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第44話 苦悩

 撤退戦にてリュカとエミリア、ロスの三人は大怪我を負った。

 回復魔法というものは怪我をしてすぐにかけると怪我を治すことが出来るのだがある程度時間が経てば使えなくなってしまう。


 エミリアとロスは驚異的な回復力により数日で怪我を治して今日もフランツとアース、ゼノビアの五人で依頼を受けに行ってしまったがリュカはそのような回復力を持っていなく、怪我が治るまで一ヶ月はかかるようだった。

 右腕、左腕、左足首、肋骨と様々な箇所が折れており魔法で痛みをなくしてはいるがベッドからほとんど動けず、一日をそこで過ごしていた。


 その姿はとても痛々しく町の人々の多くも心配していた。



「リュカ様お加減はどう?」


「いい塩梅だよ。というかアイリ。風呂ぐらい一人で入れるよ」



 大怪我をしてから屋敷にてアイリとユーリ、ルーネによる徹底した看護が行われていた。

 現在リュカは風呂に入っていた。


 看護に至っては風呂やトイレさえも付きっ切りという徹底ぶりであった。

 事務仕事においてもカイルとラスク、マリーが分担して行っていた。




「というか恥ずかしいよ!せめてカイルをよこしてよ!」


「カイルはあの戦いの事後処理で忙しいの。わがままを言っちゃダメなの」


「そういう問題じゃないと思うんだけどな……」


「それにしても……リュカ様は本当に男だったの……しかも顔と体に似合わず大きい……」



アイリはごくりと思わず息を呑みリュカの下半身を見て呟いた。



「どこを見てるんだよ!セクハラだよ!」


「おやおや盛り上がってるね」


「え?」



 そこに裸のルーネが入ってきた。

 その肌は冒険者をやっているには思えないほどに白く艶があって胸も男性から見てとても魅力的なほど大きく、身体全体が女性特有の丸みを帯びて柔らかそうに見えるが決して太っているわけではなくその肢体は美しいとしか言えなかった。



「何で……ここに?」


「身体中の骨が折れて重症なリュカ君を私も看護しようと思ってね。それに長い間生きてきたけど弟子と風呂に入って語り合うってことはやったことがなかったんだ。だから来たんだよ」


「そう……ですか……」


「はあ……リュカ君も男だったんだね。中々立派なものを持っているようだ」



 ルーネは感心していた。

 リュカは色々と言いたいことがあったが次第に考えられなくなり鼻血を大量に出して倒れた。


「もう……無理……」


「リュカ君!?」


「リュカ様!?」



 ルーネとアイリは慌ててリュカを介抱したが騒ぎをききつけて駆けつけたユーリによってこっぴどく怒られるのであった。

 そこから二時間ほど経ってリュカが目を覚ました。


 リュカが目を覚ますとユーリに膝枕をされて団扇であおがれていた。



「リュカ様目覚めたようですね」


「ああ。ここは僕の部屋かな?」


「そうです。あの二人はキツく叱っておきましたので許してあげて下さいね。悪気はないんですよ。ただリュカ様が好き過ぎるだけで」


「別に怒ってないよ。今僕は何も出来ない役立たずな状態だしね」


「リュカ様は頑張り過ぎたから少し休むくらいで良いのですよ」



 そう言ってユーリはにっこりと微笑んだ。

 リュカはいつもの元気がなく少し暗い表情になった。



「そうかな?でも皆を守れなかったよ?僕に優しくしてくれたエイクさんやカイさんもたくさんの人が死んじゃった。もっと僕が賢ければどうにかなったかもしれないのに……」



 ユーリはリュカの頭を撫でながら静かにリュカの話を聞いた。



「油断してたんだ!魔物に攻められた時と違ってみんな僕より経験があって強くて……それでもみんな僕を頼ってくれてたのに!防衛戦すごかったんだってね。頼りにしてるよって!気が緩んでいなければ飛行できる魔物がいるぐらい気づけた筈なのに!一言声をかけさえすればあの狭い道でもみんななら対応できたハズだ!なのに僕は!……」



 リュカは溜め込んでいた事が言えて少しスッキリしたのかそのまま眠りこんだ。

 実はここ最近、あの出来事が夢に出て眠れなかったのである。


 ユーリはそっとリュカの目元の涙を拭った。



「リュカ君……」



 それをドアの後ろで聞いていたルーネはリュカの苦悩に気づけなかった自分が腹立たしかった。

 今思えばあの時から苦しんでいたのであろう。


 しかしそんな感情を誰かに相談出来る状況ではなく、無理やり気丈に振舞っていたのだ。

 それに気づけなかった自分がルーネは許せなかった。


 一方その頃事務室は修羅場と化していた。

 今まではリュカが主にその作業の多くを担っていたがリュカが殆ど動くことが出来ない状態であるため代理としてカイルがその場を仕切っていた。



「経費の資料はどこにあるんですか!?ギルドへの申請書もない!?」



 カイルはドタバタと事務室中を動き回っていた。



「旅団の運営ってこんなに事務仕事が多いものなんだな」



作業をしながらラスクはポツリと呟いた。



「冒険者の集団ですからね。行動することに多くの規則がないと暴走する可能性を危険視されてるんじゃないかと思いますわ。」


「それをリュカは我々が加入するまで一人でこなしてきたというわけか。」


「そうですわね。今回の戦いで多くの冒険者を失い、一部の冒険者達からはタイレンで一、二を争う知恵者と言われながら冒険者を守れなかった無能と言われてるようですが彼ほど文武において優秀な人間はこの町におりませんわ」


「だよな。Bランクに甘んじてるのが不思議なくらいだ。」



 話しながらも手は止めない二人であった。

誤字脱字、感想がある方はよろしくお願いします。

m(_ _)m


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