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彗星のお仕事  作者: 田舎娘


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9 地球はん、また来たで~。

妹(火星)の伝言を姉(地球)に届けます。そして、ありがとうがいっぱいです。

「地球はん、また来たで~。」

「いらっしゃい。ハーレーさん。今日は、どんな御用ですか。」

「用事があらへんと、来ちゃあ駄目かいな。」

「そんなことありませんが、ハーレーさんの顔に『用事がおます』って

 書いてありますよ。まさか、また、うちの人間が何かしたんですか。」

「ちゃう、ちゃう。けんど、大事な用ではおます。」

「大事な御用なら、私も襟を正してお聞きしましょうかしら。」


「と、その前に木星はんからや。

 あんさんの『ありがとう』で胸が厚うなったらしい。」

「ありがとう。だけで?」

「そうや。木星はんの存在を理解してくれて『ありがとう』と

 言ってくれはる星がいはることに胸がホンワカするらしいわ。」

「それは、よかったです。うれしい伝言をありがとうございます。」

「それや。木星はんからも伝えてくれてありがとう言われてな。

 ちょっと気恥ずかしいがホンワカしたわ。

 あんさんらの『ありがとう』で、ワテも、報われてまっせ。」

「お互い様ですね。」


「あとな。木星はんは衛星たちと話ができるらしいんよ。

 地球はんはどないなんや。」

「出来ませんよ。」

「そうやろ。木星はんは、なんで?」

「話せませんが、何となくはわかります。

 この前のリセットの時は、励ましてくれたようで、

 背中を押された気がしました。」

「木星はんも感じてんのか?」

「木星さんくらい大きいと力量が違いますから

 本当に話されているのかもですね。私も、お月さんと話したいけど、

 これ以上、大きくなれませんし、残念です。」

「それは、ワテ達におまかせはれ。」


     *  *  *  *  *


「ハレーさん。重要な要件はなんですか。そんなに言いずらいことですか。」

「悪い。ちょっと、持ったいつけたかったんよ。」

「意地悪しないでください。さっきからドキドキしてます。」


「火星の嬢ちゃんや。」

「えっ、あの子がどうしたんですか?」

「しばらく休眠するそうや。」

「休眠?」

「今、嬢ちゃんは、最低限の力で火星を維持してはる。

 さらに、力を抑えるために休眠するそうや。」

「あの子は、そんなに危ない状態なんですか?」

「火星が死の星と、言われてんのは知ってんな。」

「はい。でも、惑星としてまだ生きているので心配は心配でしたけ

 どそこまで弱っていたとは……。」

「いやいや、弱ってる訳やないで。」

「ハレーさん、もったいぶらないで教えてください。

 妹はどんな様子なんですか。」

「アハハハ。悪い。悪い。そんならいくで。」

「はい。お願いします。」


「元々は、嬢ちゃんが張り切りすぎて、火星を制御できんよって、

 今の状態に成りおうしたな。」

「はい、あの子の責任です。」

「でも、今はちゃんと星を落ち着かせて惑星として維持してはる。

 嬢ちゃんの力や。」

「そう言っていただけると、救われます。」

「そやけど、このままやと、ずーと今のままや。」

「そうですね。星としては確かに死んでいるのかも。」

「それでも嬢ちゃんは、力を蓄えるために最低限の力で維持してきたんや。」

「それは、褒めてあげたいです。」


「最低限やったから、嬢ちゃんからの呼びかけも切れ切れに伝わってな。

 新米の彗星たちの間では『火星の幽霊』やって噂になったんや。」

「まあ、面白いこと。」

「新米は確認もせず幽霊やと騒いだだけや。

 彗星としては、色々とおもうところがあるで。」

「それで、ハレーさんがお出ましになったわけですか。」

「そういうこっちゃ。で、行ってみたら、確かに切れ切れに声が聞こえてな

 結構近づかんと会話ができなかったんや。」

