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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第二章 ホワイト企業への道

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最終話:世界を支配する

 四天王イグニスとメルティの理不尽な暴力《クレーム対応》によって、数千の聖教会軍は完全に戦意を喪失し、広場の端でガタガタと震えていた。


 逃げようにも、上層への階段は魔王軍のトップ二人が塞いでおり、背後には無表情のアンデッド警備隊が刺股を構えている。完全に詰みだ。


「……さて。暴力による鎮圧は終わりました」

 俺――相田カズヤは、店内に設置した放送設備のマイクを握った。


「セリアさん。次は貴女の出番です。

 あそこで震えている聖騎士たちに……『真の救済』を説いてあげてください」


「はいっ、カズヤ店長!」

 エプロン姿の聖女セリアが、マイクを受け取った。

 彼女はコホンと咳払いをし、澄んだ、しかし力強い声でスピーカー越しに語りかけ始めた。


『聖教会の皆様、聞こえますか?聖女のセリアです。

 洗脳なんてされていません。私は今、自分の意志でこの「Dマート」で働いています』

セリアの声に、聖騎士たちがざわめく。


『教会の皆さんに、一つ質問があります。……皆さんは今、月給をいくら貰っていますか?』


「げ、月給……?」

 聖騎士の一人が戸惑いながら答えた。


「我ら聖騎士は神に仕える身! 清貧を旨とし、報酬などという俗物的なものは受け取っていない! ……せいぜい、月に一度の配給(硬いパンと塩)があるくらいだ!」


『やっぱり! 相変わらずのブラック労働ですね!』

 セリアがマイク越しにビシッと指を突きつけた。


『いいですか皆さん! 「神への奉仕」という言葉は、タダ働きの免罪符ではありません!

 このDマートでは、働いた時間だけ1分単位で「時給」が出ます!

 夜勤に入れば「深夜割増」がつき、週に2日は必ず「お休み」がもらえます!』


「な、なんだと……!? 休みだと!?」

「1分単位で金がもらえる……? そ、そんな天国みたいな職場が存在するのか!?」


聖騎士たちの間に、激しい動揺が走る。

 セリアはさらに追い打ちをかけた。


『それだけではありません! 毎日、休憩時間には「まかない」が無料で食べられます!

 サクサクの衣に甘辛い出汁が染み込んだ「カツ丼」や、肉汁が溢れる「ハンバーグ定食」が食べられます!

 カビたパンと泥水みたいなスープで、魔物と命懸けで戦うなんて……皆さんの労働環境、絶対に間違っています!!』


「カ、カツ丼……! なんだその神の食べ物は!」

「俺たち……なんのために血を流して戦っていたんだ……?」


 極度の空腹と疲労、そして長年の「やりがい搾取」に麻痺していた彼らの心に、セリアの言葉が鋭く突き刺さる。


「……ええい、惑わされるな! それは悪魔の甘言だ! 耳を塞げ!」

 拘束されていた教会の指揮官が叫ぶが、もう遅い。


『今なら、Dマートは人間界への進出に向けて「新規オープニングスタッフ」を大募集しています!

