父が知っていた男
人には、
知らな過去がある。
その過去が人生を変えることもある。
「お前、あの畑の男と一緒にいるのか?」
父の声が、
電話越しに響いた。
成功した男は、答えた。
「......ああ」
「そうか」
・・・・・。
父は、黙った。
「なら...一つ聞いておきたいことがある」
「何だよ」
「その男の畑が、どうして今まで続いているか、知っているか?」
成功した男は、眉をひそめた。
「......どういう意味だ?」
父は、静かに話し始めた。
「あの男の畑な。
昔、うちの会社が一度、取引を断ったことがある」
「え?」
「当時は。小さすぎた。量も少ない。
利益にならないと思ったんだ」
・・・・・。
成功した男は、
何も言えなかった。
父は、続けた。
「だがな......」
「......」
「あの男は、断られても文句一つ言わなかった。
自分の畑を続けると言って、帰っていった」
・・・・・。
成功した男は、
畑の男の顔を思い浮かべた。
あいつは、
昔からそうだったのか。
「父さんは、あいつをどう思ってるんだ?」
父は答えるまで、
少し時間を置いた。
「......あの男には、私が失ったものがある」
その言葉に、
成功した男は、息をのんだ。
「何を失ったんだよ」
「人を信じることだ」
電話は、
そこで切れた。
そのころ・・・。
畑の男は、
収穫した野菜を見つめていた。
注文のキャンセル。
これからの生活。
スタッフの給料。
考えることは、山ほどあった。
それでも...
男は、仲間に言った。
「大丈夫。
まだできることは、ある」
そのとき、
成功した男が戻ってきた。
「......少し、話がある」
「どうした?」
・・・・・。
しばらく...迷ってから言った。
「俺の父さん、お前のこと知ってた」
畑の男の手が止まった...。
「......そうか」
「昔、取引を断ったらしい」
畑の男は、
静かにうなずいた...。
「覚えてるよ」
成功した男は、驚いた。
「覚えてるのか?」
「ああ。悔しかったからな」
畑の男は...
少し笑った。
「でも、、、。
あのとき断られたから、今の畑があるのかもしれない」
成功した男は、
何も言えなかった。
・・・・・。
その瞬間…。
畑の男のスマートフォンが鳴った。
新しい取引先からだった。
「もしもし?」
相手は、言った。
「先日の注文の件ですが......」
男は、
息を止めた。
「キャンセルになった分、うちで引き受けられるかもしれません」
畑の男は、
思わず成功した男を見た。
まだ終わっていなかった。
・・・・・。
電話の相手は、最後にこう付け加えた。
=
「ただし、一つ条件があります」
過去がつながり、
新しい道が見え始めた。
その道を進むには、条件がある。
畑の男は、
何を選ぶのは?
成功した男は、
初めて自分の力を試されることになる。




