Scene-07 ダンシング・オン・ア・シンライン
『瑛音、早く入れ!』
「井手上さん、早く!」
「は、はいいー」
列車がトンネルに飛び込む寸前、間一髪で車内へ飛び込んだ。
あれ、対面式ロングシートの客車だ。
大正時代の通勤電車……にしては、何か変なような気がするな。
『急げ、瑛音!』
「あわわ」
「お手伝いいたします、瑛音さま!」
二人掛かりで扉を閉めた。
デッキに放置しておいた魚人の身体が風船みたいにすっ飛び、ぐるぐると廻りながら虚空へと吸い込まれていった。
あ、危なかった……
『瑛音、カドを巡ってる。――またロクでもなさそうな角度へ飛ばされそうだ』
「いい加減、相手の思い通りの場所に行かされるのにも飽きたな」
『――やるか?』
そだね、やりましょう!
『よし、一度カドを安定させてくれ』
「りょ! ――井手上さん、これ着てて下さい。モーサン、そこで待機してて」
「は、はいいー」
「(あわわわ、いま移動しますー)」
プラトーの柄に手を掛けつつ叫ぶと、大慌てのモーサンがニュートごと井手上さんに移る。
大丈夫? ――大丈夫!
スラリとプラトーを引き抜くと、チクタク感覚を蹴飛ばした。
チクタク チクタク チクタク
発動は第四!
プラトーがカドにブッ刺さると、空間と次元から異音が上がった。
カドを阻害した代償に、突き刺したプラトーから骨を振るわすような大激震が伝わってくる。
覚悟の上だ――けど、いつもながらキツいー
ぐぐぐ!
『瑛音、手伝うぞ!』
ありー
モーサンから飛び出したニュートが、飛び跳ねるようにカドを巡り始めた。
よかった、振動が弱まった!
「ぐぐぐ……うりゃー!」
やがてパリィィンと鏡の割れるような音が響き、カドを巡り損ねた列車がトンネルから飛び出していく。
そのまま冬枯れた夜の草原を走り始めた。
どうやら安定したようだ。
ワンテンポ遅れて虚空に突き刺さっていたプラトーが引っこ抜け、尻餅をつく。
「いてて……皆、だいじょぶ?」
「は、はい。瑛音さまもお怪我は……」
井手上さんの手を借りて、ちゃっちゃと起きあがる。
彼女が羽織るモーサンも大丈夫そうだ。
ニュートが足元に寄ってきて「肩に乗せろ」とばかり、ひょいと前脚を上げた。
はいはい、いいけど爪は立てないでねー
「さて――ここ、通勤電車でいいのかな?」
さっきから見てはいたけど……改めて木製の客車の中を見る。
客車の中は、窓を背にした長いシートがふたつ向き合って設置されていた。
つまり山手線とかと同じ形式。
シートは一席ずつ肘掛けで区切られ、クッションもフカフカの豪華ではあるけど……なんというか、大正っぽくない。――とか思ってたら、後ろで井手上さんが取り乱し始めた。
ん?
「え、瑛音さま……どうしましょう、お金そんなにありません!」
「お金?」
『一応フォローしておくが、大正ではボックスより真ん中に大きな空間を確保できる対面ロングシートの方が高級だぞ。チケット代も、井手上がああして取り乱すほど高い』
「満員だと狭くない?」
『シート代を払わん奴は車両自体に入れん、だから吊り革もない』
ああ、確かにないや。
立ち乗り客がいないなら、真ん中に大きな空間ができるというのも同意かな。
あとニュートさん、鉄道のウンチクを必死に堪えてますね?
「ま、いいか。――井手上さん、切符代は気にしなくていいよ。仮に払えって言われたら、またカルネにツケとけって言っておく」
「あうう、すいません……」
「(ごちゅうもくー、向こうの車輌から何かきますー)」
『瑛音、モーサンから警告だ』
綺麗な装飾を施された扉のガラスを通して、隣の車両から人影が近づいてくるのが見える。
ふふん、来ましたか。
ホルダーに戻してたプラトーの柄にそっと手を掛けつつ、近づいてくる人影をじっと見つめる。
黒く、ちょっとヒョロっとしてて――あれ?
