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役立たずの【翻訳】スキルと追放された俺、実は世界の理を書き換える最強の【賢者】だった~聖女様と悠々自適の建国ライフ~  作者: 早坂 拓也


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第5話:不当な徴収と、自動防衛システム(デバッグ)の起動

第5話:不当な徴収と、自動防衛システム(デバッグ)の起動


 穏やかで、透き通るような朝だった。


 昨日まで不毛の死地だった俺の『領地』には、今や清らかな川のせせらぎが響いている。

 朝露に濡れた豊かな森が、どこまでも広がっていた。


 新築の邸宅のテラスで、セシリアが淹れてくれた温かいハーブティーを一口すする。

 前世の安物の缶コーヒーとは比べものにならない、芳醇な香りが鼻を抜けた。


「Allen様、本当に……。まだ夢を見ているようです」


 セシリアが、俺の隣で幸せそうに目を細めて微笑んでいた。


 彼女の白い肌には、もはや泥の汚れも、魂を縛っていた呪いの影もない。

 俺の『翻訳・最適化』によって正常化された彼女の聖なる力。


 それは今や、邸宅の周囲に清浄な魔力結界を保つための「環境維持プログラム(パッシブ・スキル)」として……。

 完璧に動作していた。


 足元では、小型犬サイズの黄金龍『ゴールド』が、アレンに撫でられて嬉しそうに喉を鳴らしている。


 だが。

 その平穏を切り裂くように、俺の脳内の環境モニタが不快なノイズを検知した。


『――通知:敷地境界線ファイアウォールへの不正な外部アクセスを確認。

 ――個体数:五。属性:敵対的(悪意を伴う侵入)。

 ――判定:デバッグ(排除)の対象です』


「……やれやれ、お出ましか。思ったより早かったな」


「俺の土地が『金になる』と嗅ぎつけたか」


 そこに立っていたのは、バビロンの街の汚職衛兵数名。

 そして、見覚えのある軽薄な装束の男――ガルスだ。


 俺を追放したSランクパーティ『暁の剣』の、雑用兼下っ端メンバー。

 かつて、俺の翻訳したデータを勝手に自分の手柄にしていた、救いようのない小悪党の一人だ。


「おい、アレン! 隠れてねえで出てきやがれ、この無能ゴミ野郎が!」


 ガルスの、耳障りな怒鳴り声が静かな森に響き渡る。

 俺はセシリアに下がるよう手で制し、ゆっくりと彼らに歩み寄った。


「何の用だ。ここは俺が正当な対価を払い、正式な契約コントラクトを交わして買い上げた私有地だぞ」


「はっ! こんな不毛の土地、国がいつでも回収できるんだよ!」


「それに聞いたぜ、お前。街で高価な聖女の奴隷を買ったそうだな? 無能の分際のくせに、贅沢な遊びをしてるじゃねえか、ええ!?」


 ガルスが俺を指差し、卑屈な笑いを浮かべる。

 背後の衛兵たちも、他人の領地を略奪することに何の躊躇もない、腐りきった目をしていた。


「勇者レオン様がお怒りなんだぜ。『アレンの野郎、俺たちに黙って莫大な資産を隠し持っていたに違いない』ってな」


「さっさとその聖女を差し出し、隠し資産の場所を吐け! そうすれば命だけは助けてやるぞ!」


 ガルスが合図すると、衛兵たちが一斉に抜剣した。

 汚れたブーツで、俺の敷地内に踏み込もうとする。


「……忠告しておく。そこには『自動防衛プロトコル』が走っている」


「招かれざる者が一歩でもラインを超えれば、世界が君たちを『不正なデータ(バグ)』として処理するぞ」


「ああん? 寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ! ……行け! この無能をズタズタにして、女を捕らえろ!」


 ガルスが、俺が引いた見えない境界線を一歩跨いだ。

 俺の胸ぐらを掴もうとした、その瞬間――。


――[セキュリティレベル:1(警告)]

――[アクション:強制排除プログラム、実行(RUN)]


 バチィィィィィィィィンッ!!


 一瞬、周囲の空気が弾けるような凄まじい放電音が響いた。


「ぎぃ、ぎゃあああああああかっ!?」


 踏み込もうとしたガルスと衛兵五人が、弾き飛ばされた。

 まるで巨大な暴走トラックに、正面から撥ねられたかのような勢いだ。


 それだけではない。

 彼らが誇らしそうに構えていた鉄の長剣は、触れてもいないのに一瞬で熱溶解メルトダウン

 飴細工のようにぐにゃりと曲がって、地面に転がった。


「……な、なにが……何が起きたんだ……!? 魔法か!? 何か強力な罠を仕掛けていたのか!?」


「いいえ。ただの『入力規制バリデーション』ですよ」


「この土地の規則に従わない悪意のある者は、この世界には『存在の干渉ができない』ように定義し直したんです」


 俺が氷のように冷徹な声で告げると、ガルスは恐怖で顔を真っ青に染めた。

 ガタガタと震えながら、空中にそびえ立つ俺の邸宅を見上げている。


「そ、その建物……! 一晩でこんな城みたいな家が建つはずがない……! アレン、お前……本当は、どんな化け物の力を隠していたんだ……っ!」


「お前たちが『ゴミ』と切り捨てた翻訳家の力ですよ。……さて、ガルス。君たちの『データ』は今の俺にはもう不要だ」


「速やかにエラーコード(退出)を吐くか……。それともここで、世界の削除データとしてデリートされるか。三秒で選べ」


 俺がパチン、と指先を鳴らす。

 ガルスの足元の地面が、底なしの闇が口を開けたかのように、不気味なノイズを伴って分解され始めた。


「ひ、ひぃぃぃぃぃっ! ご、ごめんなさい! 助けてくれっ、消されたくないっ!」


 ガルスたちは小便を漏らしながら、転がるように荒野の方へと逃げ去っていった。

 もはや武器も矜持も失くし、ただの惨めな敗残者の姿だった。


『――脅威の排除を確認。システム、通常運用モードへと復帰。お疲れ様でした』


「…… Allen様。凄いです。あのような乱暴な方たちが、あなたの指一本に触れることすらできずに……」


 セシリアが目に畏敬の念を浮かべて、俺を見つめていた。

 その頬が、少しだけ赤く染まっている。


「……ノイズは早めに除去しておかないとな。これからここは、もっと多くの人が集まる『中心サーバー』になるんだから」


 俺は逃げていく彼らの背中を冷ややかに見送りながら、確信した。


 レオン……お前たちは、自分がどれほど致命的な『デバッグ(調整役)』を手放してしまったのか。

 そして、その調整役が『自分専用のシステム』を構築し始めたことが、何を意味するのか。


 次に会う時までに、精々その傲慢な頭で後悔の計算をしておくがいい。


 さて。初期の害虫バグも排除した。


 次は、この土地をさらに豊かにする番だ。

 世界中から知識と富が集まる『最強国家』へと進化させるための、インフラ構築を本格化させるとしよう。

第5話をお読みいただきありがとうございます! かつての仲間の鼻を明かす『自動デバッグ』、いかがでしたでしょうか。 ここまでの5話分を読んで「続きが気になる!」と思われたら、 ぜひ 【ブックマーク】 と 【★★★★★】 で、アレンの『神速更新』を加速させてください!


次回(第6話)からは、明日 19:00 予定。本格的な建国が始まります!

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