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“手ブラなウケビト”  作者: タクト
 二章
16/46

 みなさ〜ん、殺し合いの時間です

9/29より、本作のタイトルを

“Eternal LiFe”から“手ブラなウケビト”へ変更します。

今後とも本作品をよろしくお願いします。

 エルフは薄暗いビルの廊下を走っていた。

 エルフは記憶喪失の青年だ。

 剣を振り回す身体はそれなりに鍛えられていて背は170cm程である。

 この前の騒動で無くした剣の代わりに新しく買ったばかりの剣を早くも血で汚し、まるで囚人が着るようなボロボロの服も返り血に染まっている。

 

 廊下のあちこちには監視カメラが設置されていて、左手首に付けたバイタルチェックバンドと共に、焦りを隠そうともしないエルフの様子を遠く離れた場所にあるモニターに映し出していた。


 ある日、ロジーナに呼び出されたエルフ達は[レザルボアマギカ]横にある[訓練棟]と呼ばれる場所に連れ出され、一角のビルに入った。ショウタが持参したボロボロの服に着替えさせられ、バイタルチェックバンドを嵌めた後、急に濃密な煙幕に襲われた。


 煙幕が晴れると、周りには誰も居なくなっていた。

 足元にはいつの間にか地図が置いてあり、どうやらAエリアと呼ばれる場所に居るらしい事が分かった。


 ひとまずショウタ達を探そうと、ビルを散策しだしたが、来た時は降りて無かったシャッターや、急ごしらえなバリケードに阻まれて中々先に進めなかった。

 それでも物音を頼りにやっと人を見つけると、一人の男が血溜まりに倒れ、もう一人の男が血に染まったナイフを持っていた。


 「……なん…だよ」


 ナイフを持った男がエルフに気付いた。

 エルフにもナイフを突き立てようとする男に恐慌状態になったエルフは、その男を殺した。


 その後行く先々で殺し合いや、一人でいる場合はエルフを殺そうとする人に会い、心はすっかり麻痺してしまった。

 

 「死ねぇ!」

 

 曲がり角を差し掛かった所で、大きな銃を構えた男と出会してしまった。

 エルフは自分の不運を呪いながら、“バーニア”を使い跳び、なんとか遮蔽に飛び込んだ。

 

 一拍遅れて銃声。

 チュタタタタと、一つの銃口から信じられない程の弾丸が連続で吐き出される。

 撒き散らされる弾丸の雨がさっきまでエルフが立っていた場所を通過した。


 「ちぃ、勘のいい奴め」


 遮蔽に身を隠すエルフに向けて、銃を構えた。

 銃口の下のマシンが光る––––––––


 「くらえっ」

 

 本能的な恐怖を感じたエルフは、受け身も考えずに“バーニア”を使い、倒れた柱の影に飛び込んだ。

 

 バシュっと音がして、銃弾より大きな、しかし遅い何かがさっきまでエルフが身を隠していた遮蔽物に飛び込み、爆発した。

 

 「その武器なんだよっ!」

 「アサルトライフル。

 銃弾を連射できる最強の銃だ。

 化学の街ではそれなりに普及してるらしいが、この街で持ってるのは少ないだろうなぁ」

 銃口に下付されたマシンを操作しながら、銃手が答えた。

 

 「因みにこいつはグレネードランチャー。

 まともに受けたら身体はバラバラだろうな」

 グレネードランチャーが光る。

 やられる!


 エルフは柱の影に隠れたまま“ファイアボール”を投げた。

 “ファイアボール”がグレネード弾に命中し、二人の中間位置で炸裂した。

 閃光と衝撃、爆発音を撒き散らす。


 エルフは半身を遮蔽に隠したままだったので、ダメージを受けずに済んだが、射手は全身を晒したままだったので、そうもいかなかった。

 爆発で怯んだ男に“バーニア”で一気に間合いを詰め、心臓を狙って剣を刺した。


 騒音を辺りに撒き散らしたのだ、直ぐに他の奴らが来る。

 殺した男からアサルトライフルを奪い、エルフはこの場を去ろうとした。


 「ひゃっははは、お前、コトミちゃんの所に居候している奴だな!」

 「て事は、コトミおねえちゃんに毎日手料理食わせてもらってるんだなぁ!」

 「ひひゃははす、ならば容赦なく死んじまえ」


 以前ショウタに絡んでいたメリケンサック使いの三人組が、爆発音に釣られてやって来た。

 エルフは端から彼らをメリ、ケン、サックと呼ぶ事にした。

 

