第27話:掌握した経済と、跪く王都
第27話:掌握した経済と、跪く王都
「……あげる、という選択肢はないな」
「そもそも、彼らにとって俺は『価値のない雑用』だったはずだ」
「無能な人間の作った食料なんて、プライドが高くて喉を通らないんじゃないかな?」
アレンがSランクギルド『暁の剣』を「無視」という裁きに処してから数日。
世界は今、システム全体の整合性が揺らぐ『資源データの枯渇』に直面していた。
アセティアの外側では、作物は一晩で枯れ果て、家畜は理由もなく病に伏し。
大陸全土で凄まじい食料不足とハイパーインフレが発生していたのだ。
だが、最強の管理者アレンが統治する独立都市【アセティア】だけは例外だった。
「…… Allen様。本日も全市民に対し、焼き立てのパンと新鮮な野菜が配給されました」
「在庫は、依然として消費を上回るペースで潤沢なままです」
セシリアが、誇らしげに最新の在庫報告書を読み上げた。
アレンの庭先には、独自に構築した『物質複製プラント』が静かに稼働している。
以前、神々の攻撃エネルギーをリサイクルして蓄積した莫大な余剰魔力。
それを直接「パン」や「肉」という物質データへと変換し続けているのだ。
「……一度最適化(定義)した『最高品質の食料』を、無限ループで複製しているだけだよ」
「リソースさえあれば、この国が物理的に飢えることは……万に一つもあり得ない」
アレンは窓から、豊かさと笑顔に満ち溢れたアセティアの街並みを眺めた。
その一方で、アレンを「無能」と見なして放逐した王都『ルミナス』は。
今や生きる屍が彷徨う奈落の底と化していた。
「……王よ。……備蓄が、もう一食分すらありません……ッ!」
「国民の暴動も、もはや騎士団の剣では抑えきれぬ段階です……ッ!!」
王都の大臣が、ボロボロに汚れた格好で、アセティアの門を必死に叩いていた。
かつてアレンに「金食い虫の雑用め」と吐き捨てたあの男が。
今は精霊モニターに向かって、涙と鼻水を流しながら絶叫している。
「……アレン殿! いや、アセティアの至高の賢者様っ!! お願いだ、食料を……!」
「飢えた民に食料を分けてくれ……ッ!! このままでは王都が全滅してしまうっ!!」
「 Allen様。……どうなさいますか? かつてあなたを奴隷のようにこき使い、放り出した方々ですよ」
「俺が慈悲をあげる、という選択肢はないよ。……そもそも、彼らにとって俺は『無能な翻訳家』だ」
「アセティアのパンは、俺のシステムの一部だ。無能な男が作った汚い食い物なんて、高貴な彼らにはお似合いじゃない」
アレンは拡声器のスイッチを入れ、泥を啜る大臣へ向けて冷徹な声を届けた。
『――大臣。聞こえるか。君たちは以前、俺のスキルを「価値のないコスト」だと言ったよね』
『――今のパン一欠片すら生み出せない状況も、君たちにとっては「想定外のコスト」なのかな?』
「そ、それは……ッ!! あの時は、我らも……愚かにも真実が見えていなかったのでございます……ッ!!」
「頼む、いくらでも払う! 宝物庫をすべて空にしても、領土の半分を割譲してもいい!! だから、パンをっ!!」
『いらないよ。君たちの金貨も宝石も、俺にとっては「陳腐化したゴミデータ」に過ぎない』
『――どうしても命が欲しいなら、条件は唯一つだ』
アレンはモニター越しに、王国の全プライドを粉砕する「利用規約」を突きつけた。
『――王自ら、アセティアの噴水広場まで、泥にまみれて徒歩で来い』
『――そして全市民の前で、「私は無能でした。アレン殿の技術なしでは、国民一人守れない無価値な人形です」と全世界に認めろ』
『――それが、君たちが支払うべき、最低限のライセンス料(命の値段)だ』
「……そ、そんな……ッ!! 王に、そのような辱めを……ッ!!」
『嫌なら結構だ。アセティアのパンは、君たちの腐ったプライドより数万倍は価値があるんでね』
『――セシリア、通信を切ってくれ。これ以上はティータイムの香りを損なう。ノイズは不要だ』
通信が途切れた瞬間、外で大臣が膝から崩れ落ちるのが映し出された。
さて。王の虚飾に満ちたプライドという「ゴミデータ」が。
飢餓という物理的な『強制終了』に屈するまで、あと何分掛かるかな。
王のプライドという「ゴミデータ」が、パン一欠片の価値に屈する瞬間……。
アレンの経済掌握(リソース管理)の恐ろしさが際立つ回でした。
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次回、ついに「神のインフラ」そのものが停止します。
明日19:00、旧世界のサービス終了をお見逃しなく!




