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ダストワールド ~全宇宙のゴミ箱と呼ばれる世界の物語~  作者: 灰色
最終話 レウルとリトの過去と今とこれから
34/41

3 S級グラーク・戦艦タギサ

 眩しく輝く太陽に青い空、白い雲。肌や髪を撫でる潮風……。

 それが常夏の大陸エスタスの自慢とも言える風景だった。

 だが今、その空には一つの巨大な戦艦が浮いていた。

 赤い亀裂から這い出て来たソレは、レウルがいるリゾート街ゼメアを静かに見下ろしている。

 すでに、その戦艦からは無数の小型戦闘機が出現していた。


「レウル様! あれはまさか……」

「他のグラークとは明らかに違う姿……」


 ジンから連絡を受けたケイとエニが、屋上に居たレウルとリトと合流する。

 空に浮かんでいる巨大戦艦に息を飲んでいた。


「ああ、久しぶりの大物。S級だ。ケイ、エニ。お前らの力も頼らせてもらうぞ」


 ケイとエニは真剣な表情で頷いた。

 その時、リセイユ国転移物対策組織第1支部の司令部から連絡が入る。


『レウル支部長、こちら司令部です。全指揮権はすでにこちらにあります』

「分かった。世界の状況を説明しろ」

『はい。まず、大型S級グラークはミーメ様からタギサと命名。タギサが小型戦闘機を展開したと同時に、全世界で同じ小型戦闘機が転移して来ました』

「そうか。援軍はこれそうか?」

『各国はまず自国を守ってからになります。可能ではありますが、時間は掛かるかと。各国支部長も自国の様子を見てからになるでしょう』

「だな。うちんとこは大丈夫か? 俺とジンがこっちに居て手薄になってる」

『問題ありません。小型の数だけのグラークなんて、普段ジン副支部長に鍛えられている我々の敵ではありません。支部長も副支部長もそちらに注力して下さい』

「実に頼もしい限りだな」


 誇らし気にレウルが言った。


「レウル様、グラークに動きがあります。そろそろ攻撃してきそうですよ」


 レウルたちがタギサを見ると、小型戦闘機がせわしなく動き始めていた。


「ケイは敵の迎撃を」

「承知いたしました」

「エニは逃げ遅れている民間人の避難に協力してくれ。ただ、エニはテンタイ職員でも警察でもない。無理はせずシェルターに避難してくれても良い」


 エニは首を横に振る。


「グラークは、ダストワールドに住む全ての者の敵。私にも戦う力がある以上、最大限抗いますわ」

「……そうか、感謝する」


 エニに笑顔をレウルが見せた時、司令部から通信が飛ぶ。


『支部長! 敵、小型戦闘機が攻撃を開始しました!!』

「防衛機構を発動させろ。まずは数を減らして民間人の避難を優先させる」

『承知しました! エスタス大陸、全防衛機構を稼働させます!』


 結界の張られている高い建物の中央や、広い道の中から小さな砲塔が現れると、小型戦闘機に目掛けて魔法弾の攻撃が開始された。

 周囲に銃撃と爆発音が響き渡る……。

 そして屋上にいたレウルたちの周囲を無数の小型戦闘機が取り囲んだ。

 小型戦闘機にある銃やミサイルの全てがレウルたちに向いている。


「ケイ、エニ蹴散らせ」

「お任せ下さい」


 ケイが優雅に頭を下げた。

 次の瞬間、レウルたちを囲むように無数の手が現れ、それら全てから青い光線が発射される。

 エニは背中から生えている蝙蝠の様な翼を、巨大な刃に変えると切り裂いていった。

 一瞬で周囲に居たグラークは赤い粒子となって消えいく。


「俺はあのデカブツの注意を引き付ける。後は任せたぞ」


 レウルが風の精霊のアイレを呼ぶと、宙に浮かんだ。

 そしてリトは巨大な銀色の蛇に変わり、ケイたちと別れて行動を開始しする。


 一方市街地にはセルメとアレンが所属する、10人ほどの第7戦闘部隊が周囲の民間人の避難を終えていた。


「セルメ隊長、周辺民間人のシェルターへの移動は完了しました」

