二人だからできること
違う道を歩いてきた二人が、
初めて同じ夢を見る。
「新しい商品......ですか?」
畑の男が聞いた。
女性は、うなずいた。
「はい。
あなたの野菜を使って、商品を作りたいんです」
成功した男は、
資料をじっと見ていた。
「販売は?」
「こちらで担当します」
「宣伝は?」
「もちろん、こちらで」
成功した男の目が変わった。
昔から得意だったことだ。
人と話すこと。
売ること。
広げること。
一方で・・・。
畑の男には・・・。
野菜を育てる力がある。
二人の得意なことは、
まったく違っていた。
「......できるかもしれない」
成功した男が言った。
畑の男も...
静かにうなずいた。
・・・・・。
数日後。
最初の試作品が作成した。
「......うーん...」
女性が首をかしげる。
「どうですか?」
畑の男が聞く。
「正直に言いますね」
女性は、商品を見つめた。
「このままだと...売れないと思います」
空気が止まった・・・。
成功した男も黙った。
「味が悪いわけではありません」
女性は、続ける。
「まだ「二人だから...作った意味」が
見えないんです」
二人は、顔を見合わせた。
「......意味?」
畑の男がつぶやいた。
女性は、答えた。
「あなたたち二人が、今まで歩いてきた道です」
その言葉に...
二人は、黙り込んだ。
その夜。
畑の男は、一人で畑にいた。
成功した男も、
少し離れた場所に立っていた。
「俺たちの道......か」
成功した男が言った。
「昔の俺なら・・・
そんなもの商品にするなんて考えもしなかった」
畑の男は、笑った。
「俺もだよ」
二人は、しばらく畑を眺めた。
・・・・・。
畑の男が言った。
「じゃあ、最初から作り直そう」
成功した男が笑った。
「ァハハ」
二人は、再び歩き始めた。
今度は、
ただ...売れるものを作るためではない。
翌朝。
女性から一本の電話が入った。
「大変です」
「どうしました?」
「昨日の試作品の情報が、
誰かに流れてしまいました」
二人の顔から、
笑顔が消えた。
さらに…女性は、続けた。
「もう、SNSで話題になっています」
二人がまだ完成させていない商品が、
世の中に知られてしまった。
まだ、完成していない。
まだ、始まったばかり。
それなのに、
世間の目は、二人に向き始めた。




