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第45話 心晴れぬ日々

 大討伐以降も魔物の数を抑制するために多くの冒険者達が森へと討伐に向かっていた。

その甲斐もあってか魔物による被害も大幅に減りタイレンの町の人々は安心して暮らすことができていた。


 また大幅な町の増築やフランツの評判、魔物が減ったことにより商人が頻繁に訪れるようになるなど色々な効果が重なりなって国の中でも有数の都市へと発展していた。

 さらに大討伐から生還した冒険者達もその腕にさらに磨きがかかり彼らの名声も王国中に響き渡っていた。


 その内の一人であるリュカはまだ傷が癒えるのが遅く完全に復帰することが出来ずにいた。



「なかなか治らないものだなあ。ほとんどの冒険者はもう治っているというのに情けないよ」


「身体中の骨が折れていたから治癒力が追いついてないのじゃないでしょうか。特にエルフは耐久力に秀でた種族とは言えませんし、その辺りも関係があるのではないかと」


「へえ。そうなのか知らなかったよ」


「ルーネ様から聞いた話ですがね」


「さすがだね。お師匠さまは物知りだな」


「そうですね」



 すこしだが歩くことができるようになってからもリュカは屋敷に引きこもりがちだった。

 そんなリュカを見かねたカイルによって外に連れ出されていた。


 まだ怪我の影響で上手く歩くことが出来ないため杖を使って歩いていた。



「この町も変わったね。少し前までは田舎の港町レベルだったのにもう都市と言っても過言ではない気がするよ」



 辺りを見回してリュカはふと呟いた。

 大通りには店がずらっと並び、道を行き交う人々は皆生き生きとしていた。



「騎士の数も千まで増えたらしいですよ。ソウケン様もただの領主と言うよりはちょっとした諸侯のようなものですよ」


「この町の騎士たちの練度からするとそろそろ対魔族の前線に参戦しろと命令が下りそうな人数ではあるね」



 現在魔王軍との戦いで王国軍は王国中から兵を募り十万の軍勢に膨れ上がっていた。

 しかし強力な魔物を率いる魔王軍に対し劣勢を強いられていた。


 さらに良くないことに有名な冒険者達や王国有数の実力を持つ貴族達も疲弊し次々と倒れていっていた。



「良くない噂ばかり聞こえてきますけどよくこの国は滅びませんね」


「カイル。国というものはそう簡単に潰れたりしないのさ。たとえ圧倒的な武力の前にもそれなりの答えを導き出しそれなりな対応ができるのさ。とはいえもうそろそろジリ貧だろうけどね」



 少しリュカの表情が暗くなった。



「……やめましょう。こんな話は。今日は気分転換に散歩しに来たのですから」


「そうだね」



 リュカは大討伐で仲が良かった冒険者達が死んで以来少し気が滅入っていた。

 特に自分が悪いんだと自分を追い込んでいた。


 そんな精神が不安定気味なリュカをフランツ達は心配してなるべくリュカが自暴自棄にならないように一人になる時間を作らないようにしていた。

 大討伐に関しては指揮をとったリュカ達アンダンテの面々を悪く言う人達もいた。


 参加した人達や大多数の人達は褒められこそすれ悪く言う人はいなかった。

 しかし根が真面目であるリュカには自分が油断していたという負い目もあって相当効いたようだった。


 それ以来あまり笑わなくなっていた。



「おい。見ろよあれあの女みたいなやつが噂のリュカじゃないのか?」


「ああそうだぜ。大討伐で浮かれて大ポカをやらかした奴だ」


「家でおとなしくして、隊長格の依頼なんて引き受けなければ良かったのにな!」


「本当だぜ!そうだったら誰も死ななかっただろうよ」



 冒険者のような格好をした男達がわざとリュカに聞こえるように挑発してきた。



「貴様ら!」



 カイルが怒り剣を抜こうとした。



「やめるんだカイル。頼むから……そろそろ帰ろうか」



 リュカは首を振りカイルを制止した。



「分かりました」



 カイルは手を震わせながら剣の柄から手を放した。

 帰ろうとしたその時にリュカは服を引っ張られ後ろを振り返った。


 後ろに小さな女の子が立っていた。



「どうしたんだい?僕に何か用かな?」



 リュカはしゃがみ込んで女の子に話しかけた。



「私のお父さんが帰ってこれたのはあなたのおかげだって聞いたの。だから……」



 その子は満面の笑みを浮かべてこう言った。



「ありがとう!」



 そう言うと女の子はじゃあね!と言って町の中に走って行った。

 リュカは呆然と立ち尽くしていた。


 そしてポツリと呟いた。



「僕は……僕は許されるのだろうか?油断してあんな被害を出したのに……」


「俺は大討伐に参加していなかったから何があったのかは聞いたことでしか分かりません。恐らくリュカ様のせいではないでしょうが何も言えません。ただ俺はあの子のありがとうは参加した冒険者やあの子にとって心からの言葉だと思いますよ」



 リュカの目から涙がこぼれ落ちた。

誤字脱字、感想がある方はよろしくお願いします。

m(_ _)m


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