「そう、お疲れ様。周辺に残っている民間人は?」

「居ません。レウル支部長とジン副支部長の指示が早かったおかげで、ほとんどの民間人はすでにシェルターに避難してあります」

「分かったわ。しかし……まさかアレと鉢会うなんてね」


 セルメと隊員たちが上空に浮かんでる巨大戦艦タギサを見る。


「正直、アレは我々では太刀打ちできませんからね」

「でも私たちは幸運ね。今ここにはジン副支部長に、何よりレウル支部長が居る」

「きっと支部長はアレになるんですよね? カッコ良いですよね、アレ。人によっては不気味って言いますけど」


 アレンがセルメに言った。


「そうね。でも、小さな子供には結構人気なのよ。怪獣だ! ってね」


 それを聞いた隊員の男性が口を開く。


「また、特需が生まれますね。支部長がアレになると、後で限定品が出るんですよねぇ。また子供にフィギュアをせがまれそうだ」

「良いじゃない。売り上げは支部の活動資金にもなるしね」


 そしてセルメが小さく笑った時、ジンが現れた。


「普段俺に訓練とか任せてぐーたらしてんだ。それくらいは貢献してもらわんとな」


 ジンを見たセルメたちが一斉に敬礼をした。


「他国と本国から援軍が来るには時間が掛かる。ここにも警察とテンタイの部隊は居るが、戦闘能力ではお前らの方が高い。頼りにするぞ」

「はっ、お任せ下さい」

「だがレウル支部長が居る限り、俺たちのする事は専守防衛で良い。タギサには基本的に手を出すな」

「……力及ばずの自分が悔しく思います」


 セルメが空に浮かぶタギサを睨む。


「こればっかりは仕方ない。支部長クラスは基本的に能力が化け物じみているからな。もっとも、力が強いから支部長って訳じゃない」

「そうです。我々は支部長が大事な時はいつも先頭に立っているのを知っています。その背中をいつも見ている」

「そうだ。だからこそ、アイツは俺たちの国の支部長だ。やる事は二つ。逃げ遅れた民間人の保護と、支部長の負担を減らすために、敵の数を減らす」


 セルメやアレン、他の隊員たちはジンの言葉に頷いた。

 その時、ジンたちの周囲を複数の小型戦闘機が接近して囲む。


「うぜぇな」

「邪魔ね」


 ジンとセルメが同時に呟く。

 セルメの髪が複数の触手になると小型戦闘機を貫き、ジンが刀を抜いた瞬間、複数の白い剣閃が戦闘機を真っ二つに切り裂いた。

 一瞬で周囲の敵が消え去り、静寂が訪れる。


「じゃあ、お前たちは好きに動いてくれ。何かあったら連絡しろ」

「はっ!」


 セルメたちが敬礼すると、ジンが天高く跳躍する。

 上空に無数の白い剣閃が一瞬で飛ぶと、周辺の小型戦闘機の全てが赤い粒子となって消えた。


「ジン副支部長もメッチャ強いですよね……」


 その様子を見てアレンが呟く。


「そうよ。でも、支部長クラスが本当に次元が違うってだけ。存在自体を疑うくらいにね。さぁ、私たちも動くわよ」


 セルメに隊員たちが頷く。


「私の隊が最優先で守るルールは一つ。『命を賭けて守り、生き残る事』いいわね!」

『はっ!!』


 隊員たちが一斉にセルメに敬礼し、行動を開始した。


******


 レウルはアイレの力で宙に浮き、海の上に佇んでいるタギサに近づきながら複数の精霊を出して攻撃をしていた。

 すぐ近くでは全長50メートルほどの大蛇になっているリトも戦っている。

 レウルが視線を街へ見下ろすと、いくつかある大きな水球から白い触手が現れ、小型戦闘機を破壊していった。


「セルメとアレンは良いコンビになってるな」


 他の場所では、ケイの攻撃である青い銃弾や光線、エニの魔法や巨大化した翼の刃が次々と小型戦闘機を倒していく。

 しかし、敵の母艦であるタギサからは、新たに小型戦闘機がいくつも出現し、減るどころか増えていた。


「司令部、アイツのコアの位置は分かるか?」

『反応は中央です。なお、タギサには主砲と数多くの副砲と思われる武装が確認できます』


