあるのではないか。という結論に達したが、中に行こうという度胸のある人間が出てこない。

 運悪く、メイズ以上の凄腕はみんな、別口で入った上級の魔物討伐でこの街を離れていたのだ。

 いつまでも手をこまねいていても仕方ないので、選ばれてしまったのが、ショウタとコトミだった。

 

 「私も同行します、エルフを一人で行かせたのは私の責任でもありますから」


 そう言ってグレンの参加も決まった。

 エルフはあれから行方不明になっている。

 中で何かあって閉じ込められたと、臨時パーティーは結論を出した。

 他にも、最初に魔物が出現した時間帯、図書院内に居た人間も、誰も家に帰っていない事から中に幽閉されていると見ていいだろう。

 エルフが行方不明になってもう4時間が経つ。

 

 「頼むよ、コトミ」


 ロジーナがショウタとコトミを交互に見比べた後、断定口調で命じた。

 コトミは同じようにショウタとロジーナを見比べた後、やれやれと言うように頷いた。

 「しょうがないわね。人質を取られてるようなもんだし、なんとかやってみますか」

 

 「中央大図書院までの道は任せろ」

 端の方で大人しく話がまとまるのを待っていたメイズが最後にそう締めくくった。


 本当にこいつがここで一番の手練れか?とショウタは思った。

K.コトミ

S.ショウタ


K.「ショウタ、大丈夫?」

S.「何がだ?」

K.「手が震えてる。怖いんでしょう」

S.「そんな事ねぇよ」


K.S.次回“現在進軍中”


K.「大丈夫。ショウタの事はあたしが守るから。十年前と同じように、ちゃんと守るよ」

S.「……姐貴、俺はもう大丈夫だ」

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