2 争奪戦
エニの協力で、第1支部職員を対象とした出会い系パーティーを開く事になった。
決まった数日後、支部職員全員のストフォンにメールで重要連絡が入る。
『第一支部職員限定。出会い系パーティー開催について』
『モニアクロノ主催。料金は無料。ただし注意事項を必ず読む事』
この連絡が入った時、支部内は一瞬だけ時が止まっと後に言われる……。
そして連絡を入れた翌日の昼休み。
アナウンスと共に支部にあるモニターには、レウルとエニの姿が映し出される。
椅子に座っているレウルはどこか緊張気味で、その後ろに立っているエニは笑顔でレウルの両肩に手を置いていた。
「あー、テステス。よし、繋がってるな。メールで連絡した通り、最近俺の事で問題が起きているので、その対処をする事にした」
レウルとエニの姿に、ほとんどの職員がモニターへ釘付けとなっている。
「まぁ、なんだ。俺への嫉妬が凄いらしい。で、それを少しでも払拭する為に、エニの協力の元、支部職員限定でパーティーを開く事にした」
見ている職員たちが騒めき始める。
「モニアクロノが全面的に協力しくれるので、変な事はしないように。後はエニに説明を任せる」
レウルが視線を後ろで立っているエニに移すと頷いた。
エニは両肩に置いていた両手を、後ろからレウルを抱き締める様に前へと移動させ、満面の笑顔で口を開いた。
「皆様こんにちは。モニアクロノ代表取締役社長、そしてレウルの恋人のエニです」
「……」
レウルは何も言わず、どこか達観した表情をしていた。
職員の鋭い視線がモニター越しにレウルに突き刺さる。
「ある程度の事はすでにメールと専用ホームページでお伝えしておりますが、改めて大まか概要をお伝え致します」
『恋人がいる人、既婚者の参加禁止』
『人数は男性女性50人ずつの合計100人』
『首都にあるホテルの一角を貸し切りで行う』
『料金は無料。服装は自由』
『本人のみ応募可能で他薦、譲渡などは無効』
『アルコール類は出ず、禁止』
『暴力、暴言など迷惑行為は即退去か、説教部屋行き』
『個人間での連絡交換は可能。ただし、何かあっても責任は本人持ち』
など、他にもいくつかの説明が支部モニターに映し出された。
職員たちはモニターやストフォンから公式ホームページで確認している。
「明日の昼12時から公式ホームページにて応募受付を開始します。支部の人数に対しては少ないかとは思いますが、どうかお許しください」
そこまで言うと、エニはさらにレウルと密着し顔をすぐ傍まで寄せた。
「皆様にも私とレウルのような、良き出会いがある事を心から願います」
そして微笑みながらエニは放送を終了させる。
放送を終えたレウルとエニが居る放送室では静寂が訪れていた。
「……何であんな煽る様な真似をしたんだよ?」
背後からエニに抱き締められたままのレウルが口を開く。
「わざとです。今回は職員の方の嫉妬を払拭させる必要があります。当日に感情を爆発させて、綺麗さっぱりとしていただきたかったので」
「それで当日に何かあったらどうすんだ?」
「だからこそ、レウルとケイさんを会場にお呼びするのです」
「まったく……俺の恋人はシゴデキで嬉しいよ」
「それは良かった」
そしてエニが目を細めて笑うと、レウルに口付けをした……。
一方、放送終了後の支部内は大いに盛り上がっていた。
主にレウルへの嫉妬で……。
「どうして見せつけるんだよ! これで落ちたら絶対支部長を殴ってやる!」
「今回ばかりは応募期限ぎりぎりまで、本気で神に祈るわ!!」
「今まで我慢してたけど、支部長はやっぱおかしい! 何であんなにモテるんだよ! 人生勝ち組じゃねぇか!!」
「ぜってぇ受かって恋人を作ってやる! 支部長よりも幸せになってやるからな!」
と、様々な怒号が支部内に飛び交い、未だかつてない熱気に包まれていたという……。
******
その日の夜。
アレンは自室のパソコンと睨めっこしていた。
パソコンのモニターには「転移物オークション」が表示されている。
「なんか恋愛運が良くなるもんないか……」
オークションに出されている商品をアレンはつぶさに調べていた。
その時、ある商品に目を止める。
「恋愛成就を助ける天使? 異世界ではこんなキャラクターがあるのか……」
アレンが現在の値段を見た。
「う……マジか。こんな小さなもんに3万オルもするなんて。みんな必死すぎじゃない?」
ダストワールドの通貨単位は世界共通で「オル」だった。
1、5,10、50、100と硬貨。
1000、5000、10000はお札がある。
「しかし、もしかすると本当に効果が……いや、まだ受かっても無いのに買うのもなぁ」
と、アレンが迷っている間にも入札期限が近いからか、値段はどんどんつり上がって行く。
「うぅ……ええいままよ! 仮に今回がダメでも、他でなんか良い事あるかもしれねぇし。やってやるぜ!!」
アレンは競り落とすために値段を吊り上げて行く。
不思議な事にアレンが値段を上げる度に、誰かがさらに入札していった。
「おいおい、早く諦めろよ……誰だよ、こんなもん他に欲しがってる奴は!」
入札している人物のニックネームを見る。
そこには「私は知っている」と表示されていた。
「何だこのふざけた名前は! 知ってるなら必死な俺に譲れよ!」
そしてアレンのニックネームは「美味しいお水」だった。
その後も熱い入札合戦は続いて行き、やがて入札期限の時間が来る。
「……か、勝った。俺は勝ったぞ!」
アレンは叫びながらガッツポーズをした。
そしてパソコンに映し出されている最終入札金額を見る。
『10万オル』
「……」
そっと、アレンはそこから目を逸らす。
そして力なく机に突っ伏し、
「だ、大丈夫……きっと良い事ある。絶対に……」
疲れと勝った解放感でそのまま眠りに着いた。




