第20話:第1回・世界のデバッグ報告会
第20話:第1回・世界のデバッグ報告会
「……ようやく揃ったか。地上の『旧式OS』を動かしていた、マニュアル通りの管理者たちが」
大陸全土に『論理の盾』を展開し。
「全指導者への強制招集」の声が空を震わせてから、わずか二十四時間。
天空都市【アセティア】の大広間には、異様で圧倒的な光景が広がっていた。
魔導船を連ねて現れた北の軍事王。
聖騎士団を盾に震えながら列席する西の教皇。
そして規格外のアレンに、希望と恐怖を入り混じらせる南の王たち。
かつての最高権力者たちが今。
一人の「元・翻訳家」の前に、叱責を待つ生徒のように座していた。
会議――いや、アレンによる『仕様説明会』は。
開始一秒で他を寄せ付けない独壇場となった。
「……あり得ん。我々が数千人の命を犠牲にして、ようやく解明した古代術式を……」
「この男は、これほどまでに鮮やかに書き換えてしまったというのか……」
最前列に座る老王が、震える手で杖を握りしめた。
アレンの背後には、巨大な投影ディスプレイが展開されている。
映し出されているのは、大陸中に潜んでいた『監視スクリプト(災厄の種)』。
それがアレンの手で次々とハイライトされ、無情に消去されていくログだ。
「救った、というよりは……。単に、稼働を邪魔する『有害なコマンド』をパージしただけですよ」
「今日、皆様をここに強制招集させたのは、他でもない」
「この大陸全土の『限定管理権』が、今この瞬間、正式に私……【アセティア】へと移譲されたことを公告するためです」
アレンが冷徹に告げると、広間は地鳴りのような驚愕に包まれた。
「私は君たちの支配といった『面倒な管理』には興味がありません」
「ただ、これからはこの大陸全体を、私の『プライベート・サーバー』として保護することにしました」
「君たちは、これまでのルール通り国を治めて構わない。ただし、アセティアを世界の『マスター・プロバイダ』とし、その規約に従ってもらう」
「これに異論のある方は、今ここでこの部屋のログから退場(BAN)していただきます」
それは、実質的な「世界のOS管理宣言」――。
だが、それは同時に、天災や魔軍に怯え続けてきた人類にとって。
初めてもたらされた、物理法則レベルでの「絶対的な安寧」の約束だった。
「…… Allen様。すべての方々が、署名(電子サイン)を完了されました」
セシリアが、各国の国印が押された「新世界・利用規約」を恭しく受け取った。
彼女の瞳には、奴隷商の檻で絶望していた少女の影はもうない。
世界の管理者を支える、誇り高きパートナーとしての気高さが宿っていた。
アレンは窓の外、広大な大陸を黄金色に染め上げる夕日を眺めた。
自分がかつてゴミのように追放されたあの王国。
今や一介の『地方自治体』程度の魔力すら維持できずに喘いでいる。
レオンたちが、自分たちが捨てた「翻訳家」が世界の頂点に立ったという事実に。
泡を吹いて気絶している様子が目に浮かぶようだ。
「……さて。これで地上のインフラ整備は一段落だ。セシリア、今夜は祝杯を……といきたいところだが」
「やはり『上の連中』が、俺のデバッグの手速さに焦り始めたようだよ」
アレンの網膜には、空の向こう側――。
神界のサーバーから送られてくる、膨大な「エラー」が点滅し続けていた。
世界が、また一段上のステージで激変しようとしている。
「……ふむ。次は直接的な、物理的な『ハードウェア解体(天変地異)』か」
「上等だ。受けて立とうじゃないか。俺のサーバーが落ちるか、君たちの旧いプランがクラッシュするか……」
「さあ、デバッグ勝負の続きを、始めるとしよう」
アレンの瞳には、かつて前世で不夜城のオフィス。
徹夜のデバッグに挑んでいた時と同じ、冷徹で楽しげな『管理者の闘志』が宿っていた。
神の理を書き換え、新世界をデプロイする、彼の孤独で最強の戦いは――。
ここからさらに、苛烈に、そして美しく加速していく。
第20話までお読みいただきありがとうございます!
かつての国王たちがアレンの前に跪く「仕様説明会」、楽しんでいただけましたか?
一国の利益を超え、世界そのものをメンテナンスする管理者の視点こそがアレンの強さですね。
「アレンの規約、自分もサインしたい!」と思った方は、ぜひ評価(☆☆☆☆☆)での応援をお願いします!
次回、さらに激化する「神界」とのデバッグ勝負。
明日19:00、衝撃の新展開をお届けします!




