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ダストワールド ~全宇宙のゴミ箱と呼ばれる世界の物語~  作者: 灰色
最終話 レウルとリトの過去と今とこれから
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2 バカンスの終わり

 リトは晴れ渡った空を見つめながら呟く。


「……小さい? ううん、多分遠くから?」

「声? どんなだ?」

「なんだろう。良く知っているような、知らないような?」

「なんだそりゃ。今もか?」


 リトが首を横に振った。


「みんな何か聞こえたか?」


 レウルに問われたケイたちは首を横に振った。

 暫く空を見つめたリトはやがて首を捻る。


「ごめん、勘違いだったかも」

「ま、そういう時もあるさ」

「……そうだね。じゃあ、私も日焼け止めを塗ってもらおうかな」


 そして、リトの姿が50センチほどの銀色の蛇になった。


「そこは水着姿じゃないのかよ!」


 レウルは思わず叫ぶが、リトはレウルの腕に器用に巻き付く。


「まぁいい、みんな塗りたくってやるぜ」


 そしてビーチチェアで横になったケイとエニに、レウルは日焼け止めを背中に塗りまくった。

 蛇の姿になって腕に巻き付いているリトにも塗った後、レウルもビーチチェアに寝そべる。


「そういや、調査はどうだったんだ?」


 自分で日焼け止めを塗っているジンがレウルに聞いた。


「異常無しだな。今回はセルメとアレンの協力があって、水質に関してはかなり早く正確に調べる事ができた」

「さすが水に強い二人だ。伊達に今も海で遊んでるだけじゃねぇな」


 海では相変わらず白い触手が海から生えている。

 それは数を増し、捕まっている人物も増え、賑やかな声を発していた。


「もはやちょっとしたアトラクションだなありゃ。あ、エニさん、ありがとう」


 日焼け止め塗り終えたジンがエニに返す。


「まぁ、良いんじゃねぇか。戦闘部隊は命懸けが多い。楽しめる時には楽しまないとな」

「そうだな……。たまにはこうやってのんびりするのもいいな」


 潮風がレウルたちの頬や髪を撫で、周囲からは賑やかな笑い声が聞こえる。

 平和そのものだった……。


「……レウル支部長とこの世界も、こんな海があったのか?」


 不意に、ジンがレウルに聞いた。


「お前、俺が居た世界をどう思ってんだよ。普通に海くらいあったっつうの」

「あんまりあんたは、自分の世界の事は話さないからな。ちょっと気になっただけだ……無理には聞こうとしねぇよ」

「……よくある世界だよ。剣と魔法。勇者に魔王。人間にそれ以外の種族。珍しくもない世界だ。ただ……平和じゃなかった。それだけだ」

「何で平和じゃなかったんだ?」


 聞かれたレウルが自嘲気味に笑う。


「争うのが好きだったんじゃねぇか? 一つの戦争が終わっても別の戦争を始めるくらいにはな」

「どんな戦闘種族だよそれ」

「……生きる権利、幸せになる権利、守られる権利。そんな下らねぇ事を声高々に叫ぶ奴が多かったな」


「レウル様、命には生きる権利が無いと思われているのですか?」


 ケイが問うと、エニとジンもそれに続いた。


「幸せになる権利はくだらない事なのでしょうか?」

「弱い奴は守られる。それはこの世界もそうじゃねぇか?」

『違う』


 レウルとリトの声が重なる。

 驚いてケイたちがレウルを見ると、いつの間にか赤い線の入った黒のワンピース水着姿のリトが、レウルにくっついて一緒に寝そべっていた。


『死にたくないから他者を犠牲にして、ただ全力で生きる』

『幸せになりたいから、時に誰かを不幸にしてでも幸せになる』

『救われるのは、救いたいと思ってくれる人がいるから』

『そこにある、償えない罪を忘れてはいけない』

『それを忘れた時、命はどこまでも傲慢になる』

『自分は何をしても許され、生きるべき命なのだと』


 レウルの言葉を、ケイたち三人は何も答える事ができずにいた。

 暫くてレウルが口を開く。


「ま、それが俺たちが個人的に思っている事だ」


 レウルだけの声に戻っていた。

 そして、後に続くようにリトが言う。


「私たちは許せなかった。命を当たり前のように消費し、それを当然だって思う存在が。私たちは救いたかった、そうやって死んでいった……殺された存在を」

「元の世界で魔王とか言われても仕方ねぇくらい、嫌いな奴だけ殺しまくった。皮肉な話、この世界ではその力で守る事ができる。満足してるよ」

「……ま、この世界はあんたらを否定しない。それだけは確実だな」


 そう告げたジンの声色は優しかった。

 

