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第43話 撤退戦

 結局良い案が浮かぶわけでもなくルーネが魔力が尽きない限り万能な魔法と長距離攻撃ができる遠距離隊で前線を維持し、フランツが近接隊で殲滅、アースが負傷した冒険者達を護送するという役割になった。

 副隊長にはそれぞれリュカ、ラスク、ゼノビアになった。


 撤退を決めたリュカ達であったが現在魔物達の猛攻を受けていた。



「魔物が突っ込んでくるぞ!シールドはちゃんと使えるようになっているのだろうね?ちゃんと攻撃を受け流すんだよ!来るぞ!魔法隊シールド展開!」



 ルーネが魔法隊に指示した。



「シールド!」


「シールド!」


「シールド!」


「シールド!」



 リュカは生き残る確率を少しでも上げるため手持ちの魔法をいくつか魔法隊に指導していた。

 本来なら自分で開発した魔法というのは弟子に受け継がせる以外に教えることはなく秘密にしておくのだが、この時ばかりは数が少なくなった近接隊を温存しておく必要があったのでそんなことを言ってられなかった。



「弓隊!今だ放て!」



 リュカが叫び弓隊の矢が雨のように降り注いだ。

 そこに近接隊が駆け寄った。



「近接隊!魔法隊に負けんじゃねーぞ!前に出て魔物共を切り刻んでやれ!」



 フランツが声を張り上げる。



「おう!」


「二人一組でかかるぞ!」


「ハインツ!前に出過ぎだ!少し下がれ!」


「オルトロスごときが俺様に刃向かうんじゃねえ!」



 何度目か分からない魔物達の攻撃を退けそのまま帰還への道を進んでいた。

 今のところは順調だと言えるが問題も出てきた。



「マズイな」



リュカがボソッと呟いた。



「何がだいリュカ君?」


「私たちは問題ないでしょうが他の人たちの魔力の消費が激しすぎます。この調子で行くと町まで保ちません」


「それはマズイね。どうしたもんか」


「お師匠さま。結構深刻な状況なんですけどもうちょっと焦ってもらえません?」


「何を言ってるんだいリュカ君は。焦ったところで魔力が戻る訳でもないのに。それとも不安で不安で仕方ないのかい?可愛いね。なーにいざとなれば私が全て蹴散らしてあげるよ。その代わり報酬は貰うけどね!」


「報酬ですか?」



 リュカはキョトンとしてルーネに尋ねた。



「リュカ君の身体さ」



 そう言ってルーネはリュカの耳を甘噛みした。



「にゃにしゅるんですか!」



 リュカは赤面し噛んだ。



「ラブラブですな」


「ありゃりゃりゃ。副隊長さん赤面しちゃってるよ」


「副隊長さん羨ましいねえ」


「リュカたんハアハア。」



 魔法隊の面々に口々に冷やかされリュカは恥ずかしくていたたまれなくなり黙り込んだ。

 約一名はそんなリュカに興奮していた。


 突然本隊より少し前を進んでいた斥候が駆け寄ってきた。



「前方にキマイラ数は二十!本隊を待ち構えているようです!」


「キマイラか。あれの攻撃を受け切るのはキツイ!シールドで攻撃を受け流すのではなく魔法で数を減らす!使う魔法は各々判断に任せるよ!魔法隊構え!」


「弓隊も同時に攻撃を仕掛ける!ルーネ隊長の号令とともに矢を放て!」


「近接隊!魔法隊と弓隊の前に出ろ!討ち漏らしを潰せ!盾持ちは絶対に後ろに行かせるな!」


「なるべく外さないように引きつけてから打つぞ!」



 十のキマイラがものすごいスピードでこちらに突っ込んできていた。

 その迫力に震えが止まらない者もいた。


 キマイラと冒険者達との距離が後数秒となった時ルーネがようやく号令を下した。



「放て!」


「フリーズ!」


「ファイアアロー!」


「ストーム!」


「フレア!」


「サンダーレイン!」



 様々な魔法と矢が飛び交いキマイラは次々と倒れて行った。

 八匹が魔法と弓の雨の中をくぐり抜け近接隊とぶつかった。



「リュカ君危ない!」


「え?」



 その内の一匹が近接隊の間を抜けてリュカに遅いかかった。

 リュカは吹き飛び地面に転がった。


 そこに近接隊に混じっていたシグルス駆け寄ってきてキマイラの喉元を噛みちぎった。

 どうやらそのキマイラをもって戦闘が終了のようだった。



「助かったよシグルス」


「主よ大丈夫か?」


「あまり大丈夫とは言えないかな」



 ルーネが慌ててこちらに向かって走ってきた。



「リュカ君大丈夫かい!?しっかりするんだ!」


「油断しました。骨が何本か折れてそうです。」


「少し待ってくれ!回復魔法をするから」


「いいえその必要はありません。もうすぐ森の出口です。何があるか分かりません。回復魔法は魔力を多く消費します。魔力は温存しておきましょう」


「しかし!」


「お師匠さま。過保護過ぎますよ」



 リュカはそう言って笑った。

 しばらくの間ルーネはリュカに大丈夫だからと言って使おうとしたがリュカは頑として折れなかったため最終的にルーネは諦めた。


 そのかわりにルーネは前線に残ると言い張るリュカを魔法で眠らせ護送隊の馬車にリュカを連れて行った。

 その後三度の戦闘を経てリュカ達はタイレンの町に辿り着いた。


 何とか魔法隊の魔力も保ち、結果的にはリュカの言ったように魔力を温存しておく方が正しかったのであった。


 戦死者二十二名、重軽傷者十五名、生還者三十八名。

 結果としては討伐数的には森の魔物達の勢力を弱めることに成功したと言える成果を叩き出したが、失った上級冒険者の数がエマが想定していた数より多くギルドにとって相当の痛手となった。

なんかリュカが主人公のはずなのにヒロインのようになっている気が……


誤字脱字、感想がある方はよろしくお願いします。

m(_ _)m


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