「カルネぇ!?」
隣の車輌に続く扉が開くと、学生服に学生帽、セルの黒を羽織ったカルネ・レイジが入ってきた。
イグの神話使い!
奴は蛇みたいな目でこっち睨んだけど、灰色の溜息と共に薄笑いへ切り替わる。
「奈落で何が起きたかと思えば……どうやって乗り込んだのだ、綾瀬杜瑛音」
「僕の仲間が連れ去られてね。――さっさと返してくれる?」
くるか!?
近いし、狭いけど、モーサンは脱いでるからプラトーは使える。
チクタク感覚もフルだから――ふふん、問題ナシ!
「ついてこい」
あ、あれ?
カルネが、くるっと背を向けた。
パッと見で武器はない。
いや、まあ、コイツ蛇人間へ変異できるから素手でも強いんだけども……
さておき――目だけで皆と作戦会議。
ニュートは「ついていけ」か。
井手上さんは背中に銃弾をブチ込みましょう! って感じ。
モーサンは……
「(くんくん……混沌の匂いがこびり付いて酷いですねぇ。――殺しても?)」
『瑛音の判断を待て』
最後に、僕はどうする気だとニュートが目で尋ねてくる。
皆もジーッと。
こほん、僕の答は――
「綾瀬杜瑛音、チケット代をオレにツケておけと言ったそうだな? ――払っておいたぞ、全員分」
倒す――ついていく!
ぐぐぐ……いや言ったけどさ、確かに言ったけど、言われて本当に払うか!?
「……」
「くく、面白い女だ。――ふたつほど先の車輌で、いい物を見せてやる」
肩越しに笑うと、カルネが先に扉を潜った。
あれ……女?
カルネの奴、僕の性別を知らないんだっけ。
戦った奴には正体をバラしてた気がするんだけど、アイツはどうだったかな……
ううん?
ブツブツいいつつ、カルネの後ろについて客車を潜る。
一等を二つほど超えた先にあったのは……
「だ、ダンスホール?」
シートを取っ払い、代わりに赤い絨毯を敷いた金ぴかの車輌だ。
レコードで音楽も流れてる。
踊ってる人たちは隣りの車輌にいるらしく、男女対の人影がユラユラと揺れていた。
カルネがクロークっぽいところで、マントと帽子を脱ぐ。
「ただの《幻想》だが、悪くはないだろう?」
「……」
いや……おまえ、普通あのシチュで「いい物」って言ったら、もっとこう物騒な方面のを――まあ、いいけどさ!
――で、僕にどうしろって?
そんな目で見つめてやると、カルネが笑って手を伸ばしてきた。
そのまま静止する。
も、もしかして……ダンスに誘ってる?
僕を!?
カルネが文学青年風の青白い顔を紅潮させながら、はにかむように笑った。
うわ、本当に誘ってる。
「スカートは少々破廉恥だが、その新しい髪型はとても似合っているな。――この高鳴りに免じて、一曲頼む。お前も踊ったことくらいあるのだろう?」
ないよ。
令和で踊ったことがあるといえば、フォークダンスと創作ダンスくらいだ。
ううん……カルネの奴、何を考えてる?
伸ばされた手を放置して様子を伺っていると、井手上さんに抱かれたニュートが解説を入れてくれた。
『瑛音、大正時代の社交ダンスは一般教養だ。都市部ならば庶民でも踊れるくらいに浸透している。――なので、お前のホムンクルスボディにもダンスアセットくらいある筈だ』
「そりゃ、あるけどさ」
「――そうだろう。ならば軽くワルツを一曲」
レコードが切り替わるノイズの後、クラシックが鳴り響き始めた。
出だしでピンとくる。
これ、デスゲーム開始音楽だ!
