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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第一章 悪徳店長

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13/27

13:俺の経営は間違っていた件 前編

 2月14日。

 この日は、製菓業界が仕掛けた「愛と欲望」の収穫祭だ。


 その収穫祭を、異世界でも行う。前回の恵方巻同様に、ブームを作り出すのだ。

「店長、値付けはどうしますか?」

 シルヴィアが、可愛らしくラッピングされたチョコを指差す。

 中身は、ダンジョンの薬草を練り込んだだけの、原価数十円のチョコだ。


「そうですね……金貨3枚(30万円)でいきましょう」

「高っ!? さすがにボッタクリすぎじゃ……」

「いいんです。私が売りつけますから。

 それに、回復効果があると言えば、冒険者は背に腹は代えられません」

 俺は冷徹に言い放った。


 ここは魔王軍の最前線基地。客はカモ。俺は搾取する側の人間だ。

 かつて、日本のブラック企業で搾取され続けた俺は、この世界では奪う側に回ると誓ったのだ。


◇◇◇


 開店と同時に、客たちがやってきた。


 ピンポーン…ピンポーン♪


 店頭に張ってあるバレンタインのポスターをジッと見つめる『暁の獅子団』のリーダー。

「よう、店長。このチョコくれよ」

「いらっしゃいませ。そちら限定品ですので、金貨3枚になります」

「うっ……高ぇな。まあいいや、俺たちの命綱だしな。3つくれ」

 彼は苦笑いしながらも、文句を言わずに金を払った。

 そして、チョコを受け取ると、懐から何かを取り出した。


「あと、これやるよ」

「え?」

 渡されたのは、無骨な革袋に入った「砥石」だった。


「いつも遅くまで店開けてくれてありがとな。これ、俺が愛用してる手入れ道具なんだけどよ、包丁研ぐのに使ってくれ。

 店長の作るカツカレー、美味いからさ」


「あ……ありがとう、ございます……」

 予想外の感謝に、俺は少し戸惑った。

 彼らにとって俺は、ライフラインを握る「悪徳商人」のはずだ。なのに、なぜ?


 次に現れたのは、勇者レオンだ。

 彼はいつものように、くじを引きまくり、ハズレくじの山を作った後、レジに留まった。


「店長。これ」

 彼がカウンターに置いたのは、ダンジョンの深層にしか咲かない「月光草」の押し花だった。


 換金価値はないが、淡く光る美しい花だ。


「……勇者様、これは?」

「バレンタインだろ? 男から渡すのも変だが……いつも僕の愚痴を聞いてくれる礼だ。

 この店に来ると、少しだけ『勇者』じゃなくて『ただのレオン』に戻れる気がするんだ」

 勇者は照れくさそうに鼻をかいた。


「まあ、ボッタクリ価格にはムカつくけどな!

 でも、それに見合う価値はあるよ、この店には」

 ――価値はある。

 その言葉が、俺の胸にチクリと刺さった。


 最後に、冥界の女帝・アナスタシアがやってきた。


「フン、貴様のような守銭奴に恵んでやるつもりはないが……部下たちがうるさくてな」

 彼女は、スケルトンたちが作ったという、骨を削り出した「ボールペン」を投げ渡してきた。


「『我らの新しい職場を作ってくれた感謝です。レジ係とても楽しい』

だとさ。

 ……お前だけずるい……

 大事に使ってやれよ!」


◇◇◇


 閉店後。

 俺はカウンターに並んだ「砥石」「押し花」「骨のペン」を見つめていた。


 その横には、俺が売りつけた「原価数十円・売価30万円のチョコ」の売上金がある。


「……あいつら、お人好しすぎるでしょう」

 俺は独り言ちた。


 俺は彼らを「カモ」としか見ていなかった。

 必要以上に高い値をつけ、射幸心を煽り、依存させ、骨の髄までしゃぶり尽くすつもりだった。


 だが、彼らは俺を「店長」として信頼し、感謝してくれている。

 この店を「オアシス」だと言ってくれた。


「……これじゃあ、まるで」

 脳裏に浮かんだのは、前世の記憶。

 おにぎりセールだからと普段の3倍以上の発注をさせ、大量の廃棄を生み出すSV。

 急な欠員で、長時間働いているのに、打ち合わせだと言って、更に労働時間を増やすSV。

 そして異世界に転移させられ、今に至る……。

 利益のためなら、部下の心も顧客の信頼も踏みにじる、あの本部の連中。

 今の俺は、あいつらと同じ顔をしていないか?

 お前がやりたかったのはそんな店なのか?!


 俺は、やっと過ちに気がついた。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日投稿予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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