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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第一章 悪徳店長

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14/27

14:俺の経営は間違っていた件 後編

 俺が客から貰った品々を眺めて、物思いに耽っていると……


 ドガァァン!!


 その時、店のドアが乱暴に蹴破られた。

 静寂が破られる。


「おい店長ォ!! いるのは分かってんだぞ!」


 入ってきたのは、SVスーパーバイザーのアークデーモンだ。

 酒臭い息を吐きながら、彼はカウンターにある勇者からの「押し花」を汚れた足で踏みにじった。


「なんだこのゴミは。掃除しとけよ、無能が」


 ――プツン。

 俺の中で、何かが切れる音がした。

 隣にいたシルヴィアの空気が、一瞬で変わる。

 普段の「おっとりバイト」の気配が消え、冷たく鋭い殺気が店内に満ちた。彼女の手が、腰のエプロンの下にある短剣に伸びる。


 俺は手で彼女を制した。


「……シルヴィアさん。手は汚さなくていい。掃除なら、彼自身にやらせますから」


「あぁ? 何を寝言言ってやがる」

 SVが嘲笑う。


「今日のチョコ、完売したそうだな!

 さっさと『上納金』として全額よこせ! 今月は特別強化月間だ!」


 SVがカウンターの金貨の山を鷲掴みにしようとした瞬間。

 俺は、その太い腕の上に『業務委託契約書』を叩きつけた。


「SV。契約書、第3条第2項をご確認ください。

 『店舗における1日の売上ノルマ(日販)は、金貨100枚とする』」


「……それがどうした!」

 俺はSVの目を真っ直ぐに見据えた。


「同契約書、第5条。

 『日販ノルマを超過した売上については、その8割を店舗側の裁量利益とし、本部はこれを徴収しない』。


 ……つまり、ここにある金貨の大半は、私の店のものです。貴方に没収される筋合いはない」

「はっ! 紙切れがなんだ! ここは魔界だぞ? 力が全てだ!」

 SVが逆上し、拳を振り上げる。


「俺が『よこせ』と言ったらよこすんだよ! 生意気な口をきくと、この店ごと潰して――」

「――潰せば、困るのは貴方ですよね?」

 俺はストアコンピューターの画面を見せた。


「貴方、『中抜き』してますよね?」

「……あ?」

 SVの動きが止まった。


「おかしいと思ったんです。

 貴方は毎日のように『売上が足りない』『追加徴収だ』と言って、私の店から金を持っていきました。

 ですが、本部のデータベースには、『毎日、ノルマギリギリの金貨100枚達成』としか報告されていない」

 俺は冷徹に告げた。


「差額の数百枚。毎日毎日、貴方はそれを懐に入れ、私服を肥やしている。

 ……これ、横領ですよね?」


「き、貴様……何を言いがかりを……!」

 SVの顔色が、青から土気色に変わっていく。


「このPOSシステムは優秀でしてね。数値の矛盾を一瞬で弾き出してくれました。

 さて、このボタン一つで『魔王様直通ホットライン』に証拠データを送信できるんですが……押しましょうか?」


「ま、待て!!」

 SVが叫んだ。


「や、やめろ! そんなことをすれば、お前だってただじゃ済まないぞ! 俺のバックには四天王が……!」

 SVが魔力を練り上げ、俺に掴みかかろうとした、その時。


 ヒュンッ!


 見えない斬撃が走り、SVのネクタイが切り飛ばされた。


「……ッ!?」

 SVが硬直する。


 いつの間にか、シルヴィアが俺の前に立ち、その手には剣が握られていた。

 構えすらない、自然体の立ち姿。だが、その切っ先は正確にSVの喉元を捉えている。


「動かないでくださいね」

 シルヴィアは、ニコリと微笑んだ。

 だがその瞳は、獲物を見定める「強者の銀眼」だ。


「うちの店長に指一本でも触れたら……この店の『在庫ミンチ』にしますよ?」

「ひ、ひぃ……!」

 アークデーモンであるSVが、本能的な恐怖で後ずさった。


 こいつは、ただのバイトじゃない。

 店の商品を食いまくる食いしん坊でもない。

 S級冒険者なのだ、格が違う。


「……というわけです、SV。

 これまでの不当な追加徴収分と、この花を踏みにじった慰謝料。相殺でいいですね?」

「わ、わかった! 悪かったよ!」

 SVは転がるように店から逃げ出した。


 蹴破られたドアが、寒々しい風を運んでくる。

「……ふぅ。ありがとうございます、シルヴィアさん。助かりました」

「いえ。私も、あのお花を汚されたのは許せませんでしたから」

 彼女は剣をエプロンの下にしまい、いつものおっとりした笑顔に戻った。


 俺は床に落ちた、勇者からの押し花を丁寧に拾い上げた。花弁は少し折れてしまったが、まだ光を放っている。


「シルヴィアさん。明日から方針転換です」

「えっ? 更に値上げするんですか?」

「まさか。あなたは私の事をなんだと思ってるんですか……」

 俺はニヤリと笑った。


「ボッタクリはやめますが、適正な利益は頂きます。

 サービスに見合った対価を貰い、従業員に還元し、店を守る。

 ……それが、俺のやりたい『ホワイト経営』ですから」

 俺は誓った。


 本部に搾取されるだけの社畜は、今日で卒業だ。

 これからは、俺がこのダンジョンの経済を支配してやる!

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日投稿予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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