ほう……僕を相手にいい度胸だ。
カルネの手を取ってやると、素直に踊り始める。
受けて立ってやる!
曲は三拍子。
一歩目のステップで軽く身体を沈め、そこから次のステップで身体を少し浮かせる。
そして大きく跳躍するかのようなステップから、再び身体を低める。
そうやってカルネの廻りを上下に揺らめき巡る。
優雅にね――
遠慮がちに僕の腰へ回してきたカルネの手が、ときおりウェブリーやプラトーに当たった。
その度にギチッと緊張する。――くるか!?
「は、はは! なんだ綾瀬杜瑛音、存外可愛らしく踊るではないか」
「……」
ええい、まだルール解説ターン来ないの?
腰に回してきたカルネの手が徐々に調子に乗り始め、やがてグイグイと引き寄せてくる。
きっしょー
ええい、ゲームのルールをさっさと言え……とか思っていたら、ニュートがニャホンと咳払い。
『あー、まあ――瑛音、いちおう言っておくが……『青き美しきドナウ』を聞いてデスゲームが開始されるかもとか思ってるか? そんなの考えるのは、大正ではお前だけだぞ』
「!?」
ツンのめりかけ、調子に乗りまくってたカルネの手を弾き飛ばす。
でも僕の手を掴んでた左はそのままだ。
一瞬困惑したカルネだったけど、すぐ表情を緩めた。
「そうか、今のはタンゴのステップか。――おい、フェリシアをかけてくれ」
「いや、おま……」
「急くなよ、綾瀬杜瑛音。もう少し楽しんでくれたら良いことを教えてやる。例えば――お前の仲間の居場所を」
「……」
チク タク チク タク チク タク
「――井手上さん、もう一曲踊るから待機してて」
「は、はい……」
「ふふ、いい顔だ。――だが少々白すぎるな。まだ緊張しているのか?」
問いかけを無視して隣の車両をジッと見ていたら、カルネに顎をクイと持ち上げられて振り向かされる。
なっ……馴れ馴れしい!!
睨みつけてやると、真正面に青白い顔が迫ってきた。
「綾瀬杜瑛音、普段は何をして過ごしている?」
「仕事してる」
な、何をいきなり……
そこで、いかにも大正って感じの曲が始まった。
タイトルはフェリシア。
僕は女性ダンサー役なので、後ろにいる痴漢を蹴っ飛ばすようなステップを踏みつつ男性の廻りを刻むように巡る。
どっかでカルネを蹴るかなー、どーすっかなー
「ふふ……物騒な職業婦人だ。たまに出かけたりしないのか? 出雲町に再建した資生堂などは女学生に大層人気だそうだぞ」
「今年は行きそびれた。来年になったらアイスクリームを食べに行こうと思ってる」
「ははは、そうか! お前でも甘味に舌鼓を打つのだな」
僕の言葉を受けてカルネが笑う。
何ステップか踊り続けていると、奴が意を決したような顔でこちらを覗き込んできた。
「行くのは友達とか? もし――の話だが、一緒に行く者がいないというのであれば……」
は?
お、お前と行けと!?
挙げ句、タンゴのリズムを無視して腰をガッチリ押さえられた。
ぐええ、鯖折りー
あと近い!
「遠慮するよ」
「ははは、つれないな。――だが、そこがいい」
段々イライラしてきたな。
この曲の終わりがタイミング的にベストなんだけど、どうして踊りながら雑談しないといけないのか。
なんかカルネに口説かれてるみたいだ。
ブツブツいいつつも手を握り合いながら踊り続けていると、突然カルネが真面目な顔になった。
「綾瀬杜瑛音、お前は幸せか?」
はあ!?
