36 彦星はん、織姫はん、お邪魔するで。
天の川編に続いて、番外編です。
「彦星はん、織姫はん、お邪魔するで。」
「「はい。」」
「ワテはハレー彗星や、はじめまして。」
「「初めまして。」」
「悪いな大事な時間に邪魔して。」
「いえ、それで用件は。」
「これなんだかわかるか。」
「耳栓ですよね。」
「そうや天の川はんにもらった。」
「天の川さんに。」
「そうやこの辺のものは、みんな持ってるで、子供もな。」
「私達はありませんが。」
「そうやな。これは一年に1回使うらしいで。で、今日がその日やったらしいで。」
「え、どういうことですか。」
「もしかして。」
「お二人のケンカを、聞かんようにや。」
「そんな。」
「なんでそんなに喧嘩するんや。久々にあったやろ。」
「久しぶりだからです。久しぶりなのに、彦星ったら仕事優先です。私は後回しなの。」
「それは、俺は牛追いだから、生き物の世話は時間通りに行かないんだ。それに、仕事優先にしないと、これ以上の罪はいやだからね。」
「それにしたって、お弁当を作ってきても食べてくれないし。」
「あんなに食べきれないよ。」
「まあまあ、彦星はんも織姫はんも仕事は順調のようでんな。」
「もちろん。互いに夢中になりすぎて、仕事をおろそかにした罪がこれですから。ちゃんと仕事はこなしてます。」
「私だって、ちゃんとノルマだって、早々にこなして。ノルマ以上に布を織ってます。」
「うん、いい心掛けだね。」
「「はい。」」
「でも、仕事ってなんだ。」
「「えっ。」」
「仕事って言われたことをやるだけでいいんか。」
「「それは。」」
「お2人とも以前は優秀な牛追いで機織姫やったんやろ。」
「「自慢です。」」
「今は?」
「「えっ。」」
「今はどないや。」
「それは…。」
「彦星はんは、動物が相手やからようわからんが、牛たちはどうなんや。」
「そういえば、前は俺を見ると近くによって来てうれしそうに鳴いてました。今は俺に関心が無いようです。」
「織姫はんは?」
「私は数を織るのに必死で、でも誰よりも多く織ってます。」
「それで牛追いとして織姫として自慢できるか。」
「俺は牛追いとしての心もちを忘れてました。以前はお世話ではなく、あいつらと一緒に過ごせるのが嬉しくて、あいつらが大きくなるのが嬉しいと思いました。けど、今はただお世話をするだけです。」
「私も、以前は私の織ったものが褒められると、自慢で嬉しくって、次も頑張ろうって思ってました。でも今は出来上がった数ばっかり気にしてました。」
「二人の罪は何なんだろうな。」
「仕事をしなかったから?」
「多分、仕事への意欲がなくなったからと違いますか。」
「「ああ…。」」
「罪を受けてから彦星はんは自慢できる牛を育てたか。織姫はんは自慢できる反物を織ったか。」
「「・・・・・。」」
「そんなんやったら、罪はずっと続くよな。」
「「そんな。」」
「でも、その罪を下したのは、どんな神様や。」
「「はっ。」」
「天の川はんではないぞ。なら、どこの神様に許してもらうんだ。知ってんやろ。」
「そういえば誰だっけ。」
「牛の世話しながら、機織りしながらよく思い出しいや。」
「「はい。」」
「まあ、きちんと心を込めて仕事したらわかるんやないか。」
「頑張ります。私は今までで一番の布を折って見せます。」
「俺も牛たちと昔みたいな仲になるよ」
「まあ頑張ってな。来年は耳栓が必要ないことを祈るわ。」
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