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ダンジョン最深部にコンビニが? ~金払いのいいA級パーティを「太客」に囲い込み、その売上でブラックな魔王軍を買収して、俺が新しい魔王になります~  作者: たくみ
第一章 悪徳店長

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10/27

10:罠にはまった勇者

 Dマネー導入から数日……


 『暁の獅子団』をはじめとする常連客たちは、チャージしたポイントで優雅に買い物を楽しんでいる。

 だが、店長の俺には新たな悩みがあった。


 それは、シルヴィアがダンジョン探索で拾ってくる「ガラクタ」の処分だ。

「店長、これ拾いましたー。なんか光ってて綺麗だったので」

「……ああ、またですか」

 シルヴィアが持ち帰ったのは、泥だらけの剣と鞘。


 【POSタブレット】で鑑定すると、驚きの結果が出た。


> 品名:聖剣エクスカリバー(真作)&鞘アヴァロン

> 状態: 長年の放置により、魔力が劣化中。

> 評価: Bランク(中古美品)

>


 本物だ。だが、伝説にあるような「一振りで山を切り裂く」ほどの力は失われているようだ。

 売るにしても、こんな国宝級のものを店頭に並べたら、魔王軍から「なんで人間側の武器を売ってるんだ」と詰められる。

 かといって捨てれば、誰かに拾われて脅威になるリスクがある。


「……よし、在庫処分だ」


 俺は、レジ横に設置した『ダンジョン・ドリームくじ(1回・金貨5枚)』の中に、この聖剣をA賞としてぶち込むことにした。


◇◇◇


 バウ・ワウ・ワンッ!

 魔王軍カードに金貨をチャージする事で使えるDマネー。決済音は、当店番犬ケルベロスをモチーフにしたものだ。


「うめぇ! やっぱダンジョンの下で食う『特盛カツカレー』は最高だな!」

「Dマネーだと会計が一瞬で楽ね。ポイントも貯まるし」

 イートインスペースでは、常連の『暁の獅子団』の4人が、戦闘の合間の休憩を取っていた。

 彼らはすっかりこの店に順応している。


 ピンポーン……ピンポーン♪


 自動ドアが開き、一人の青年が入店してきた。

 黄金の鎧。輝く金髪。整った顔立ち。

 誰もが振り返るほどのオーラを纏っているが、その目は死んだ魚のように濁っている。


「……おい、あれ」

 カツカレーを食べていた戦士が、スプーンを止めて目を見開いた。

「まさか……勇者レオンか? なんでこんな所に……」

 店内の空気がざわつく。

 だが、勇者は周囲の視線など気にも留めず、ふらふらとレジ前まで歩いてきた。


「いらっしゃいませ。旅の方ですね」

「……ああ。水をくれ。あと、少し休憩させてくれ……」

 勇者はカウンターに突っ伏した。

 世界を救う重圧。終わらない戦い。

 初来店の彼からは、限界ギリギリの疲労感が漂っている。


 そんな彼の視線が、ふとレジ横の『くじ』の景品一覧に止まった。


【A賞】 伝説の聖剣エクスカリバー

【B賞】 もふもふケルベロスぬいぐるみ

【C賞】 魔王軍ロゴ入りマグカップ

【D賞】 スライム・ミニタオル

【E賞】 モンスター・ラバーストラップ

【F賞】 クリアファイル(全3種)


「……なんだ、あれは」

「お目が高い。当店特製『ドリームくじ』ですよ。一回、金貨5枚(50万円)です」

「くじ、か……。ん?」


 勇者の目が、一点に釘付けになった。

 A賞の聖剣ではない。

 B賞のぬいぐるみだ。

 ショーケースに飾られているのは、うちの番犬をデフォルメしたぬいぐるみ。

 大きさは子犬ほどだろうか。戦闘の邪魔にならず、かつ、寂しい時に撫でるには十分なサイズ感。

「……可愛い」

 勇者がニヤニヤしながら呟く。


「あのつぶらな瞳……すさんだ僕の心に、唯一の癒やしを与えてくれそうだ。これなら、戦場にも連れて行ける……」


 世界を救う英雄が、ぬいぐるみにガチ恋していた。相当疲れているらしい。


「やる。あの『もふもふ』が出るまで」

「ありがとうございます」

 俺は勇者から金貨を受け取った。


 後ろでは『暁の獅子団』たちが、「勇者がくじ引いてるぞ……」

「しかもぬいぐるみ狙いかよ……」とヒソヒソ話している。


「来い……! 僕の相棒パートナー……!」

 勇者が震える手で、一枚目を引く。

 ペリッ。


『F賞:クリアファイル』

「……いらん。書類整理などしたくない」

 勇者は無造作にクリアファイルをカウンターに置いた。

 

「次だ」

 2枚目。

 ペリッ。

『E賞:ラバーストラップ(ゴブリン柄)』

「……可愛くない。次」

 3枚目。

 4枚目…5枚目…6枚目………


 勇者が気合を入れてめくる。

『F賞:クリアファイル(2枚目)』

「くそっ!