今度は人生相談か、それとも占いでもしようって言うのか。
「我らは異形の使徒だ。――お前はこの世界を救いたいと思っているのかも知れないが、この世界はお前を犠牲にする気でいる! だ、だから……」
「僕はいつか、この世界から去る」
カルネがこっちを凝視した気配がするけれど、目は合わせてやらない。
ステップする方向を――ただ、前だけを見つめる。
そのまま言葉を紡いで行く。
「僕は仮初めの客だ。それを悲しいと思う時もあるけど、心を曇らせたりはしない」
「あ、綾瀬杜瑛音!」
突然叫んだカルネに両の二の腕をガシっと掴まれた。
なんだ、なんだ?
見下されながら続きを待つ――待つ、待つ。
いや、沈黙長いな。
カルネはただ、口をパクパクとするだけだ。どうやら言葉を失ったらしい。
「どうかした?」
「――け、懸想する男性などはいないか。例えば……唇を重ねたいと思うような相手は」
だ、男性って……いるわけないだろう。
まー、男性とキスしたこと自体はあるけどさー
具体的には千葉で景貴と。
異性って意味なら、その直後に清華としてるな。
――あれ?
よく考えたら、あれファーストキスか……
おそらく双子も。
そんなことを考えてたら、ハラハラしている井手上さんに抱かれていたニュートがひょいと前脚を上げた。
『猫を勘定に入れていいならファーストはオレだな。お前に勝手にされただけだが。――で、このレコードが終わるのを待ってるでいいな? よければタンゴに戻れ』
バッっとカルネを引っぺがし、タンゴのステップに戻る。
カルネも少し残念そうに、でもちょっと嬉しそうに再び僕の手を取ってタンゴに戻った。
しかしニュートとキスかあ……
前は鼻同士をくっつける時によくしてたけど、最近してないな。
そう言えば猫吸いもご無沙汰だ――なんて考えていると、カルネがまた必死に語りかけてくる。
「我らだけが助かろうなどとは言わん。――誰もが助かる第三の道があるのだ。綾瀬杜瑛音、お前も、私も……誰もが、だ!」
そっすか。
やがて曲が終わりに近づいて生きた。
最後のチャッ、チャンという〆に合わせ――チクタク感覚を蹴飛ばす!
チクタク チクタク チクタク
発動は第三。
加速して――そのまま、カルネを思い切り向こうの車輌へブン投げる!!
このために手を握ってやってたんだ!
「綾瀬杜瑛人音、だから――うわっ!?」
「この――卑怯者め!」
カルネの身体が次の車両に飛び込む寸前、不可視の壁にぶつかった。
そーね、さっきはそこで引っかかった。
そして不味い事態を引き起こした。
二度はない!
スラン――プラトーを引き抜くと、ニュートに叫ぶ。
「ニュート、奥に隠れてた神話存在の情報プリーズ! ――境界よ、在れ!」
危機を悟ったカルネが蛇人間に変異する。
だけど無視。
その脇の不可視の壁を――カドを、プラトーで切る!
「――ヴァージ!!」
幻想の帷は落ち、舞踏会は幕を閉じた。
代わりに現れたのは――細く鋭い針を大量に生やした、分厚い蜘蛛の巣エリアだ。
それが隣の車両の半分を埋めている。
巣にはグネグネとした隙間があるので、恐らく解放や脱出などをエサにして犠牲者をもて遊ぶゲームタイプの拷問具だろう。
そこに蛇人間化したカルネが引っかかる。
奴越しに、奥の安全地帯でふんぞり返っていた神話存在を見たニュートが牙を剥き出した。
『猫の友たちよ! そやつらは猫の敵――ムーンビーストとレンの亜人だ!!』
「やっぱりデスゲームの会場で正しかったか。――景貴、清華、その場から動かないで!」
「な、何だこれは!? 綾瀬杜瑛音、僕はこんな――」
カルネが何か言ってるが無視!
針の巣に飛び込まされる寸前だった清華を、景貴が引き戻して庇う。
後ろにいたサテュロスみたいな半獣人が二人を無理やり針の巣へ追い立てようとする――のーでっ!!
喰らえ、対神話弾!
