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第46話 一難去って……

 タイレンの町最大の懸念であった森の魔物達の勢力を大討伐とその後の冒険者達による精力的な討伐により大きく削ることに成功した。

 これによりタイレンにおいてのほとんどの大きな問題を解決したことになりリュカ達は一応の平和な日常を手にしたことになる。


 しかし国全体においては魔王軍に押されつつあり徐々に侵略されつつあった。

 そこで事態を重く見た王はタイレン一帯の治安を安定させることにソウケンにも出兵を命じた。


 しかも合流という形では無く、援軍を送ることもできないので辺境周辺を独自に動き魔王軍と戦って奪われた領土を取り返していけという無茶ぶりであった。

 これにはさすがのソウケンも頭を悩ませ町の有力者を集め会議を行った。



「無茶を通り越して無謀ですが王からの命令だから拒否することも出来ません。どうしましょうか。はあ……」



 ソウケンがため息をついた。



「魔王軍との戦いですか……まず物資が足りませんな。現在この町も拡大を続け金、ヒト、モノの流れも昔に比べて大分整ってきてはおりますが急激に人口が増えた分食料がギリギリ足りている状況ですな」



 この町の商人を束ねるトーンは言った。



「下手に手を出して魔王軍の警戒を生み大軍で攻められでもしたらこの町じゃひとたまりもねえぞ。少しずつ要塞化に着手してるが早く見積もっても二年はかかる」



 そう言ったのはこの町の要塞化を任されてるゴーデスである。



「たまに兵士を鍛えたりもしているからわかるんだけどよ。兵士の錬度も圧倒的に足りないぞ。使えて半分程度だ。あのまま行けばほとんどが無駄死にだろうよ」



 フランツもいつものように気合でなんとかなると言うのではなく参戦には否定的であった。



「加えて戦争となれば当然武器、防具の予備も大量に必要ですね。軍は徐々に増加して千六百程度その辺りはどうなんですか?」



 そこにリュカも少し口を挟んだ。



「正直足りていないな。皆自分が持ち寄ってきたものを使ってくれているのが現状だ」



 他の有力者からも問題点を次々と指摘され会議は紛糾していった。



「話になりませんね」


「そうなんだよなあ。いや分かっているんだよ?無理なことぐらいね。でも王命で来ちゃったんだよねコレが」



 そう言ってソウケンは遠い目をして王の命令書をひらひらと左右に振っていた。

 リュカは命令書をソウケンの手から掴み取り目を通した。



「うわ。これ王と宰相、将軍の三人の連署ですよ。王国のトップ陣のサインか。相当期待されているようですね」



 普段噂では相当仲が悪いと言われてる二人が揃ってのサインであり、相当期待されているということが分かった。

 これには有力者の面々も相当頭を悩ませた。



「とりあえず王都に今の現状を書いて待ってもらうように返書を送りましょう。とにかく今までやってきたことを早めて軍備を整えるしかないとおもいます。無理に兵站が整わずに戦いが始まってしまえば大打撃を受けるのは間違いありません。それどころかここが滅びかねません。出来ることからひとつずつこなして行くほうが良いと思います。」


「そうするしかないか……」


「物資の調達については私がなんとかしてみましょう。しかし最低でも半年は必要でしょうな。なにせ今は戦時です。どこの領どころか国でさえも物資が足りていないのですからな。」


「頼むよトーン」


「町の強化も頑張っては見るが期待しないでくれよ?」


「ゴーデスも頼む。とりあえずこの辺で会議は終わりにしておく。とにかく戦争に参加するのは王からの命令が下ったため決定事項だ。皆大変だと思うがよろしく頼むよ」



 こうして会議はお開きとなった。



「ということがあったんですよ」


「なるほどね。ソウケンも大変だね」



 ルーネが他人事のように言った。



「お師匠さまは王や家から命令されたりしていないのですか?」


「ああ。私の家はわりと自由なんだ。当主もいるし気にする必要はないのさ」


「そうなんですか……ウインドアロー!」


 リュカの魔法の矢が庭に設置されていた的の真ん中を突き抜けた。

 現在ルーネとリュカは魔法の訓練を行っていた。


 といってもリュカは長い間魔法を使っていなかったのでリハビリである。



「腕は鈍っていないようだね。これなら依頼に出ても安心だ」


「何故か魔力も上がっていますね」


「ハイエルフという割にはリュカ君の魔力は相当低いんだ。上がったと言ってもSランクにギリギリ届かない程度だね。伝説級のハイエルフはSSランクの魔力を持っているんだ。だからこれからも上昇するという可能性はあるね」


「今のままでも割と持て余しているんですけどね」


「それは諦めるしかないよ。ハイエルフになってしまった宿命というやつさ」


「なら仕方ありませんね」


「リュカ様大変です!一大事です!」



 カイルが慌てた様子でこちらに向かってきた。



「どうしたんだいカイル。そんなに慌てて」


「ルーネ様も居たんですか!ちょうど良いです!一大事なんです!」


「少し落ち着きたまえ。カイル。深呼吸だ」



 すーっと大きく息を吸い少し落ち着きを取り戻した。



「この国が二分されたんです!」


「二分?」



ルーネがカイルに尋ねた。



「はい!王都とこのタイレンの中間に位置する城郭都市ステルアが魔王軍により陥落しました!」


「何だって!?」



 城郭都市ステルア。

 堅牢な城壁で王国が誕生してから五百年足らず経つが幾度とあった戦において陥落したことは一度もなく、魔物にせよ人にせよありとあらゆる攻撃を防いできた都市である。


 今回の戦いにおいてもそこを拠点として魔王軍との戦いを繰り広げてきたのであった。

 そこを落とされたとなっては戦況が相当悪い事態になっていたようであった。


 さらに良くないことにステルアは城郭都市としてこの国を守ってきただけではなく、この国の中央に位置し交通の要でもあった。

 そこを抑えられると標高が高く越えることが難しい山脈が多い王国にとって二つにされたといっても過言ではなかった。



「とにかくソウケンさんの指示を待ちましょう」


「そうだね。ソウケン大丈夫かな?ストレスで胃に穴があくんじゃないかな」



 リュカとカイルにはルーネがつぶやいた言葉が冗談には聞こえなかった。

 次の日、青ざめたソウケンが改めて有力者を集め対策会議を開くのであった。

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