 なんで出ない!これだけ引いてもまだ当たらないのかっ!」

 勇者が叫ぶ。


 俺は冷静に答えた。

「お客様。これが『物欲センサー』というものです。無欲な心で引かねば、ぬいぐるみは来ませんよ」

「……まだだ。金ならある」

 勇者は再び金を払い、数十枚目を引く。

 ペリッ。


『B賞』


「……あ」

 勇者の表情が、パァァァッと輝いた。

「出た……! 出たぞおおおお!」

 世界を救うよりも、嬉しそうな顔で、彼はガッツポーズを決めた。

「おめでとうございます。ケルベロスぬいぐるみです」

 俺はショーケースから、ぬいぐるみを取り出して渡した。


「おお……これだ……!」

 勇者はぬいぐるみを片手で抱き寄せ、その感触を確かめる。

「あったかい……柔らかい……。これさえあれば、僕は一人じゃない……」

 勇者の目から、濁りが消えていく。


 POSのモニターには


『ストレス値:激減』

『幸福度:MAX』の文字。


 彼は満足げにぬいぐるみを小脇に抱え、そそくさと店を出て行こうとした。

 その背中を、俺は呼び止めた。


「お客様ー! まだA賞が残っておりますよー!」

「いらん! 僕の目的は達成された!」

 勇者は振り返りもせず、幸せそうに去っていった。


 残されたのは、A賞(本物の聖剣)が入ったままのくじ箱と、大量のハズレくじ。


「……あーあ。行っちゃった」

 俺はため息をついた。

 在庫処分に失敗した。


 その時。

 カツカレーを食べ終えた『暁の獅子団』のリーダーが、爪楊枝を咥えながらレジに来た。


「よう店長。ごちそうさん」

「ありがとうございます」

「いやー、勇者の旦那も大変だなぁ。あんな人形で喜ぶなんて」

 リーダーは苦笑しながら、ふとくじ箱を覗き込んだ。


「ん? まだA賞残ってんのか?」

「ええ。勇者様が引かなかったので」

「へぇ……。まあ、俺たちは剣より飯だけどな。……話のタネに一回引いてみるか」

 彼は軽い気持ちで、カードを取り出し

、Dマネーで支払う。


 バウ・ワウ・ワンッ!


「残り物には福があるってな。……ほれ」

 彼が無造作に一枚引く。


 ペリッ。

『A賞』

「……ぶっ!?」

 リーダーが吹き出した。

 俺も思わず二度見した。


「お、おめでとうございますー!! 大当たり、『本物の聖剣エクスカリバー』です!」


 カラン、カラン……。


 俺はカウンターの奥から、錆びついた聖剣を取り出した。


「マジかよ!? たった一回で!?」

「無欲の勝利ですね。さあ、どうぞ!」

 俺は聖剣を強引に押し付けた。

 リーダーは困惑顔で剣を受け取る。


「いや、俺、斧使いなんだけど……。まあいいか、サブ武器にするか。売れば高そうだし」

「あ、ちなみにこのくじ、あと3枚しか残ってないんですよ」

「え? マジ?」

 勇者がハズレを大量に引いてくれたおかげで、箱の中はスカスカだ。


「ここまできたら、全部引いちゃいましょうよ。ラストワン賞もありますし」

「お、おう。じゃあ全部くれ」

 リーダーは追加で3回分支払った。

 ペリッ、ペリッ、ペリッ。

 D賞、F賞、そして……。


「はい! 最後のくじを引いた貴方には、もれなく『ラストワン賞:伝説の鞘アヴァロン』をプレゼント!」

 俺は美しい装飾が施された鞘を差し出した。


「うおっ! なんだこれ、すげぇ魔力を感じるぞ!」

「この鞘、『全自動洗濯機能』付きです! 装備しているだけで服の汚れが落ちます!」

「マジか! ダンジョンだと洗濯できねぇから助かるわー! 嫁さんに『臭い』って言われなくて済む!」

 リーダーは大喜びで鞘を受け取った。


 聖剣よりも鞘の方に感動しているのは、勇者と同じらしい。


「いやー、悪いな勇者の旦那。一番いいところ貰っちまった」

 リーダーはホクホク顔で、聖剣を鞘に納め、鞘を背負って店を出て行った。


 総額、金貨20枚(200万円)。

 勇者が数十枚費やして手に入れられなかった「伝説の武器」を、彼はたった4回で手に入れてしまったのだ。


「……世の中、不条理ですね」

 シルヴィアが空の箱を見ながら呟く。

「それが『くじ』ですよ。必死な人間ほど報われない」

 俺はレジの売上を確認した。

 勇者の散財と、獅子団のハイエナ行為。

 おかげで在庫《聖剣》は処分できたし、売上も立った。

 俺にとっては、どちらに転んでも「勝ち」だ。

 俺は、第二弾のラインナップを考えながら、棚掃除を開始した。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


 読んでいただきありがとうございます。


 毎日投稿予定です。ブックマークや、評価、応援して貰えると、モチベアップに繋がります。


よろしくお願いします!

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