翠の爆発で不味いツラ共がドカドカと吹き飛んだ。
牢屋の前でふんぞり返っていた人間大のヒキガエル的神話存在が、顔のイソギンチャク状器官を大きく開いて激昂する。
その前を黒い影が横切った。
「ゲッ、ゲゲッ……ゲッゲーッ!!」
『愚鈍な奴め!』
ニュート!
針の巣を駆け抜けてムーンビーストへ肉薄すると、イソギンチャクみたいな口元に噛みついて一本を食い千切った!
「ゲゲッゲーッ!?」
『ペッ! 大叔父の言っていた通り、臭い血だ』
ニュートはレン人の死骸へ飛び移って古風な鍵を奪い取ると、牢獄に投げ入れた。
小岩井さんが受け取り、すかさず鍵を開ける。
ケイが飛び出して荷物を取り返した。
「武器さえあれば……小岩井さま、茂呂島さま!」
「「おう!」」
大人二人が銃剣付きライフルを構え、激昂するムーンビーストと対峙する。
僕もブチブチとプラトーで針の巣を切り裂きつつ駆け寄ると、景貴と清華が抱きついてきた。
「瑛音さま、やっぱりお気づきでいらしたのですね!」
「来てくれると信じていました」
「――これは君たちのお手柄だよ、有り難う!」
ぎゅーっと二人を抱きしめる。
初見殺し殺しで戻る前はタイミングが早すぎた。
それが不利な状況で巧みに駆け引きをしていた双子の試みを台無しにし、二人はレンの亜人たちに無理やり巣へ投げ入れられている。
それでも入り口で叫ぶ僕へ少しでも近づこうとし――
そのお陰で、こうして時をやり直せている。
嘲笑うムーンビーストの濁声と合わせ、しばらく夢に見るだろう。
なので、ムーンビーストとその取り巻きには代償を支払わせてやるつもりだった。
とびきり高いのを……!
あとカルネの「いい物」は、やっぱりそういうのだったな!!
「はぁ……でも皆を救えてよかった。僕にこの力をくれた旧支配者に感謝! ――あとさ、ニュートって実は強かったんだね」
『ウルタールには猫の組織した軍がある。夢見の月ではそいつらや土星の猫を相手に戦っているぞ』
ニュートがニャヘンと胸を張る。
そのムーンビーストは、小岩井さんと茂呂島さん相手に苦戦していた。
舐めプして武器を持ってなかったせいだ。
これなら二人に任せても――そう思った瞬間、ビーストが壁の隠し戸から槍を引き出した。
当たると凄く痛そうな、物騒な奴を!
「対神話弾を……」
「瑛音さま、私にお任せください。こちらのマントをお借りします!」
「(あいあい、お借りされまーす)」
ほへ?
走り込んできた井手上さんが叫び、モーさんの――尻尾を持ったぁ!?
ムーンビーストの腕を打って槍を叩き落とす!
「ゲッッ、ゲェェェーッ!!」
「な、何か分からんが……好機だぞ、モロ!」
「承知!」
突撃した茂呂島さんの銃剣が、分厚い腹に深々と突き刺さった。
さらに小岩井さんの銃剣が口に突き刺さり――抜いて刺し、さらに刺す。
メッタ刺し!
最後にケイがすっ飛んできて奴の槍を取り上げ、それで喉元を突き刺した。
後頭部まで突き抜ける。
「ぜー、はー……」
「ケイ、小岩井さん、茂呂島さん、ご苦労さま。――ニュート、奴はアレで死ぬ?」
『問題ない、奴らの武器を使うのは良いトドメのさし方だぞ』
ほっとため息をつくと、そーっと井手上さんの様子を伺った。
その目は虚ろで、口元は吊り上がり――またかー
双子が引きまくっている。
「え、瑛音さま……い、井手上の目が怖いのですが」
「そね。癖になる前に止めさせないと……」
『いっそ最後までやらせて、スッキリさせてやるか?』
「駄目!!」




