第十二話「害虫」
「害虫掃除・・・」
今マシューから聞いた言葉をそのままに呟く。まさか言葉通りに虫退治をさせるわけではないだろう。
「俺達はこの村から追い出したい奴がいるんだ。村長を気取るクズとその下っぱをな」
「・・・話を聞かせてくれ」
マシューは語り出した。村長を名乗るくせ、村のためには働かず、好き放題に毎日を過ごす彼らの事を。この村には俺とリーンを除いて30人ほどの人口だが、村長とその仲間たちは10人。その中には門番の連中も入っていた。
彼らは先ほどジードが言っていたように、毎日好き勝手に遊びまっているようだ。ろくに働きもせずにジードの畑から当然のように作物を貰い、マシューのからも卵と牛乳、鶏肉を受け取り、お抱えの料理人に飯を作らせ、ロッチの酒を飲んで毎夜遅くまで木こりと大工達が強力して建てた村のホールで遊び明かしているとか。そのくせ村民会議だのと人を集めては、村長ぶって偉そうにしているらしい。
おいおい、ギャング団かなにかか?
「誰も止めなかったのか」
「村長と取り巻きは戦闘職だらけなのさ。レベルがまだ低いとはいえ、こっちは生産職ばかりの村の奴らだけだ。どうにもできなかった。」
なるほどな。戦闘職という力を背景に村を支配してきたというわけか。ゲーム開始5日目にしてこれほど裕福な村だ。何もせずに飲み食い寝泊まりできたここは彼らにとって楽園のようだったろう。
「殺すつもりなのか」
「その方がいいだろうな。追い出した後、山賊にでもなられたりしたら厄介だし、復讐しに来る可能性もあるからな」
「でも、デスゲームという可能性もあるんですよ・・・?」
「それは所詮噂だ。心配することでもない」
「でも・・・っ!」
セラは血なまぐさいことは避けたいようだ。てかそもそも彼女はなんでここにいるんだ。彼女はここでこんな話をするには不似合いだ。その疑問に答えるかのようにマシューが言う。
「昨日、夜に料理を持って行ったセラは、ホールで奴らに襲われそうになったんだ。」
「マシューさん!」
セラが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ほんとのことだろ。俺がつけてなかったらお前はあのガキどもの性欲の餌食だった。奴らは諦めず同じことをする機会を伺ってるだろう。だから早く手を打たなくちゃいけないんだ」
「・・・奴らは子どもなのか?」
「ああ、盛りのついた糞ガキだらけさ。昨日大人ぶっていっちょまえに酒を飲んでたけどな、無理して飲むからゲーゲー吐いて、ホール周辺は臭いのなんのって。見張るこっちはたまったもんじゃなかった。あのくそったれの少年ギャング団め。・・・それで確か、村長のハイスは自分を高校生だと言っていた。その子分達は中高生が中心だと思う。奴らの会話も探ってたんだ。大半の会話は下品で幼稚だったよ。昨日の夜も未遂に終わってからは一日中、セラをどうやって犯すかについて語りあってたくらいだからな」
お前もさっきは女神のおっぱいとか言ってたじゃん。まあいいや。
てかさ、そういうの本人の前でいうことじゃないよね。セラの顔が少し青い。昨日もよほど怖い思いをしたのだろう。トラウマになっててもおかしくないだろうに。マシューはマシューなりに心配しているのだろうが、デリカシーがないな。
コホン、と咳払いをして、ジードが話しだす。話題を変えようとしているのだろう。
「この村に入る前に入村審査があったじゃろう。あそこでアンタが素直にレベルを申告していれば、村長集団はアンタをもてなし、取り入るつもりだったのだ。そうやって強いプレイヤーを懐柔し自分達の傘下につけ、力を蓄えようというのが奴らの狙いらしい。日が経てばその数は膨らんでいくだろう。だから行動に移るなら早めに動かねばならん。ワシとセラのサブクラスが魔術師、マシューはテイマーと密偵。他に戦える者は、ほとんどおらん。木こりのガラットのメインクラスが戦士なくらいだ。だからあんたとリーンの力を借りたいのだ。」
「俺も森で戦力になりそうなウルフを5匹ほど手に入れたが、そこまで強いわけじゃない。リーンちゃんみたいなユニークモンスターと遭遇できりゃ楽なんだけどな。」
「えっリーンさんってモンスターだったんですか?」
セラは知らなかったようだ。俺は説明してやった。説明をきいてセラはすぐに理解してくれた。リーンがモンスターだからと言って、別に嫌悪感を抱いたりはしないようだ。いい子だな。
「まあ俺は別に協力しても構わないぞ。世話になったセラがあのヘラヘラとした野郎どもに食われるのを許すくらいなら頼まれなくても殺してやるさ。それに、奴らのあの様子だとリーンもそのうち危ないだろうしな」
「あんたがそう言ってくれるなら心強いな。さっきも言ったが、インビジブルとサイレントウォークのカードを作るのに協力してやるよ。んで、善は急げだ。決行は明日の夜だな。」
「気が早いな。策はあるのか。」
「いつもこの時間にはあいつらは酒に酔っ払ってる。ロッチに頼んで明日は酒の量を増やしてもらおう。見張りがいつも数人いるが、インビジとサイレントウォークを使った俺とらんまるで始末する。その後ホールに乗りこむ」
「俺はファイアーボールのカードを使うんだ。火事になると危険かもしれない。それに他の住人の了解は得なくてもいいのか。」
「わかった。昼のうちに消化の用意をさせておこう。元よりみんな承知済みさ。みんな奴らに迷惑してるんだよ、らんまる。」
なるほどな。
その後もう一杯ずつビールを飲んだ後、数時間ほどマシューに付き合ってもらってカードの封印とLv上げをした。モンスターのをいちいち封印するよりも誰かに手伝ってもらった方が明らかにカードのレベル上げ効率はいいな。リーンにも今度手伝ってもらおう。
インビジブルLv10×3、サイレントウォークLv10ゲット




