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役立たずの【翻訳】スキルと追放された俺、実は世界の理を書き換える最強の【賢者】だった~聖女様と悠々自適の建国ライフ~  作者: 早坂 拓也


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第3話:呪いの言葉と、泥にまみれた聖女

第3話:呪いの言葉と、泥にまみれた聖女


「……ここが人里か。随分と、不気味な活気だな」


 深い森を抜け、俺たち――。

 俺と黄金のドラゴン(現在は目立たないよう、小型犬サイズまで無理やり圧縮されている)は、交易都市【バビロン】の重厚な門を潜った。


 手元には、ドラゴンの鱗を一箇所だけ『性質変換』して生成した、規格外の純度を誇る魔力結晶。

 門番たちの年収を軽く超えるそれを見せつけると、俺は最上級の冒険者として、あっさりと入都を許可された。

 

 街の通りには、喧騒と、微かな腐敗の臭いが充満している。

 そして何より――。

 醜悪な「欲望」を書き連ねた文字データが、街中に溢れていた。


「おい、早くしろ! その『呪われた女』を表に出せ! 景気づけのオークションだぞ!」


 広場の一角で、下卑た笑い声が沸き上がっていた。

 そこには、錆びついた鉄格子のついた荷馬車と、それを取り囲む野次馬たち。

 この世界の闇……奴隷市場オークションだ。


 俺の視界には、無数に並ぶ商品――奴隷たちのステータスが、テキスト・ログとして次々に流れてくる。

 

 「耐久値:三十/百」「疲労度:臨界点」……。

 そこにあるのは、使い捨ての道具として扱われる生命の、悲痛な叫びのようなデータだった。


 だが。

 最後尾の、最も頑丈そうな檻に閉じ込められた少女だけは、異彩を放っていた。


「ふん、この女が噂の『破滅を呼ぶ聖女』だ! 隣国の神道で『この国は滅びる』なんて不吉な予言をしやがった。……舌を引き抜かれそうになったところを、俺が二束三文で買い取ったのさ!」


 奴隷商が、少女の白金を思わせる美しい髪を、土足で踏みつけるように乱暴に掴んで顔を上げさせた。

 泥にまみれた頬。ボロボロに引き裂かれた白衣。


 だが、その瞳には――。

 絶望のどん底にあっても、決して折れることのない、強烈なまでの「意思の光」が宿っていた。


『――緊急解析:個体名[セシリア]の深層データを読み取ります。

 ――状態:[神級呪言カースによるシステム・ロック中]

