第34話 運命
フランツ達が王女を伴って帰還してから数日が経った。
その間に町の修復は終え、作業は本格的に増築へと移行した。
タイレンの町はフランツの英雄譚が広まってか少しずつ増え人口が六千人にまで増加していた。
「お師匠さま。この町も随分と人が増えましたね。」
「ああそうだね。王都では王都に居るよりこの町に居る方が安全なんて噂が流れていたよ。」
「そんなことないでしょうにね。」
「ソウケンかエマ辺りが人を集めるために意図的に流したんじゃないかと私は思うけどね。」
「まさか。ハハハ。」
リュカとルーネは笑い合いながら町を散歩していた。
人口が急激に増えたことによって治安の悪化が懸念されていた。
しかしエマとソウケンが上手くコントロールしているらしく、多少の小競り合いはあっても目立って大きな事件は怒っていなかった。
「なんだと!このクソババア!」
どうやら冒険者らしき男に占い師らしいお婆さんが襲われているらしかった。
「お師匠さま!」
「リュカくん行くよ!」
「もう一回言ってみやがれ!」
「そこのお前!何をやっている!」
「あん?なんだお前は?ほう随分と可愛らしいお嬢さんで俺の邪魔をするって言うなら容赦をしないぞ!」
リュカは無言でナイフを抜き素早く男の首筋に刃を当てた。
「あん?僕は男だ。誰がかわいこちゃんだ?あ?」
「リュカくん落ち着きたまえ。そこの君もリュカくんがまだ冷静な間にどこかに行きたまえ。」
「わ、分かったから離してくれ。」
「チッ!」
「リュカくん。そんな汚い言葉は使っちゃダメだよ。」
「分かりましたよ。」
リュカは悪態をつきながら男を離した。
「へへへ、すまなかったな。お礼にこいつをくらいやがれ!」
男は隠し持っていたナイフをリュカに向かって投げつけた。
「ウインド!」
ルーネは威力を抑えたウインドを唱えてナイフを弾き飛ばした。
男はその隙に逃げ去った。
「逃げ足の速い野郎だね。リュカくん。大丈夫かい?」
「こっちはなんとか。それよりお婆さんは大丈夫?」
「ああ。なんとか助かったよ。坊や、お嬢ちゃんありがとうよ。」
「なんで襲われてたんだい?」
「良くない占いの結果が出てそれを告げたら暴れ出したのさ。おそらく金を払う気がはじめからなかったなんじゃないかねぇ。」
「それは運が悪かったね。」
「助けてもらったところ悪いがこの町に来たばかりで返せるものがまるでないんだよ。お礼に占いをしてあげよう。」
「そうかい?ちょっとドキドキするね。じゃあ私から頼むよ。」
「ふむふむ。」
占い師のお婆さんは持っていた水晶に手をかざした。
すると水晶が光り輝き始めた。
「ほう。お嬢ちゃんはこれまで散々苦労してきたようだね。これからも苦難がつづくね。ただあんたの人生は後に伴侶になる人を救うことができるかできないかで大きく変わるよ。人生の選択を間違えないことだね。」
「救わなくてはいけない人ね。普通逆じゃないかな?」
「王子様のような星の元に生まれているのだろうさ。」
「王子様か。まあ悪くないね。」
ルーネは満更でもなさそうだった。
「じゃあ次は僕だね。」
「ふむふむ。大きな災いが近寄ってるね。近い未来いくつかの選択を決断せざるをえない状況に追い込まれるだろうさ。その決断によって幸せな未来に向かうか不幸な未来になるかとなるだろうさ。」
「決断か。なかなかネガティブなのが出たな。」
「まあ、所詮占いさ。深く気にする必要はないよ。」
「そうだよ。リュカくん。それに私が付いてるからどんな困難も打ち払ってみせるさ。」
「その時はお願いしますね。」
「それじゃお婆さん私たちはこれで失礼するよ。」
リュカ達はお婆さんに別れを告げてその場を去った。
「可哀想に。苦難の道を背負ったハイエルフ様に幸あれ・・・」
一人残された占い師はポツリと呟いた。
お婆さんと別れた後もリュカとルーネは町をぶらついていた。
「そういえばお師匠さま。」
「ん?何だいリュカくん。」
「急な話で驚くかもしれませんがソウケンさんから騎士団の中の新しく編成される部隊の隊長にならないかと勧誘されているんです。」
「え!?引き抜きかい?」
ルーネは驚きリュカに尋ね返した。
想像もしてなかった事に少し困惑している様子だ。
「いえ。魔物の侵攻など有事の際のためにあらかじめ指揮権を持しておき混乱が起きないようにするための予防策らしいです。」
「ふむ。リュカ君はどう思うんだい?」
「その場でいきなり指揮を任されて反発が起きるよりは楽で良いんですが。」
「私自身としては君がお飾りとは言え軍属扱いになるのはよろしくないと思うよ。」
「ですよねえ。」
リュカは力が弱いとは言え曲がりなりにも伝説ハイエルフである。
バレた時のリスクを考えると軍に所属し利用される可能性があるので良策とは言えなかった。
「まあこの件については屋敷に帰ってからみんなと相談しよう。」
「そうですね。」
屋敷に帰って早速皆を広間に集めこの件について話し合った。
その結果、王女が妥協案としてフランツを隊長に推薦する案を出した。
皆もその案に賛成し、後日ソウケンも許可し正式にフランツが隊長に任命された。
ゼノビアによるフランツの包囲網が少しずつ形成されつつあった。
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