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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第二章 ホワイト企業への道

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17/27

17:黒鉄組合の妨害

 500階層に出店した『Dマート2号店』は、連日大盛況だった。

 元・落ちこぼれサキュバスのリリス店長による「健全な接客」と、圧倒的な価格競争力。

 中級冒険者たちは、もうボッタクリの闇市には見向きもしない。


「店長、すごいですぅ! 本日の売上、目標の200%達成ですぅ❤」

 リリスが尻尾をブンブン振って報告してくる。

「いい調子だ。本店ほどの客単価ではないが、回転率が段違いだ。これなら――」


 ドゴォーーン!!


 その時、店の入り口でゴミ箱が蹴り飛ばされる音が響いた。

 行列を作っていた冒険者たちが、怯えたように左右に開く。


「おいおいおい……。随分と派手にやってくれるじゃねえか」

 現れたのは、身の丈ほどのハンマーを担いだ、厳つい男たち。

 全身に刺青を入れた、ドワーフの集団だ。


「ここは俺たち『黒鉄くろがね組合』のシマだぞ?

 挨拶もなしに安売りしやがって……商売の仁義ってモンを知らねえのか、あぁ?」

 中層の闇市を牛耳るマフィアだ。


 彼らは鍛冶師としての腕を悪用し、粗悪な武器を高値で売りつけたり、修理代をふっかけたりして暴利を貪っている。


 リリスが「ひぃっ!」と怯えてカウンターの下に隠れる。

 俺はため息をつきながら前に出た。


「……いらっしゃいませ。当店は全てのお客様を歓迎しますが、営業妨害なら憲兵を呼びますが?」


「ケッ! 憲兵なんぞに賄賂は回してあんだよ!

 おい、この店をブっ壊して、在庫を全部奪え! 商売したけりゃ売上の5割をよこしな!」


 ドワーフたちが、殺気立って店になだれ込んできた。

 暴力による解決か。野蛮なことだ。

 俺は隣に控えるシルヴィアに目配せをした。

 彼女はエプロンの紐をキュッと締め直すと、静かに前に出た。


「……お客様。店内ではお静かにお願いします」

「あぁ? なんだこの姉ちゃ――」


 ドゴォォン!!

 誰も動きを見切れなかった。

 先頭にいたリーダー格のドワーフが、一瞬で店の外まで弾き飛ばされていた。


 シルヴィアの手には、武器ですらない、先ほどまで調理に使っていた中華鍋が握られている。


「なッ……!? アニキが一撃で!?」

「ひ、怯むな! やっちまえ!」

 数人のドワーフがハンマーを振り上げるが、シルヴィアは最小限の動きで躱し、鍋の底で的確に急所を叩いていく。


 カーン! ゴン! バコーン!

 

 軽快な金属音が響き、数秒後にはドワーフの山が築かれていた。

 S級冒険者相手に、街のチンピラが勝てる道理はない。


「……く、くそっ! 覚えてろよ!」

 ドワーフたちは捨て台詞を吐いて逃げ出した。


◇◇◇


 だが、彼らの嫌がらせはこれで終わらなかった。

 翌日から、客足がピタリと止まったのだ。


「……店長、大変ですぅ。これを見てください」

 リリスが泣きそうな顔で一枚のチラシを持ってきた。


【警告:Dマートの商品を持っている冒険者の装備は、今後一切修理しない】

――黒鉄組合――


「……なるほど。鍛冶師の独占権を使ったボイコットですか」

 中層において、武器の破損は死に直結する。

 修理を拒否されると知れば、冒険者たちは怖くてうちの店を使えない。

 物理で勝てないなら経済で締める。なかなかいやらしい手だ。


「どうしますか、店長? こっちも修理サービスを始めますか?」

 シルヴィアが問うが、俺は首を振った。

「いえ、技術者の養成には時間がかかります。ここは、相手と同じ土俵で戦いましょう」

 俺はニヤリと笑った。

「彼らの『喉元』を締めます」


◇◇◇


 数日後。

 500階層のドワーフたちの工房地区で、異変が起きていた。


「おい! 酒だ! 酒を持ってこい!」

「す、すみません親方! どこにも売ってないんです!」

 ドワーフにとって、酒はガソリンだ。酒がなければハンマーも振れない。

 だが今、中層の酒場から全ての酒が消え失せていた。


「な、なんだと!? 闇市にもないのか!?」

「はい! 何者かが、市場に出回る酒を全て買い占めてしまったそうで……!」


 さらに、悲劇は続く。


「親方! 『燃料』と『研磨剤』が入荷しません!」

「なんだと!? それがないと炉が動かせねえぞ!」

 ドワーフたちがパニックに陥る中、広場のモニターに俺の姿が映し出された。


『中層のドワーフの皆様、こんにちは。Dマート店長です』

 俺は画面の中で、極上の火酒かしゅ「ドワーフ殺し」と、最高品質の「精製済み燃料」を積み上げて見せた。


『現在、当店ではこれらのお酒と資材を独占販売しております。

 ……ですが、残念ながら「黒鉄組合」の関係者様には販売をお断りしております』


「「「な、なんだとぉぉぉ!?」」」


『欲しいですか? ならば、私の店に来てください。

 ただし……分かっていますよね?』


 俺が物流を握っているのは500階層だけではない。

 本店の999階層(希少資源の宝庫)や、地上とのパイプもある。

 彼らが必要とする物資を根こそぎ押さえ、兵糧攻めにするなど造作もないことだ。


◇◇◇


 1時間後。

 Dマートの前には、土下座をするドワーフたちの列ができていた。


「すびませんでじだぁぁぁ!」

「酒ぇ! 酒をくれぇぇ! 手が震えて仕事にならねえ!」

「燃料がないと商売上がったりだぁ!」


 リーダーの男が、涙と鼻水を流して懇願してくる。

 俺は冷ややかに見下ろした。


「取引再開の条件は一つです」

 俺は一通の契約書を差し出した。


「黒鉄組合は解散。今後はDマートの『修理部門(下請け)』として働いてもらいます。

 修理価格はこちらが設定した適正価格。不正や手抜きは一切禁止。

 ……その代わり、酒と資材は安定供給してあげますよ」


「や、やります! やらせてください! 雇ってください!」

 彼らは即座にサインした。

 プライドよりも、目の前の酒が勝ったようだ。


「交渉成立ですね」

 こうして、Dマート2号店には、新たに「格安・即日修理サービス」が加わった。

 食料、ポーション、そして装備のメンテナンス。

 中層における冒険者のライフラインは、完全に俺の手の中に落ちた。


「……店長、やっぱり怒らせると一番怖いのは貴方ですね」

 シルヴィアが、酒に群がるドワーフたちを見て苦笑いする。


「何を言ってるんですか、シルヴィアさんという最強の用心棒が居るからこそ、私は安心して商売に専念できるのです。

 それに彼らとはWin-Winの関係です。

 今までは、粗悪な火酒で体を壊していたドワーフも多かったらしいのです。でも私たちの提供する火酒は、魔王軍のお墨付きです。安心して酒が飲めると喜んでいましたよ。

 それに彼らも安定した仕事が得られて幸せそうです。」


 ドワーフたちと冒険者たちが、店の前で、笑顔で交流している。元の世界では、店頭にたむろする若者たちには、迷惑していたものだが、今は微笑ましく感じている。

 俺の心に余裕が生まれたからなのだろうか?


「て、店長!レジのヘルプお願いします!!」

「はーい、今行く!」


 順風満帆に見えたDマートだったが、ついに『打倒 魔王』を掲げる王国の聖教会が動き始めていたのだった。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日投稿予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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