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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第二章 ホワイト企業への道

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21/27

21:優しさと甘さを勘違いした者には容赦しません。

 2号店が軌道に乗り、リリス一人では店が回らなくなったため、俺――相田カズヤは数名の「新人アルバイト」を現地採用した。


 時給は相場の倍。まかない付き。完全シフト制。

 ダンジョンという過酷な環境において、Dマートの待遇は破格中の破格だ。

 だが、その「ホワイトすぎる待遇」を、致命的に勘違いする輩が現れた。


「……カズヤ店長。ごめんなさい、私の指導不足ですぅ……」

 ある日の閉店後。

 2号店店長のリリスが、涙目でPOSレジのジャーナル(売上記録)を持ってきた。


「顔を上げてください、リリス店長。何があったんです?」

「現金と売上データが、金貨5枚分(約50万円)合いません。それに、在庫のポーションや高級弁当も数が足りなくて……」


「内引き(従業員による窃盗)と、レジ金の着服ですね」

 俺は眉間を揉んだ。

 前世のコンビニ時代にもあった。レジの「取り消しキー」を悪用して金を抜き取ったり、廃棄前の商品を勝手に食ったりするバカが。


「カズヤ店長。実はそれだけじゃないんです」

 本店から応援に来ていたシルヴィアが、魔力で映像を映し出す「水晶玉」を持ってきた。


 最近、中級冒険者たちの間で流行っている『魔法掲示板』の映像だ。


『うぇーい! Dマートのバイト、時給高すぎだし本店の店長来ないから楽勝~!』

『見てみろよコレ! 売り物のポーション一気飲み!』

『フライヤーの油にスライムぶち込んでみたwww』


 映像の中でゲラゲラ笑っているのは、数日前に採用した中級冒険者崩れの三人組だった。

「……いわゆる『バイトテロ』ですね」

 俺の声は、自分でも驚くほど冷たくなっていた。


「ひぃっ……!」

 その声の温度差に、リリスがビクッと肩を震わせる。

 従業員は宝だ。俺は彼らを守るためなら体を張る。

 だが、それは「店と仲間に誠実であること」が大前提だ。


 店の信用を失墜させ、一生懸命店を切り盛りしているリリスに泥を塗る行為は、万死に値する。


「シルヴィア、彼らの明日のシフトは?」

「明日の昼からです。三人揃って入っています」

「……好都合です。特別研修を行いましょう」


◇◇◇


 翌日。

「ちーっす。おはようございまーす」

 三人組が、ヘラヘラと笑いながらバックヤードに入ってきた。

 だが、そこには腕を組んだシルヴィアと、静かにPOSデータを睨む俺が待ち構えていた。


「お、本店の店長さんじゃん。視察っすか?」

「ええ。貴方たちに確認したいことがありましてね」

 俺は机の上に、POSデータの束と、水晶玉を叩きつけた。


「レジ金の窃盗、在庫の内引き、並びに店舗設備への悪質なイタズラ。

 ……言い逃れはさせませんよ。このPOSシステムは、誰が、いつ、レジを操作したか、1秒単位で全て記録していますから」

 三人の顔から、スッと血の気が引いた。


「な……な、なんのことっすか! 証拠なんて……!」

「証拠なら、貴方たち自身が魔法掲示板にアップロードしているでしょう」

「げっ!?」

 リーダー格の男が舌打ちをした。


「……チッ。バレたんじゃしょうがねえ。

 でもよ、たかがポーション数本と、はした金だろ? こんだけ儲かってんだから、ケチケチすんなよ!」

「そうそう! ホワイト企業なんだろ? バイトのちょっとしたミスくらい、大目に見ろよ!」


 悪びれるどころか、逆ギレしてきた。

 本当に、人間のクズというのはどこの世界でも同じだ。


「……ホワイト企業という言葉を、随分と履き違えているようですね」

 俺は冷たい目で彼らを見下ろした。

「ホワイト企業が従業員に優しいのは、真面目に働く優秀な人材を守るためです。

 貴方たちのような、社会に寄生するダニを甘やかすためではない。むしろ、ダニには即座に法的措置を取るのが、真のホワイト経営ですよ」

「はっ! 法的措置だぁ? 俺たち冒険者にそんなモンが通用するかよ!」

 男たちが剣を抜こうとした。


 だが。

 ギリィッ……!


 背後に立っていたシルヴィアから、ドス黒い殺気が放たれた。

 空気が重力を持ったように沈み込み、三人組は剣を抜くどころか、膝から崩れ落ちて息絶え絶えになっている。


「……カズヤ店長の慈悲に感謝することですね。私なら、四肢をもいでモンスターの餌にしているところです」

 シルヴィアが冷ややかに見下ろす。


「ひぃっ……! す、すいませんでしたぁ! もう辞めます! バイト辞めますから!」

「辞める? ……ふざけないでください」

 俺は一通の書類を彼らの前に突きつけた。


「貴方たちの行為で、フライヤーの油は全交換。被害額は盗まれた現金と商品で金貨30枚。さらに店の信用を落とした損害賠償として、金貨100枚を請求します」

「き、金貨130枚!? そんな大金、払えるわけねえだろ!」

「安心してください。ちゃんと働き口』は用意してありますから」

 俺はニヤリと笑った。


「下請けの『黒鉄組合』が、今、ミスリル鉱山の採掘スタッフを急募していましてね。

 マグマが噴き出す危険な鉱山ですが、彼らなら貴方たちを、逃げられないように徹底的に鍛え上げてくれるでしょう」


「な、なんだと……!? あのヤクザドワーフどもの所に!?」

「借金を全額返済するまで、せいぜい頑張ってください。

 ……連れて行け」

 店の裏口から、屈強なドワーフたちが雪崩れ込んできた。


「へっへっへ……。ウチのボスの店に手ェ出すとはいい度胸じゃねえか。たっぷりしぼってやるよ」

「や、やめろーっ! 助けてくれーっ!!」

 泣き叫ぶ三人組は、ドワーフたちに引きずられて鉱山へと消えていった。


◇◇◇


「……ふぅ。お騒がせしましたね、リリス店長」

「カズヤ店長……ごめんなさい。私がちゃんと見ていなかったから……」

 リリスが申し訳なさそうに耳を伏せる。


「リリス店長のせいじゃありませんよ。あんな連中を採用した俺のミスです。

 今後は採用面接の際に、セリアさんに『邪心がないか』の適性検査をしてもらうことにしましょう」

「はいっ! 任せてください、カズヤ店長!」

 本店から応援に来ていたセリアが、誇らしげに胸を張った。


 真面目に働く従業員には、最高の待遇を。

 店を舐める不届き者には、一切の容赦をしない鉄槌を。


 Dマートは、今日も活気に満ちて、ダンジョンの冒険者たちを迎え入れるのだった。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日投稿予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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