「その条件」
チャンスは、
いつも簡単な形では、やってこない。
「条件って、なんですか?」
電話の向こうから、
相手が答える。
「今までより、多い量を納品していただきたいんです」
男は...黙った。
「今の畑だけでは、難しいと思います」
それは...当然だった。
今でも、
毎日の仕事で精一杯だ。
「それなら......」
男は...言葉を止めた。
受ければ、
大きなチャンスになる。
無理をすれば仲間にも負担がかかる。
「少し、考えさせてください」
電話を切った。
成功した男が聞いた。
「断るのか?」
「まだ決めていない」
「ああ」
「だったら、やればいい」
畑の男は、首を振った。
「簡単には、決められないよ」
「どうして?」
「俺、一人の夢じゃないから」
その言葉に・・・。
成功した男は、黙った。
自分なら・・・。
昔の自分なら。
チャンスを見つけたら迷わず飛びついていた。
周りがどうなるかより・・・。
成功することを考えていた。
今は・・・。
少し違って見えた。
その夜。
畑の男は、
仲間たちを集めた。
「大きな仕事の話が来た」
みんなが顔を上げる。
「今のままでは、厳しい」
しばらく・・・。
沈黙した...。
・・・・・。
若いスタッフが言った。
「......やってみませんか?」
「大丈夫か?」
「大変だと思います。」
でもーー。
スタッフは、畑を見た。
「ここまで来たのに・・・。
最初から無理だって決めるのは、もったいないです」
別の仲間も笑った。
「みんなで考えれば、できるかもしれません」
男は、
一人ずつの顔を見た。
・・・・・。
「......分かった」
静かに笑った。
「やってみよう」
翌朝。
畑の男は、
取引先へ電話をかけた。
「その条件で、お願いします」
・・・・・。
電話を切る。
成功した男が驚いた。
「本当にやるんだな」
「ああ」
そして...
男は、言った。
「ただし・・・。」
「?」
「俺たちだけでは無理だ」
成功した男を見る。
「力を貸してくれるか?」
・・・・・。
少し驚いた...。
・・・・・。
もちろん。
二人は、初めて、
同じ方向を向いて立った。
・・・・・。
その頃。
畑の外では・・・。
二人の名前を知る人物が、
静かに動き初めていた。
「あの二人を、一緒にしたら面白いことになる」
そう言った人物とは・・・。
二人がまだ、知らない。
新しい人物だった。
大きな仕事を、
二人で受けることになった。
ここから先は、
二人だけの物語ではなくなっていく。




