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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第二章 ホワイト企業への道

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26:騎士団の崩壊

 聖教会軍による2号店の完全包囲から、数時間が経過した。

 店の外では、数千の聖騎士と神官たちが陣を張り、一切の客の出入りを禁じる「兵糧攻め」を敢行している。


「カ、カズヤ店長……。売上が……客足が完全に止まっちゃいましたぁ……」

 リリス店長が、レジカウンターに突っ伏して泣きそうになっている。

 コンビニにとって、客の回転が止まることは死を意味する。廃棄ロスも膨らむ一方だ。


「……ええ。おまけに、本店の在庫をこちらに回す『物流ルート』も、奴らの結界で遮断されていますね」

 俺は腕時計に目を落とした。時刻はちょうどお昼時を過ぎたあたり。


「シルヴィア。イグニス将軍とメルティ様への本日の定期配達は?」

「……完全にストップしています。イグニス将軍のプロテイン弁当とエナドリのセットが500食。メルティ様の魔導開発部へ納品予定だった『ポータブル電源5台。全て2号店の倉庫で足止めを食っています」


「なるほど」

 俺はニヤリと黒い笑みを浮かべた。

「では、そろそろやってきますね……」


◇◇◇


 その頃、店の外では……

 シルヴィアにぶっ飛ばされて、頭に包帯を巻いた教会の指揮官が、包囲網の中心で勝ち誇っていた。


「ふははは! 見ろ、魔族の店は完全に沈黙したぞ!

 いくら強力なアンデッドや結界があろうと、客が来なければ干上がるだけだ! このまま数日包囲を続ければ、奴らの方から降伏してくるわ!」


 聖騎士たちも「おおーっ!」と勝鬨かちどきを上げる。

 彼らは自分たちの「聖戦」が完全に成功していると信じて疑わなかった。

 だが。

 下層へと続く大階段から、凄まじい殺気と熱波が降り注いできたのは、その直後だった。


「……あァ? おい、貴様ら。そこで何を通せんぼしている?」


 ドゴォォォォォォンッ!!!


 天井の岩盤をぶち破り、巨大な隕石のように「何か」が広場の中央に墜落した。

 もうもうと立ち込める土煙。


 その中から現れたのは、全身から灼熱の炎を立ち上らせる、身の丈3メートルの竜人だった。


「な、なんだあの化け物は!?」

「ひぃぃッ! ま、魔王軍四天王の一角、『烈火のイグニス』将軍だァァ!?」


 さらに、イグニスの背後の空間がグニャリと歪み、そこからボロボロのローブを着た魔女っ子が、血走った目でふらふらと現れた。

 同じく四天王の一角、『叡智のメルティ』だ。


「……あーもうっ! なんでDマートの配達員が来ないのよ! 予約してたポータブル電源が届かないせいで、研究が捗らないわ!!」

 メルティが杖を振り回し、ヒステリックに叫ぶ。


「こっちもだ! 俺の『マッスル・プロテイン弁当』とエナドリが届かんせいで、筋肉の超回復を逃しかけている! タンパク質が……俺のアミノ酸が足りねえんだよォォォ!!」

 大激怒である。


 最重要顧客たちのライフラインを止めた罪は、海よりも深い。


「……き、貴様ら! 魔王軍の幹部が何の用だ! ここは我ら聖教会が封鎖した!」

 指揮官が震える声で剣を向ける。

 だが、イグニスは血走った眼で聖教会軍をギロリと睨みつけた。


「……あ? 聖教会だと? 知るかボケ。

 俺の『飯』と『エナドリ』を止めたのは、貴様らかァァァァッ!!」


 ゴォォォォォォォッ!!

 イグニスの咆哮と共に、放たれた超高熱のブレスが、聖騎士たちの陣形を一瞬で消し炭に変えた。


「ぎゃあああああ!! 盾が、ミスリルの盾が溶けるゥゥ!」

「ひぃぃぃ! 待って、メルティが呪文詠唱してる! あれは戦略級魔法だ!」


「私の研究時間を奪った罪……思い知りなさい!! メテオ・ストライク!!」

 メルティの杖から放たれた無数の隕石が、教会の魔導部隊に降り注ぎ、広場をクレーターだらけに変えていく。空が見えないのに隕石とは……。


 聖なる軍勢など形無しだ。


 彼らが相手にしているのは、魔王軍のトップ。しかも「空腹とカフェイン切れと、納期遅れで限界を迎えた社畜幹部」という、この世で最も触れてはいけない生物である。


「ひ、退けェェ! 話が違うぞ! あのコンビニ、魔王軍四天王と繋がってるじゃないか!!」

 指揮官が絶叫するが、時すでに遅し。

 圧倒的な暴力の前に、数千の聖教会軍はものの数分で蹂躙され、蜘蛛の子を散らすようにダンジョンの上層へと逃げ出していった。


◇◇◇


 ウィーン。

「……カズヤ店長。遅延の元凶は排除したぞ。さあ、俺の弁当とエナドリを出せ」

「私のポタ電も早くちょうだい! バッテリーがもう持たないの!」

 外の惨状などどこ吹く風。


 イグニスとメルティが、自動ドアを抜けてレジに血相を変えて飛び込んできた。


「いらっしゃいませ。イグニス様、メルティ様。

 この度は当店の配送遅延により、多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした」

 俺は深く頭を下げ、リリス店長とセリアに合図を出した。


 バックヤードから、完璧な温度で保温された500食の弁当と、最新型のポータブル電源が次々と運び出されてくる。


「お詫びと言っては何ですが、弁当のおかずを一品ずつ増やしておきました。

 さらにメルティ様には、お詫びの粗品として『充電ケーブル』をお付けいたします」


「おおっ! さすがカズヤ店長、話が分かる!」

「許す! これからも贔屓にするわ!」


 先程まで数千の軍隊を虐殺していた魔王軍のトップたちが、コンビニのおまけに満面の笑みを浮かべている。


 スケルトンによって捕縛された指揮官に、笑顔で話しかける。

「……ご覧の通りです、指揮官殿。

 当店の物流を止めるということは、魔王軍全軍を敵に回すということと同義なのですよ」


「ば、化け物め……。ただの店長だと侮っていたが、貴様……魔王軍を完全に掌握しているではないか……!」

 指揮官が絶望の表情で崩れ落ちる。


「さて、暴力によるクレーム処理は終わりました」

 俺はレジを締め、店内放送のマイクを握った。


「セリアさん。次は貴女の出番です。

 残って震えている聖騎士たちに……『真の救済』を説いてあげてください」

「はいっ、店長!」

 エプロン姿の元・聖女が、マイクを受け取り、コホンと咳払いをした。


 ――いよいよ、聖教会軍の精神をへし折る、トドメの一撃の始まりだ。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


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