 「俺たちは三人いるんだ」

 「対しててめぇは一人だ」

 「守ってくれるおねえちゃんはいねぇぞ」


 メリ、ケン、サックの三人がメリケンサックを打ち鳴らし、真っ直ぐに走ってきた。


 「そういえばコトミが料理してるとこ見た事ないな。

 今度何か作ってもらおうかな」


 因みに彼らは、エルフの後ろから走り寄っているので、エルフが今、手にアサルトライフルを持っている事を知らない。


 「「「死ねぇ––––––––えぇええ!?」」」


 威勢よく飛び出した三人は、振り向いたエルフが持つアサルトライフルに盛大に驚き立ち止まった。


 「それは反則だ!」

 「そんなもん、この街のどこで手に入れた!」

 「それは危険だ!俺達が預かるよ」

 「えーと、こう?」

 エルフは何となく引き金に掛けた人差し指に力を込めてみた。


 バララララララララ……

 「銃とはなんと恐ろしい武器だ……」

 

 自分で作った惨状に呟き、弾切れになったアサルトライフルを捨てて、今度こそその場を後にした。

 彼らがコトミの手料理を口にする事は二度と無いだろう。


 遠くない場所から銃声や金属を打ち鳴らす音が断続的に聞こえる。

 さっきの爆発音を頼りに人が集まり出しているのだ。


 ––––––––ピンポンパンポーン『只今より10分後、Bエリアに致死性の毒ガスを注入します。該当エリア内の方々は、避難してください』––––––––ピンポンパンポーン


 間の抜けた放送が新たな地獄を告げる。

 エルフはAエリアからそこそこ移動していて、今いる場所はそのBエリアなのだ。急いでこの場から離れなければならない。

 エルフは足音を殺し、やり過ごせる人はやり過ごし、どうしても避けられない位置にいる相手は“バーニア”を使った高速奇襲で倒し、なんとかBエリアとCエリアを隔てるシャッター付近に辿り着いた。


 Cエリア側に門番のように男が立ちはだかる。

 

 「あんらぁっ、あんらぁっ、あんらぁっ!いい男じゃなぁいっ」

 

 男?が一歩進みでた。


 ––––––––ピンポンパンポーン『あと3分で、致死性の毒ガスがBエリアに注入されます。シャッターも閉鎖いたします』––––––––ピンポンパンポーン

 

 「そこを退け」

 

 目を血走らせたエルフが男?に切り掛かった。

 “バーニア”で加速しながら、剣を横に薙ぎ払う。男?は一歩踏み込んで剣を握るエルフの両手首を握り、エルフの動きと“バーニア”の勢いを利用し、自身の体を軸にUターンさせる様に投げた。

 

 エルフの感覚的には、剣の間合いに入ったと思った瞬間男?が急接近し、視界が回り、気がついたら投げられていた。

 

