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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第二章 ホワイト企業への道

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16/27

16:二号店

 魔王軍四天王・ヴォルグの直轄店舗となり、本部の制約から解き放たれた俺は、次なる一手に打って出た。


 多店舗展開だ。


「店長、次は500階層に出すんですか? ここからだとかなり遠いですよ」

 シルヴィアが、ダンジョンの断面図を見ながら尋ねる。


「ええ。999階のここは、客単価は高いですが客数が限られています。

 ですが500階は、初級を卒業した中級冒険者が最も長く滞在する『魔の中層』。ここで物資を独占できれば、利益の桁が変わります」

 500階は、ダンジョン攻略の大きな壁だ。


 ここを拠点にする冒険者は数千人。彼らは常に、安くて腹持ちの良い飯と、惜しみなく使える低価格なポーションを求めている。


◇◇◇


 俺とシルヴィアは、転移魔法で視察のために500階のセーフティゾーンへと向かった。

 そこは、熱気と活気に満ちていたが……同時に、酷い惨状でもあった。


「さあ買った買った! ポーション、今なら金貨1枚だ!」

 試しに買ってみたが、ひどい濁りと、臭いのする粗悪品だった。逆に体調を崩しそうだ。


「サービス品の干し肉! 安いよ安いよ!」

 腐りかけていて、カビや変色がみられる廃棄品だ。


 悪質なゴブリンの行商人や、武装したドワーフの闇市が、粗悪品を法外な値段で売りつけている。

 中級冒険者たちは、悔しげに顔を歪めながらも、生き残るためにそのボッタクリ品を買わざるを得ない状況だった。


「……酷いですね、店長。私たちの商品を知ったら、みんな泣いて喜ぶでしょうね」

「ええ。ですが、問題はスタッフです。俺は999階を離れられません。信頼できて、なおかつ中層の荒くれ者たちを捌ける人材が必要です」


 俺が周囲を見渡すと、路地裏のゴミ捨て場でうずくまっている一人の女がいた。

 薄汚れた翼と、力なく垂れ下がった尻尾。サキュバスだ。


「……あうぅ、お腹すいた……。誰か、誘惑に乗ってよぉ……」

 彼女は冒険者を誘惑して精気を吸うはずの魔物だが、あまりにガリガリに痩せ細っている。


「どうしたんですか、こんなところで」

「……え? あ、貴方、人間? ……お願い、私の誘惑に乗って……。今ならサービスで、耳元で愛の囁きを……。だから、パンを一口、ちょうだい……」

 誘惑というより、もはや物乞いだ。


「彼女、『落ちこぼれのサキュバス』ですね」

 シルヴィアが分析する。


「最近の冒険者は効率重視ですから。サキュバスの誘惑にかかってタイムロスするより、ポーション飲んで先に進む奴ばかりなんです。彼女たち、今や絶滅危惧種ですよ」


 俺は、彼女の中に最高の接客業の素質を見た。

 人の心を読み、好感度を稼ぐ。それはサキュバスの本能だ。それを「誘惑」ではなく「おもてなし」に転用したらどうなるか。


「君、名前は?」

「……リリス、です……」


「リリスさん。パンをあげる代わりに、うちの店で働きませんか?

 精気を吸うのは禁止ですが、『お客様に笑顔を振りまいて、リピーターを作る』のが仕事です。たまに現物支給もありますよ!」


「……え!? 本当!? パン、食べ放題!?」

 リリスの瞳に、パッと光が宿った。

「食べ放題とは言ってないが……」


◇◇◇


 一ヶ月に及ぶ熾烈を極めた研修の後……

 ついに500階の広場に、突如として白い清潔な建物が出現した。


 『Dマート・500階層店 本日開店!!』

 本店と支店をつなぐ転移魔法陣を設置しているので、本店のスケルトンを助っ人して支店へ派遣することもできる。


 開店と同時に、俺は目玉商品を店頭に並べた。

「おにぎり、全品銅貨1枚! 揚げたてチキンもあります! ポーションは定価で販売中!」

 周囲のボッタクリ商人が「営業妨害だ!」と怒鳴り込んでくるが、店長候補のリリスが一歩前に出る。


 彼女は、店長に支給された清潔な制服をバシッと着こなし、極上の営業スマイルを浮かべた。


「いらっしゃいませぇ❤ 本日は500階層店のオープン記念ですぅ。

 粗悪品を買うより、うちの『100円おにぎり』の方が、絶対に元気が出ますよぉ?」


「「「うおおおおお! 買う! 全部買うぞぉぉ!」」」


 中級冒険者たちが、リリスの魅力と圧倒的な安さに釣られ、雪崩のように店に押し寄せる。


 ゴブリン行商人たちは、その勢いに押されて文字通り蹴散らされていった。

「……すごい勢いですね。客数は本店の比じゃない」

 来客を知らせるチャイムが鳴り止まない。その光景を見て、俺は手応えを感じた。


 500階層を通る全冒険者が、俺の店の飯を食べ、俺の店のポーションを飲む。

 一歩ずつ冒険者たちへ、Dマートの商品の安全性と味を周知していく。それが、俺の店のブランド価値の向上へと繋がるのだ。


 まだ魔王城の買収への道は始まったばかりだ……

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日投稿予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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