 通常のグラークとは違い、特に強力な個体であるS級グラークなどには、心臓に当たるコアがあった。

 コアを破壊しない限り何度でも再生する特性がある。

 ただし本体を倒せば、他の小さな個体も同時に消滅する。


「とりえあず、近づいてみるか……」


 レウルが周囲の小型戦闘機を精霊たちでなぎ倒しながら進み、戦艦タギサの正面まで来た時だった。

 タギサの正面の窪んでいる部分に強く赤黒い光が集まる。


『タギサの正面に超高密度の魔力反応! 主砲を撃つ気です!! 斜線上に逃げ遅れた民間人がいます!』


 真正面にいたレウルが舌打ちをする。

 その背後にはホテルや住宅街があった。


「やらせるか! 守れ!!」


 レウルの叫びと共に、精霊や英霊たちが一斉に正面に集まる。

 次の瞬間、タギサ前方にある主砲の前に、幾重にも重なる魔法陣が現れ、一本の矢の形をした魔力が放たれた。

 優に200メートルほどある赤黒い巨大な矢の前に、レウルの召喚したモノたちが一点に集まる。

 矢の進行を防ぐが、ダメージで現世に留まれなくったモノたちが、一つ一つ還って行った。


「クソがっ! これは……ヤバイ。防ぎきれないか……」


 額に冷や汗を掻きながらレウルは呟く。

 その時、


「お゛ぉぉ……お゛おぉおぉお゛!!」


 亡者ような呻きがレウルの耳に届いた。

 50メートルはある大蛇のリトの身体が、さらに倍ほど膨れ上がる。

 矢の下方からリトが上方に向けて突進した。

 さらに海からは一本の巨大な白い触手が現れ、リトと同じように矢を打ち上げる。

 矢は斜め上の上空へと軌道変えて飛び、やがて赤黒い光を放って半径100メートル近い爆発を起こした。


「リト、セルメ助かった……」


 レウルがその光景に息を飲む。


『タギサ、主砲から再び高魔力反応です!』


 タギサの主砲部分に再び光が集まり出す。


「なんだと!」

『先ほどよりも高い魔力数値を出しています。ただ、発射するには時間がかかるもよう』

「……」


 再び赤黒い光がタギサの主砲に集まり始め、レウルは睨みつけた。

 質量が違い過ぎて、並の攻撃では止める事も防ぐ事もできない。


「レウル……」


 その時、現世で姿を維持できなくなり、消えかけているスオがレウルに声をかける。


「スオか」

「……もう、分かっていますね?」

「ああ、分かってる。やるしかねぇな」

「なら結構。再び喚ばれる時を待っていますよ」


 そう言って、スオだけではなく、レウルが召喚していた全ての存在が消えた。

 そして、レウルが静かに口を開く。


「司令部。支部長命令だ。『コード:リト』を発令しろ」

『え? 本当にアレを発令するんですか!?』

「もし、次主砲が発射された場合の被害予測は?」

『それは……恐らく先ほどよりの大きな爆発が起こり、周囲はクレーターになります』

「シェルターは?」

『……壊滅します』

「なら、やる事は簡単だ。アレをどうにかする。急げ!」

『承知しました』


 司令部のオペレーターが、息を整えると改めて口を開いた。


『エスタスに居る全ての者に連絡です。リセイユ国転移物対策組織第1支部支部長のレウルからコード:リトが発令されました。注意して行動して下さい!』


 けたたましいサイレンと共に、何度か同じ内容がエスタス大陸中に流される。


「さぁ、リト……一つになろう」


 レウルが呟く。その目の前には大蛇のリトがレウルを見つめていた。

 ゆっくりとリトが大きな口を開けてレウルに近づく。

 口の中から下半身は蛇のように繋がり、上半身だけ人型のリトが居た。

 服などは何も着ずに半裸だが、長い髪の毛で身体のほとんどが隠れている。


『始めよう、救済を……』


 レウルとリトの言葉が重なり……レウルがリトを抱き締めると巨大な蛇に飲み込まれ、黒い卵のような姿へと変わった。


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