 「いい。いい。いい勢いよぉっ!でもそれじゃダァメ」

 男?は大仰な身振りと共に捲し立てる。


 「中途半端な魔法と剣術、勢いだけの単調な動きじゃあ、低級の魔物やチンピラしか相手にしてくれないわよぁ」

 すぐさま構え、次の動きを模索するエルフを構えもせずに、妙な熱を持って語る。


 「不器用な男が全部やろうとしたらダメ。一個のプレイを極めてみなさい。全部下手くそのまま同時プレイなんてしても意味ないわよ」

 「どぅあああぁらぁ」


 エルフは剣術を選んだ。

 今度は“バーニア”を使わず走りより、上段から斬りかかる。


 「そうっそうっそうっ!その調子。でも、そんなんじゃあちっとも気持ちよくなれないわ」


 意味を捉えかねるが、漠然とした怒りを感じさせる喋り方をとりあえず無視して、エルフは攻撃を続ける。

 しかし、この男?にはまるで通用しなかった。


 上段から振り下ろしを半歩右に避け、袈裟に切り上げる攻撃は一歩踏み込みエルフの胴体を突き飛ばす事で不発にさせた。

 姿勢を整えたエルフが今度は横薙ぎに振る剣を剣の腹を叩く事で軌道を逸らし避ける。

 両手をだらりと下げた状態で避け、必要な時だけ手を動かしあっさりと捌き続ける。


 上段切り払いを屈んで避け、そのままエルフの横を通り過ぎ、軸足を払い背後から抱きしめるように動きを封じた。


 「へぇ、面白い身体してるわねぇん。鍛え方も悪く無いわぁ〜。

 あーた、何か悩んでない?どう?あーしについて来る気無い?」

 男?の手がエルフの身体を下から上へと撫で上げる。


 「放せ!気持ち悪いんだよ、馬面野郎!」


 ––––––––ピンポンパンポーン『あと1分で、致死性の毒ガスがBエリアに注入されます。只今からシャッターを閉鎖いたします』––––––––ピンポンパンポーン


 錆び付いた音がして、ゆっくりシャッターが降りてくる。

 エルフは背中から“バーニア”を全力で放って強引に逃れた。

 

 しかし、運悪くシャッターに背を向ける形で組み合っていた為に、まだBエリアだ。


 ボスッボスッ––––


 突如銃声が響き、エルフと男?に向かって大玉の弾丸が迫った。

 エルフが剣で弾き落とした。散らばった破片は氷で出来ていた。

 

 「エルフに、スタードか。

 そこは通行止めか?」

 「まぁ、まぁ、まぁ!いい男が二人も……

 でもごめんねぇ!あーしは一度に愛撫する相手は一人と決めてるの。

 あーたは通っていいわっ!」


 スタードはコバルドに通るように促したが、コバルドはその場から動かずに奇妙な銃声のする銃をスタードへ向けた。


 「この男は連れが世話になったんだ。

 見殺しにする気はない」

 「へぇんっ、いい心がけだわ。でも今のそれは野暮な横槍よんっ!

 いいから早くイッテ!」

 「断るっ!」


 シャッターがゆっくりとしたスピードで半分ほど閉じて行く。


 コバルドが銃を発砲した。

 弾道を見切ったスタードが身を屈め、弾丸は空を切った。


 「エルフ、何も考えるな。加速して突っ込め」


 コバルドが叫び、エルフが走った。どの道このままでは毒で死ぬ。ならこの二対一の状況に賭ける。

 

 「どああぁだぁ」

 身を低くしてエルフは走った、その背後からコバルドの弾丸が走る。

 

 “バーニア”で加速したエルフと、その背後で撃った弾丸は同時にスタードへと到達した。

 スタードはベリーロールの要領で弾丸とエルフの斬撃の間を掻い潜った。

 エルフとスタードが向き合うと、スタードの背後にコバルドが立つ形になった。

 

 「待って待って待って!花はひとつだけ愛でたいのっ!」

 「「知るか」」

 

 特に狙った訳ではないが、エルフとコバルドの声が重なった。

 同時に二人が動く。

 エルフの袈裟に斬り下ろす斬撃とコバルドの一塊の弾丸が同時にスタードを襲う。

 

 スタードはさっきまでの研ぎ澄まされた動きを見せず、まごついたように足を動かし、斬撃と氷の弾丸両方を同時に受けた。


S.ショウタ

K.コトミ

S.「コトミお姉ちゃん、手筈は?」

K.「ロジーナさんには頼んでおいたよ」

S.「これで当分は凌げるな。しかし、エルフは気の毒だね」


S.K.次回“殺し合う仲間達、エルフVSショウタ”


K.「とにかく今は不良在庫を片付けないと、他の商品を置く場所もないし、しょうがないのよ」

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