少しずつ、広がっていく
人は、
それぞれ違う道を歩いている。
早く咲く人もいれば、
時間をかけて歩く人もいる。
数日後。
男の畑に、
いつもの客がやってきた。
「この前の野菜、まだありますか?」
「ありますよ」
男が野菜を渡す。
その客は、笑って言った。
「実はね、家族にも食べさせたんです」
「そうですか」
「そしたら、みんな美味しいって」
男は、
少し照れくさそうに笑った。
次の日。
別の人がやってきた。
「〇〇さんから聞いたんだけど、
ここの野菜、美味しいんだって?」
男は、驚いた。
「...…僕のことを?」
「うん。
一度食べてみたらって」
それからだった。
一人。
また一人。
少しずつ、
畑を訪れる人が増えていった。
まだ、
大勢ではない。
行列ができるわけでもない。
大きな店から声がかかるわけでもない。
それでも、
男が毎日大切に育てたものが、
人から人へと、
静かに渡っていった。
男は、夕方、
畑を眺めながら思った。
「あの日、
あんなに悔しかったのにな」
誰かに認めてもらうためじゃない。
誰かを見返すためでもない。
自分が信じたことを、
続けてきただけだった。
その小さな積み重ねが、
今、少しずつ誰かに届き始めていた。
ーーその頃。
遠く離れた場所で、
あの成功した男も、
この畑の噂を、
耳にしていた。
二人の物語は、
まだ始まったばかりです。
この先に何が待っているのか……。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。