「それで、あの子は?」

「元気やったで。幽霊説に、半分あたってる~。言うて大笑いしてな。」

「元気なら安心しました。

 でも、力を抑えてるあの子が、どうして彗星さんを呼んでたんです。」

「地球はんに伝言を頼むためや。」

「私に?」

「ここからが、肝心なんよ。いいか。」

「はい。」


「火星には衛星が二つある。

 一つはダイモスで、火星か遠ざかってる。知ってまんな。」

「ええ、あと一つはフォボスで逆に火星に近づいてますよね。」

「そうや。フォボスはいずれ火星と衝突しまんな。これも、知ってまんな。」

「はい。でも、火星にも宇宙にもあまり心配がないと伺ってます。」


「そうなんやが、じょうちゃとフォボスは違う考えや。」

「違う考え?」

「フォボスは、火星に衝突する時、

 どうしたら影響が大きくなるか考えよるそうや。」

「衝突が大きくなったら火星はどうなるんです。」

「衝突やなく影響や。」

「影響?」

「いくら火星に影響が少のうても、

 星同士の衝突や、そのエネルギーは小さくないで。」

「もしかして、そのエネルギーを利用する。」

「そうや。フォボスが衝突するのはかなり先のことや。

 でも、この宇宙では当たり前の時間や。時間なんてないのと同じや。

 そう思わんか。」

「思いますわ。私だって、地球と一緒に長~い年月を過ごしてきました。」

「嬢ちゃんは、その時の為に休眠して力を蓄えるそうや。」

「うまくいきますでしょうか。」

「どんな変化が火星に起こるか分からへんけどな。

 嬢ちゃんは『死んだ星』と言われるよりよっぽどましやと笑ってたわ。

 フォボスに貰ったエネルギーを嬢ちゃんの力で

 眠ってる火星をたたき起こしてみせる。って力こぶ付きでな。」


「あの子も成長してるんですね。」

「失敗を認めてそれを糧にしてんな。『火星の復活』をワテに宣言したわ。」

「良かった。休眠は寂しいですが、火星の復活を楽しみにしてます。」

「ああ、そんで、嬢ちゃんからの伝言や。」


『お姉ちゃん、火星の復活をちゃんと見ててね。わたし、頑張るよ。

    だから、お姉ちゃんも頑張ってね。』


「あの子、たくましくなって。ハレーさん、自慢してもいいですか。

 ちょっと、さびしいですけど。」

「あんさんも、ワテの尾っぽでリセットした地球を復活させたやないか。

 きっと、お手本にしたんやろ。」

「うふふふ。それなら姉として嬉しいですね。

 でも、私もそうですけど、妹も素敵な衛星さんを持てたんですね。喜ばしいことです。いつも、感謝を忘れないようにしてはいるんですけど。」

「お月はんも、火星の衛星たちもわかってますわ。

 嬢ちゃんも衛星たちと思いはつながってるようだしな。」

「それなら良いですけど…。そうだ。

 ハレーさんが近くに行ったらみんなに『ありがとう』を伝えてください。」

「へい、喜んで。」


「お願いします。

 それに、ハレーさんも、火星の復活を見届けてくださいね。」

「その時まで、ワテが彗星でいられたらな~。でも、見たいな~。」

「何、言ってるんですか。今や古株さんでしょ。」

「だからや。ワテら彗星の時間は有限やろ。ちょっと悲しいな。」

「彗星さんは、あの光っている尾っぽが無いと飛び回れないそうですね。

 命を燃やしてるんですね。

 ハレーさんは、尾っぽが無くなって、無限の存在になりたいですか?」

「イヤ。ワテは、尾っぽが大事や。」

「即答ですね。だったら、思う存分飛び回ってください。」

「そうするわ~。ワテは、彗星として誇りを持ってたんやな。

 あらためて気がついたわ。地球はんのおかげや。ありかとうさん。」

「イエイエ、こちらこそ、妹の伝言ありがとうございます。」

「ありがとうの応酬やな。」

「ホントに。」

「ありがとうが、安うならんうちにお邪魔するわ。また来るわ。

「はい。お待ちしています。」






読んで頂いてありがとうございます。

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