真相、少し遡る……
*(๑^. .^๑)۶ 〜少し遡るよ*(๑^. .^๑)۶ 〜
「この女、どう思う?」
現在ラフラは、両手足の親指をショウタの靴紐で縛られ(“ボンバーマン”の巻き添えで動けないショウタからエルフが剥ぎ取った)頭の上からベアトップワンピースを強引に被せて、ショウタのベルトとペンダントチェーン(“ボンバーマン”の巻き添え以下略)で、上下両端を縛り上げられた結果、頭の先から太腿の付け根までを辛うじてワンピースで露出が抑えられているが、かなり扇情的な姿になっていて、そのまま体育座りの姿勢で壁に背中を預けていた。
「どうって、可愛い女の子でしょ」
「黙れ」
足の生えた袋の様な姿になったラフラを、エルフは容赦なく鞘に納めた剣で殴った。
ワンピースで視界を塞がれているラフラは大人しくエルフの暴行を受け入れ「んきゃん」と余裕のある悲鳴を上げた。
「おい寄せよエルフ。
客観的に見たらお前のしてる事はただの婦女暴行だ」
「その過程を知るオレとしてはまだ甘いと思うんだがな」
「そこは否定しない。
て訳でラフラさんよ、大人しくこっちの質問に答えてくれないかな。
でないと怖い怖いエルフさんがお前に何するか分からないし、今の俺では止めきる自信がない」
意図せず囚監場の人間がする、優しい衛士と怖い衛士の構図を取りつつ、エルフが尋問に入った。
「まずお前は何者だ?」
「裸のおねえさん」
「……職業は?」
「裸のおねえさん」
「……ショウタ、こいつ殺そう」
「ま、待てエルフ。その抜身の剣で何をする気だ」
視界を防がれたラフラには見えないが今彼女の目の前では、ラフラの命を巡ってショウタによる命懸けの攻防が繰り広げられていた。
「君達愉快だね。
出来たら肉眼で見てみたいものだよ」
「ちょ、お前の為に張らなくて良い命を投げ出す俺の身にもなれ」
ゼイゼイと肩で息をしながらショウタが喚いた。
エルフも一応の落ち着きを取り戻し、剣を納めた。
「んじゃ、もう一回聞くけど何者なの?」
「私はラフラって名乗ってるよ」
ショウタの質問にはあっさり答えた。
一瞬沈黙してショウタとエルフが目を見合わせた後、ショウタが質問を重ねる事にした。
「何の目的があって俺達に接触したんだ?」
「それは、そうだね。
ショウタ君に逢いたかったから」
「……ミリーとの関係はなんだ?」
「えー、無視するのひどいなぁ……
ミリーは受けた依頼に関連する人物。
それ以上は言えないのは、ショウタ君もウケビトなら分かるよね?」
言葉に詰まった。
ウケビトは依頼人が望んだ場合、依頼の詳細を第三者に話してはいけないと言う決まりがある。
「その依頼は正規の手続きで受けたものか?」
ウケビトへの依頼は、ウケビト管理人を介してウケビトへ受注される物と、依頼主が個人的なコネクションを用いて、直接ウケビトへ依頼する不正規な手続きの二通りに大別される。
エルフ達が今受けている依頼は、依頼主が直接ウケビト管理人たるロジーナにコネクションがあったという例外的な部分はあるが、その後表向きはショウタ達に推薦した事で処理されている為、正規の手続きの依頼に該当する。
一方不正規な手続きは、違法性のある物でもウケビトが了承すれば、実行に移されるという点がある。
俗称として不正規な手続きとは言われるが、元々は、私的な内容が強く、多くの人の目に触れさせたくない内容の依頼をする為のシステムだったのでウケビトのモラル次第と言った面もあり禁止されている訳では無い。
ただ、それでも法に触れる寸前の物や、衛士が絡む事件に発展しやすいグレーなやり方だ。
ショウタの質問は、ラフラの受けた依頼が違法性を持ったものかを予測する判断材料を望んでのものだ。
「そうだね、一応は正規の依頼だけど、不正規な依頼とも言えるね。
依頼人が誰かも言えない」
「謎かけか?」
「正直に答えたまでだよ」
「お前はオレ達の敵なのか?」
さっきから沈黙を保っていたエルフが口を開いた。
「エルフ?」
「有用な話を聞き出せそうに無い。
邪魔なら殺す」
「その発想は寄せ……
待てエルフ。まだ答えを聞いていないぞ……そのレンガ片を詰めた靴下で何をする気だ」
「アハハハハハ」
ラフラの命を巡る死闘第二ラウンドが始まるのを尻目に、わざわざ発音する様な声でラフラが笑った。
即席ブラックジャックと剣による変則二刀流のエルフと、相棒で大立ち回りを演じていたショウタ二人の動きが止まった。
「エルフ君、君は嘘吐きだね。
本当に私を殺せるの?」
「死が望みなら普通にそう言え。
直ぐに実行に移してやる」
「[訓練棟]での模擬訓練でヒィヒィ言ってたエルフ君に出来るのかな?
まだ人を殺した事のない童貞でしょう」
「だったらお前が記念すべき最初の一人だ。
一撃で終わらせてやる」
「エルフ君の初めてをもらうのも悪くは無いけど……君達は今自分が置かれている状況に気付いているかな?」
「「は?」」
この状況を理解しているのかは、むしろエルフやショウタがラフラに対して言いたい事だ。
手足を縛られ、視界も塞がっているのだ。
ショウタ的に殺す気は無いが、この状況なら万が一そうしなければならなくなっても、簡単だ。
いい加減頭のネジが飛んだエルフとの間に板挟みされるのにも疲れたので、何が狙いなのかさっさと聞き出して帰りたいのが本音だ。
「まず、第一に君達は私の魔法を全く理解していない。
折角だから付き合ってあげたけど、この拘束、私には何の意味もないよ。
その気になれば3秒で抜け出せる。
本気で縛り上げたいならせめてシベリウムの手錠くらい用意すべきだね」
二人の顔に緊張が走る。
もし、言っている事が本当なら、厄介だ。
透明化と浮遊を組み合わせられたら今度こそ逃げられてしまう。
「あ、安心して君達からは逃げないから」
そう言ってラフラはベアトップワンピースの下で大きく息を吸った。
「誰か、助けて。襲われる!犯される!
私今男二人に襲われてるの!!助けてー!」
「「!!??」」
ショウタは思い出していた。自分達のしている事は、客観的に見たらただの婦女暴行だ。
過程を知る人間は、そうでない事は分かるのだが、そうでない人間に納得させてやる要素が無い。
「悲鳴が聞こえたぞ」
「あっちだ」
「誰か衛士を呼べ」
この路地は道幅が狭く、長い一本道だ。早く逃げなければ確実にレイプ魔として捕らえられてしまう。
「クソ、ずらかるぞ」
「なぜ逃げる必要がある」
「この状況だと、説明するまでも無く俺達が悪人として捕まるんだよ。
それがこの世の中なんだよ」
「……覚えてやがれクソ女」
足音が近付く。
エルフとショウタは悪役染みた捨て台詞を残してその場を後にした。
S.ショウタ
E.エルフ
S.「くそ、走りにくい」
E.「キビキビ走れっ。ただでさえ不愉快だった上に捕まると面倒な事になる。それにそろそろ[キャラバン]のバイトが帰る時間だ」
S.「なんで俺の靴紐やベルトがなくなったんだったかなぁエルフさんよぉ」
E.「他に手頃な紐が無かったからだ」
S.E.次回“ある日の食卓 姐貴が作る料理”




