表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第二章 ホワイト企業への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/27

22:イケナイ飲み物

 魔王軍の財務を司る四天王・ヴォルグの直轄店舗となってから、Dマート本店はさらに業績を伸ばしていた。


 特に、魔王軍の兵士たちにとって、当店の「ホットスナック」と「雑誌」は、過酷な勤務の数少ないオアシスとなっていた。


 イートインスペースでは、非番のオークやスケルトンたちが、チキンをかじりながら談笑している。


 平和な光景だ。

 だが、その平和を打ち破る、凄まじい「闘気」が店の外から近づいてきた。


 ドゴォォォォンッ!!


 店の自動ドアが、両開きごと吹き飛ばされた。自動ドアの強化を検討しよう。


「……たるんどる!! 貴様ら、こんな所で油を売って何をしている!!」

 土煙の中から現れたのは、身の丈3メートルを超える巨漢。

 全身から灼熱の炎を立ち上らせた、ドラゴニュートの戦士だ。


「げぇっ!? し、四天王のイグニス将軍!?」

 チキンを食べていたオークたちが、慌てて直立不動の姿勢をとる。

 魔王軍四天王が一角、『烈火のイグニス』。

 軍の実戦・訓練を統括する、超・武闘派の最高幹部だ。


「貴様ら! 最近、訓練場に顔を出さんと思えば、こんな得体の知れない店で『からあげ』などという脂の塊を食らっていただと!?

 しかもなんだそのふやけた顔は! 魔王軍の牙が聞いて呆れるわ!」

 イグニス将軍が咆哮すると、店内の気温が急激に跳ね上がった。


「ヴォルグの奴が『利益が出る』と持ち上げていたから黙認していたが……限界だ!

 こんな軟弱な店があるから、我が軍の精鋭が堕落するのだ! 今日という今日は、店ごと灰塵に帰してくれる!」

 イグニスが巨大な拳を振り上げる。


 その瞬間、シルヴィアが音もなく前に出た。

「……カズヤ店長。やりますか?」

「いえ、待ってくださいシルヴィアさん」

 俺は彼女を制し、怒り狂う将軍の前に歩み出た。


 クレーム対応の基本は、相手の不満を見極めること、そして話を聞いてあげることだ。話の通じない相手には、速やかに退場していただいているのだが……


「いらっしゃいませ、イグニス将軍。店長のカズヤです、お初にお目にかかります。

 …………

 ……

 なるほど。兵士たちの『栄養管理』と『士気の低下』を危惧されているのですね」


「ふん! 当たり前だ! 魔王軍の強さは日々の鍛錬とストイックな精神から生まれる!

 貴様の店の飯は確かに美味いが、それはただの『甘やかし』だ!」


 将軍の言うことは、軍のトップとして極めて正しい。

 ジャンクフードばかり食べていれば、体脂肪は増え、スタミナは落ちる。


「おっしゃる通りです。確かに、揚げ物ばかりでは戦士の体は作れません」

「分かっているなら、さっさと店を畳め!」

「ですが将軍。兵士たちに『マズい保存食』だけを食わせて、最高のパフォーマンスが出るとお思いですか?」

 俺はニヤリと笑った。


「戦士に必要なのは『質の高いタンパク質』と『一瞬の起爆剤』。

 ……当店には、『武闘派専用のメニュー』もございますよ」

 俺はセリアに目配せをし、バックヤードから「新商品」を持ってこさせた。


「将軍。これを試食してみてください」

 俺がカウンターに出したのは、二つの商品。


 一つ目は、どんぶり飯の上に、極厚の赤身肉と温玉、大量のブロッコリーが乗った弁当。


 二つ目は、毒々しい緑色に発光する、謎の缶飲料だ。


「なんだ、これは?」

「名付けて、『マッスル・プロテイン弁当』と、『ダンジョン・エナジードリンク』です」

 俺は商品の解説を始めた。


「この弁当は、高タンパク・低脂質。さらにセリアの浄化魔法で余分な毒素を完全に抜き、吸収効率を極限まで高めた『筋肉のための食事』です。

 そしてこちらのドリンクは、中級ポーションをベースに、カフェインとマンドラゴラの根を限界まで濃縮した『気付け薬』です」

 前世の社畜時代、俺が徹夜のプレゼン前にキメていたエナドリのファンタジー再現版だ。


「……こんなもので、戦士の体が作れるだと? ふん、小賢しい」

 イグニス将軍は半信半疑ながらも、弁当の赤身肉を口に放り込み、エナジードリンクを一気に飲み干した。


 ゴキュッ、ゴキュッ……プハァッ!!


 その瞬間。

 ドバァァァァァァッッ!!!


 イグニス将軍の全身から、先程とは比較にならないほどの凄まじい闘気が、火柱となって立ち上った。

 筋肉がパンプアップし、血管がドクドクと脈打つ。


「な、なんだこれはァァァッ!?

 内側から力が……無限の魔力が湧き上がってくるぞ!!

 それにこの肉! 噛むほどにアミノ酸が筋肉の隅々まで染み渡るのが分かる!!」


「ええ。疲労回復、集中力強化、筋力バフ付与。

 これを摂取してから訓練を行えば、効率は普段の3倍に跳ね上がりますよ」

「……」

 イグニス将軍は、震える手で空になったエナドリの缶を見つめた。


「カズヤ店長、と言ったな」

「はい」

「これは、量産できるのか?」

「当然です。……まとめ買いをしていただけるなら、魔王軍の全兵士に、毎日日替わりで提供するご用意があります」

 イグニス将軍の目が、完全に「商談の目」に変わった。

 彼もまた、軍を強くするためなら手段を選ばない合理主義者なのだ。


「……ヴォルグの奴が、貴様を高く評価する理由が分かった。

 貴様はただの商人ではない。軍の兵站を根底から覆す化け物だ」


 将軍は懐から、魔王軍の軍令部印が押された羊皮紙を取り出した。


「今日から貴様の店を、我が軍の専属食堂、指定強化施設に認定する。

 兵士たちの食事と補給は、全て貴様に一任しよう。……経費はヴォルグにツケておけ!」


「毎度ありがとうございます。大口契約、確かに承りました」

 こうして、Dマートは「財務」だけでなく「軍務」のトップをも掌握した。


 俺の『魔王城買収計画』は、もはや単なる夢物語ではなく、現実のスケジュール帳に書き込まれようとしていた。


 ちなみにその後、エナジードリンクに依存しすぎた兵士たちが「アレがないと戦えねえ!」とカフェイン中毒になりかけたが、それはまた別の話である。


◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日投稿予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