「折角、綺麗な海に居るというのに、何を暗い話ばかりしているのですか」


 不意に声が聞こえると、現れたのは黄色い球をした土の精霊のスオだった。

 やがてその姿は球状から、玉座に座った短髪茶色の少年の姿に変わる。


「なんだよスオ。いきなり現れたと思ったらその姿になるなんて」


 レウルが出す精霊は本来は別の姿があった。

 普段の球は省エネ状態の弱体化した姿であり、本来の姿は魔力の消耗が激しい。

 通常では長時間現世に顕現するのが難しいため、あまりその姿を現す事はなかった。


「スオさんの本当の姿……始めて間近で見ましたわ!」


 スオの本来の姿を見てエニが嬉しそうに声を上げた。


「普段は省エネで球の姿だからな。本来はあの姿だが」


 スオは宙に浮いている玉座をユラユラと揺らしながら、レウルたちを見ていた。

 姿は少年と幼いが、その視線や雰囲気は落ち着き、威厳さえある。

 精霊たちの年齢は見た目に関係なく、ほとんどが100歳は超えていた。


「若者が海で集まって、ただ話をするだけとは嘆かわしい」

「お前も遊びたいのかよ」

「私の年齢を考えなさい」

「そいや、お前ショタジジイだったな」

「そのセリフ懐かしいですね。最初に会った時に言われましたか」


 レウルが初めて契約したのがスオであり、他の精霊たちのまとめ役でもあった。


「私と初めて会った時『なんでショタジジイなんだよ。美人な女性とチェンジで』と、露骨に不満を言ってましたね」

「……そうだっけ? いやぁ、そんな昔の事は忘れたわ」

「そうですね。忘れるくらい長い付き合いになりました。なら、忘れたまま時には楽しむのもいいでしょう」

「楽しむねぇ。泳ぐのはダルいな」

「やれやれ、それ以外にも海と言ったらコレがあるでしょう」


 と、スオが手を前にかざす。

 レウルたちと少し離れた場所に、3メートルほどの立派な砂の城が一瞬で出来上がった。

 砂の城を見た多くの人から感嘆の声が上がる。


「ジジイでもこれくらいできるのですよ。もちろん、若いレウルはもっと凄い物が作れるのでしょう?」

「……あったりめぇだ。ナウでヤングな力を見せてやんよ」


 レウルとリトが立ち上がった。

 

「期待していますよ。レウル、リト……楽しめる時は精一杯楽しみなさい」


 スオは目を細めて笑うと姿を消す。


「うし、ジンたちも手伝ってくれ。アイツをあふんと言わせるもん作るぞ」

「あふんと言わせてどうすんだよ。だが、砂遊びくらいなら仕事に支障はないか」


 ジンが起き上がると背伸びをしながら砂浜へと歩き出した。


「では、何を作りましょうか?」

「レウルの像でも作ります?」

「それ良いかも。ムキムキマッチョなレウルでも作ろう」


 ケイ、エニ、リトも話し合いながらジンと合流する。


「スオ……サンキューな」


 レウルは一人、後ろでその様子を眺めて呟くと、


「おーい、どうせなら超絶イケメンで頼むぞー」


 みんなが集まり、すでに巨大になっている砂山へと向かった。


******


 そして遊びまくったレウルたちが帰る日……。

 砂浜には巨大な砂の城と、そのすぐ近くに同じくらいのレウルの砂の像がある。

 レウルの像は原型を留めていないくらいマッチョな美形にされ、なぜか城を破壊しようとしている格好で作られていた。


 リゾートホテルは自国へ帰る移物対策組織の職員で賑わっているが、そこにレウルの姿はなかった。

 時間も押している事から、ジンが探し始める。

 見つけた場所は、屋上ラウンジとなっているホテルの屋上だった。

 その隣にはリトもおり二人共、空を見つめている。


「こんな所にいたのか。みんなもう帰り支度してるぞ。あんたも早くしろよ」

「……」


 ジンが呆れながら言った。

 しかしレウルとリトは微動だにせず、空を見つめ続けていた。

 その隣で立ち、ジンも空を眺める。


「なんだ? 何か珍しいもんでも見えるのか?」


 特に珍しい物も見えず、ジンが空からレウルたちへと視線を移した。

 レウルたちの表情は険しく、ジンがそれを見て目を見開く。


「……レウル支部長、一体何が起こる?」


 さっきまでの軽口ではなく、ジンの声色は鬼気迫っていた。


「ごめんね。気付くのが遅れて。アレが来るよ。それも、強いのが」


 答えたのはリトだった。

 そしてレウルが口を開く。


「ジン、今すぐ本国の司令部に連絡を取れ。来ている全職員に第一種戦闘配置を。民間人をすぐシェルターへ避難させろ……急げ!!」


 空を見ていたレウルが怒鳴りながらジンを睨みつけた。

 ジンが舌打ちをして、本国の司令部へ連絡を付けようとした時、警報が鳴り響く。


『こちらエスタス転移物対策組織支部。ミーメ様より、グラーク転移の報告が入りました。対応する組織は民間人のシェルターへの退避を急いで下さい!』


 少し前の静寂が嘘のように慌ただしくなる。

 ジンが来ている職員に指示をとばし、レウルがエスタスの転移物対策組織と連絡を始めた。


「こちらリセイユ国転移物対策組織第1支部、支部長レウルだ。副支部長を出せ。今エスタスのゼメアに、俺と職員100人が居る」

『レウル支部長!? 承知しました』


 オペレーターは慌てて答え、暫くすると年配男性の声に変わった。


『副支部長のグレッグです』

「現時刻を持って、こちらが全権限を持つ。警察及び他の協力者と民間人の避難誘導を優先しろ」

『承知しました。あとミーメ様から追加の情報があります』

「なんだ?」

『到着予定は10分後。さらに……S級が来るとの事です。そこ、ゼメアに』


 緊迫したグレッグの声に、レウルは小さく笑った。


「みたいだな。S級は俺に任せて他には手を出させるな。専守防衛に徹しろ。いいな?」

『承知しました。ご武運を』

「そっちもな」


 レウルが通信を切る。

 少し前まで居たジンはすでにおらず、声を上げ職員へ指示を飛ばしていた。


「……来るよ。私たちの敵。そして、救済する存在が」


 空を見ているリトが呟き、レウルは空を見上げた。

 白い雲に澄んだ青い空……。

 突如そこへ赤い亀裂が走り、中からグラークが現れた。


「S級は久しぶりか。しかし、でけぇな……」


 それは今までの小型ではなく、全長500メートルはある、巨大な空飛ぶ戦艦だった……。


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