27 タイタン、仕事か?
「タイタン、仕事か。」
「ハレー彗星殿か。そうだ。主星の土星があんなんだからな。」
「アハハハ、土星はんは、衛星はんたちを頼りにしてはるからな。」
「あれは丸投げと言うんだ。」
「ハハハ。そのうち、お前はんの下克上が起こるんでないか。」
「私が主星になったら、真っ先に土星を切るな。役に立たん衛星はいらん。」
「土星はんは、タイタンこそ威張ってるって言うとるで。」
「私はやることはやっている。やっていないのが主星だ。」
「衛星がいっぱいおるから把握も大変やって言うてるぞ。それに冗談も言えんってな。」
「大変なのはわかる。私も把握は大変だ。しかし、衛星の主星を思う気持ちは土星には通じていない。みんな、あいつの冗談を聞きつけて真剣に考えてるんだ。」
「聞き流したらいいや。」
「聞き流したら、平和過ぎてつまらな~い、とひとりで喚いていた。」
「それは……。」
「まあ。衛星も暇なのが多い。だから冗談を本当にしようと考えているんだ。」
「土星はんも衛星たちも平和ってことか。」
「そうだな。」
「でもリングが薄くなっていると言うてるぞ。」
「あれは北極の六角形の嵐が原因だ。」
「タイタンは薄くなった原因を知ってるのか。」
「ああ。リングの最初は、私に衝突した星のかけらが集まってできたものだ。だが、今ほど美しいものではなかった。」
「そうなんでっか。」
「今のリングの様になったのは、クラサリスのおかげだ。」
「クラサリス?」
「クラサリスは土星に引っ張られ、堕ちていった。」
「その時にリングがあーなったんか。」
「そうだ。リングだけではない。」
「他にも。」
「ハレー彗星殿は北極の六角形の嵐を知っているか。」
「エート。土星はんが、どうしてできたか、わからないって。」
「ああ。あいつにはわからんだろうな。そもそもあいつが変なことを考えたからだ。」
「やっぱり冗談も言えないのは本当や。」
「あれもクラサリスだ。」
「土星はんに引っ張られてリングになった星がか。」
「そうだ。クラサリスは、いずれ土星に落ちることは覚悟していた。だが、自分の存在を主星に忘れて欲しくなかったんだ。」
「それで、あの嵐でっか。」
「そうだ。主星が北極に嵐があったらと言っていたのでな。落ちて行く際、能力を北極に飛ばした。そして、その力を利用して嵐として存在するようになった。クラサリスはいずれ嵐は収まるだろうが、『主星は驚いたかなあ』なんて私に意識を飛ばしてきた。なので私の力もちょっと飛ばしたら、今も嵐として荒れ狂っている。それが六角形だ。」
「おもろいな。」
「ああ。私もつい笑ってしまった。クラサリスは嵐を作るために力を全部使い果たしたはずなんだが、嵐から弾き飛ばされたクラサリスの欠片がリングを作っていった。」
「不思議やな。」
「不思議だ。私はリングを見る度、クラサリスの存在を感じていた。だが少しずつ薄れてきている。」
「だからリングが薄くなったんか。」
「わからん。しかし、リングは薄くなっても嵐は収まる気配がない。」
「クラサリスは、嵐を選んだんか。」
「わからん。だがリングはなくなっても、土星に影響はない。そして嵐がなくなっても影響はないが、北極は土星の一部だ。主星のそばで眠りたいのだろう。」
「土星はんは、慕われてまんな。」
「だが、土星はあまりに衛星が多すぎて、名前さえ全部覚えてないだろう。」
「そりゃ酷いでんな。」
「だが、太陽神様も小さい星の名前なんて知らないだろう。」
「そうでんな。名前さえない星もありますしな。」
「ああ。主星が悪いわけではないが、衛星は主星が思っている以上に、主星のことを慕っている。これは、どの惑星の衛星でもだ。月とかフォボスなんていい例だろう。」
「あー。わかりますな。このことを土星はんに伝えても。」
「かまわん。そして思い知ってほしい。衛星の気持ちを、そしてクラサリスの覚悟を。北極の嵐と土星のリングは、クラサリスそのものだ。」
「哀しいでんな。」
「いや、クラサリスは満足だろう。主星に嵐のことやリングのことを心配されているんだ。」
「してやったりでっか。」
「そういうことだ。」