 教会を辞めて、私たちと一緒に働きませんか!?』


ガシャン、ガランッ。


一人の聖騎士が、剣と盾を床に投げ捨てた。

 それに釣られるように、次々と重武装の鎧が脱ぎ捨てられていく。


「……お、俺、実家の仕送りが止まってて……本当は限界だったんだ」

「私なんて、有給休暇の存在すら知らなかった……」

「……すみませーん! 面接希望なんですけど、どこに並べばいいですかー!?」


「「「俺も! 俺も面接お願いします!!」」」


数千の聖騎士と神官たちが、武器を捨て、一斉にDマートの入り口に行列を作り始めた。

 アンデッド警備隊が、手慣れた様子で「最後尾はこちらです」とプラカードを掲げて列の整理を始める。


「……あ、あぁ……。神よ……我が聖教会軍が、コンビニの求人募集に敗北するとは……」

 指揮官は白目を剥いて、完全に気絶した。


こうして、Dマートを巡る人間界との戦争は、一滴の血も流れることなく(※四天王のクレーム処理を除く)、「待遇の差による大量引き抜き」という形で終結したのだった。


◇◆◇◆


聖教会軍の大量離反事件から、半年後。

 世界は、かつてない平和カオスに包まれていた。


「……カズヤ店長。本日の売上報告です。人間界の『勇者ギルド』からポーション10万本のバルク発注。魔王軍からはプロテイン弁当と最新魔導具の定期発注が完了しました」

「ご苦労様です、シルヴィア」


俺は真新しいスーツに身を包み、広大な社長室から外の景色を見下ろしていた。


聖教会はあの後、労働力を完全にDマートに引き抜かれ、組織として崩壊。

 俺が直々に教皇と「商談」を行い、教会はDマートの下請けとして吸収合併されることになった。


人間側のトップと、魔王側のトップが、どちらも俺の店の顧客になった結果……驚くべきことが起きた。


『戦争をしている場合ではない』という共通認識が生まれたのだ。


 もし人間と魔族がドンパチを始めれば、物流ルートが止まる。

 物流が止まれば、勇者は新作のスイーツが買えなくなるし、魔王軍はエナドリと弁当の配給がストップする。

 両陣営にとって、Dマートの営業停止は「世界の終わり」と同義になってしまったのだ。


「カズヤオーナー! そろそろお時間ですぅ! テープカットの準備ができました!」

「店長!地上の広場が、お客様で埋め尽くされてますよ!」


 リリスとセリアが、社長室のドアを開けて笑顔で呼びにきた。


 俺たちは現在、ダンジョンの最下層ではなく、地上の入り口にいる。

 俺が地上に建設した、超大型ショッピングモール。その名も、『メガ・Dマート聖王国本店』。


外に出ると、信じられない光景が広がっていた。


「おい勇者! 割り込むな! 俺は昨日から並んでるんだぞ!」

「うるさいぞイグニス将軍! 今日の『数量限定・特上魔牛の焼肉弁当』は絶対に俺が買うんだ!」


 かつて命を懸けて殺し合っていた勇者レオンと四天王イグニスが、開店待ちの行列の中で、弁当を巡って口喧嘩をしている。

 その後ろでは、魔導師とオークが肩を並べて立ち読みをし、ドワーフと人間が仲良くフードコートの席取りをしている。


「……ふふっ。店長が言っていた通り、美味しいご飯と豊かな生活の前では、種族の壁なんて関係なかったんですね」

 シルヴィアが、眩しそうに目を細めて言った。


「ええ。暴力ブラックで世界は征服できませんが、経済と福利厚生ホワイトなら、世界を一つにできます」


 俺は用意された赤いリボンの前に立ち、ハサミを受け取った。隣にはシルヴィア、リリス、セリアが並び、誇らしげに俺を見つめている。

 前世で使い捨ての社畜だった俺が、今世で出会えた、何よりも大切な宝《従業員》たちだ。


「それでは……『メガ・Dマート』、本日オープンです!」


 チョキン、とリボンが切られた瞬間。

 人間と魔族の数万の群衆から、割れんばかりの大歓声が巻き起こった。


「「「うおおおおお!! 弁当だぁぁ!!」」」

「「「ポーションの特売だぁぁ!!」」」

 雪崩のように押し寄せるお客様たち。


 俺――相田カズヤの「ホワイト企業による世界征服」は、こうして完結した。

 これからは、この世界中の全ての人と魔族に、最高のサービスと笑顔を提供していく戦いが始まるのだ。


「さあ皆さん、持ち場へ! 今日も一日、お客様に最高のおもてなしを!」


「「「はいっ、オーナー!!」」」


いらっしゃいませ!

 その元気な声は、平和になった青空の下へ、いつまでも明るく響き渡っていた。

◆◆◆


 話作るのが難しくなってしまい、打ち切り終了みたいな流れですいません。

 実体験を元にネタ作っていこうと思ったのですが、なかなかうまく行かないものですね。


 まぁ、コンビニの店員さんは大変です。オーナーも労力の割に儲かりません。高圧的に従業員にあたるお客さんは多くいますが、同じ人間なので優しく接してあげてください。

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