 ――潜在能力:測定不能(魔力が逆流し、オーバーフロー状態にあります)』


 俺が視たのは、彼女を覆う、どす黒い鎖のような「記述コード」だった。

 それは単なる呪いではない。

 高位の存在によって記述された、極めて複雑で悪質な「システム・エラー」そのものだ。


 彼女の発する言葉がすべて破壊的な力を持ってしまうため、それを封じるために喉と言霊に強力な封印が施されている。

 その結果、彼女は「喋ることも、魔法を使うことも、自分を癒やすことすらできない」……。

 究極の生き地獄へと追い込まれていた。


「おいおい、そんな呪い持ち、誰が買うんだよ! 十分もしねぇうちに全員死ぬぞ!」


「見てみろよ、あの瞳! まるで俺たち全員を呪い殺そうとしてるみたいだ。気味が悪いぜ、金貨一枚でも高すぎる!」


 野次馬たちが笑いながら、彼女に向けて汚れた石を投げつける。

 少女――セシリアは、避けることすらせず、ただ黙ってその衝撃を受け止めていた。


 その姿が……。

 かつてレオンから「無能」と切り捨てられた、自分と重なって見えた。


「……その少女、俺が買う」


 広場に響いた、低く、だが鋼のように硬い声。

 俺は一歩、嘲笑の渦の真ん中へと踏み出した。


「あん? なんだお前は。……こんな呪い女を買って、心中でもするつもりか?」


「いや。この子の『記述(運命)』のバグを、少しだけ修正したくなっただけだ」


 俺は懐から、先ほどドラゴンから作り出した「金剛魔力結晶」を取り出し、床に投げた。

 カラン、という、あまりにも重厚な音が広場に響く。


「これでどうだ。釣りは必要ない。今すぐ、その檻の鍵を渡せ」


 広場全体を瞬時に照らし出すほどの、眩い魔力の輝き。

 奴隷商の目が、驚愕と強欲でひん剥かれた。


「げ、金貨千枚分か……!? つ、つ、つ……決定だ! この呪い女はお前のものだ! 早くいけ、死んでも苦情は受け付けねぇぞ!」


 無理やり檻の鍵が外され、セシリアが俺の足元に投げ出された。

 彼女は、泥で汚れた顔をゆっくりと上げ、俺を見つめた。


 その瞳には救いへの期待などなく、ただ「また別の地獄が始まるのか」という乾いた諦めだけが浮かんでいた。


 俺は彼女の前にしゃがみ込み、その細い首元に刻まれた「黒い刻印ロック・コード」に手を伸ばした。


「……あ、あ……あう……(逃げて……おねがい……)」


 声にならない、掠れた悲鳴。

 彼女が俺を拒絶した瞬間、首元の刻印がどす黒い光を発し、周囲の空間がミシミシと軋んだ。


 呪いが、彼女ごと俺を葬り去ろうと暴走を始める。


「……安心しろ、セシリア。君はもう、一人じゃない」


 俺は躊躇わず、彼女を縛る暗黒の刻印に、直接指を触れた。


「今から、君の人生を縛る『最悪な設計ミス(バグ)』を……俺がすべてリファクタリング(最適化)してやる」


――[対象:セシリアの喉・魂・魔力回路]

――[Action:不当な外部スクリプト(呪い)を強制削除(Delete)]

――[Authority:管理者権限により、全封印を『無効』へ書き換え]


「……上書き保存セーブ


 パチン、と指を鳴らす。


 次の瞬間。

 広場全体が、白昼よりも眩い「純白の光柱」に飲み込まれた。


 彼女の首を絞め上げていた黒い鎖のような呪いが、一瞬のうちに美しい光の粒子となって霧散していく。

 彼女を覆っていた泥や汚れが、聖なる魔力によって完全に浄化されていく。


「……あ……ああ、あ……」


 彼女が、自分の「声」を、そして「呼吸」の自由を、数年ぶりに取り戻す。


「……こ、声が……出せる……。身体の奥が……あったかい……」


 セシリアは震える手で自分の喉を触り、そして信じられないものを見るかのように、俺を見つめた。

 その瑠璃色の瞳から、ダムが崩壊したかのような大粒の涙が溢れ出した。


「…… Allen様……。あ、ありがとうございます……! 私を、私を、暗闇から引き上げてくださって……!」


 これ以上にないほど、魂からの感謝。

 俺は、彼女の細い手を力強く握りしめ、抱き起こした。


「君はもう、『呪い』なんて呼ばれる必要はない。君は、俺という管理者の横に立つにふさわしい、本物の『聖母メイン・パートナー』だ」


「さあ、行こうか。ここから先は、俺と一緒に新しい世界のルールを作り上げるんだ」


 かつて俺を無能と呼んだ『暁の剣』の勇者たちが、喉から手が出るほど求めていた【最高の聖女】。

 それが今、俺の唯一の理解者パートナーとして、ここに誕生した。


 さて。最強の聖女と、伝説の黄金龍。

 これで「初期開発チーム」は完全に揃った。


 次は、俺たちの理想を具現化するための、広大なサーバー(土地)を手に入れる番だ。


第3話をお読みいただきありがとうございます! ついにヒロイン・セシリアが登場しました。 「聖女様、可愛い!」「さらなる無双が見たい!」 と思っていただけたら、【☆☆☆☆☆】 を 【★★★★★】 への応援、何卒よろしくお願いいたします!

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