離れていく人たち
大きなものを失ったとき、
本当に残るものが見えてくる。
父からの手紙を、
何度も読み返していた。
「お前自身の力で決めなさい」
その言葉が、
胸に残っていた。
今までなら、
困ったことがあれば父に相談できた。
仕事の話も。
人脈も。
大きな取引先も。
いつの間にか、
父の存在が自分の後ろにあった。
男は、
スマートフォンを見た。
通知がいくつも届いている。
以前のような内容ではなかった。
「今回は、見送らせてください」
「今後のお付き合いについて、一度お話ししたいです」
「担当者を変更させていただきます」
一つ。
また一つ。
人が離れていく。
男は、
画面を閉じた。
「......こんなものなのか」
誰もいなくなった部屋で、
初めてそう思った。
その頃・・・。
「社長、これ......」
スタッフが持ってきた箱を見て、
男は、驚いた。
注文していた資材だった。
その横には、
新しい取引先からの連絡。
「SNS?」
男は、首をかしげた。
どうやら誰かが、
畑の野菜を紹介してくれていたらしい。
「こんなに広がるなんて......」
男は、
少し笑った。
・・・・・。
まだ知らなかった。
この小さな畑に、
これから、
もっと大きな人の波が押し寄せてくることを・・・。
その波の中には、
あの男の姿も、再び現れることになる。
一人から、
人が離れていく。
もう一人には、
人が集まり始める。
・・・・・。
本当の勝負は、
まだこれからだった。




