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ダストワールド ~全宇宙のゴミ箱と呼ばれる世界の物語~  作者: 灰色
第3話 恋のキューピッドは助けたい
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1 パーティを開こう

 食堂が大いに盛り上がった翌日……。 

 そんな事が起こっていた事も知らない支部長室では、レウルと男性のケイがデスクワークをしていた。


「支部長、許可をくれ。あと、厄介事もある」


 ジンが資料を片手に支部長室へ入って来る。


「許可って何のだ?」

「最近転移して来た物で安全性が確認されたから、アレに出そうと思ってな」

「へぇ、どんなのが来たんだ?」


 ジンに手渡された資料をレウルとケイが読んだ。


「変な形してんな? 何だこれ?」

「あまり見た事がありませんね。天使……でしょうか?」


 それは布一枚をまとった金髪の天使が弓矢を構え、子供の手に収まるくらいの小さなアクセサリーだった。

 そして矢の先端はハートの形をしており、ストラップやキーホルダーに付けられるように一部に穴が開いている。


「一応知ってる奴がいたから聞いてみたが『恋のキューピッド』に似てるって情報が入った」

「恋のキューピッド? なんだそりゃ?」

「そいつの世界では恋愛を手助けする天使? みたいな、空想上の存在だとよ」

「じゃあ、その方の世界の転移物でしょうか?」

「そこまでは分からないが、見た目はソックリだと言ってるな」

「んで、危険性は?」

「解析部で確認済み。微妙に魔力反応はあったが、動く気配は無い。ま、安全だろうって判断だな」

「分かった。転移物オークションに出してくれ」


 転移物オークション。

 転移物で、とりあえず安全性が確認された物を世界中で販売していた。

 売上金は掛かった手数料を引いて、残りは全て慈善事業などに当てられる。

 登録時は実名だが買う時は匿名で買え、一定のプライバシー配慮もあった。

 もっとも重要なのは、何かの拍子で問題事に発展した際、破壊される事であり、返金なども一切されない。

 偶然起きた被害の請求はされないが、返金はできないので自己責任となる。

 また状況によっては返品もされない。

 それでもコレクターなどには大人気であり、時に大金が動く時があった。

 

「分かった。出す準備をしておく。で、ここからが本題なんだが……」


 と、ジンは資料とは別に持っていた紙の束をレウルの机に置いた。


「何だコレ?」

「あんた宛ての、職員からのありがたい言葉だ」

「何だよ。みんな俺の事を褒めちぎってるのか? 優秀な上司はつれぇな」


 嬉しそうにレウルが言いながら、ケイと一緒に紙の束を見る。

 リトも興味があるのか、レウルの身体から出てくると一緒に読み始めた。


『支部長ばかりモテておかしい! 俺たちにも出会いの場を下さい!!』

『ケイさんの手料理を毎日食べるなんて羨ましいです。もっと差し入れを下さい』

『どうしてエニさんが支部長の恋人なんですか!? 憎い!!』

『レウル×ケイ、ケイ×レウルどっちなんですか!? 本当はレウル×ジンとかないですよね? 気になって夜しか眠れません!!』


 など、他にも多くの意見があった。


「あの……これ一体何ですか?」


 眉をしかめながらケイが言う。


「職員からの支部長へのありがたいお言葉だよ。ちなみにメールでも職員から多数きてるぞ」

「……嘘だろ。何でこうなった?」


 信じられないといった様子でレウルが首を横に振っていると、リトが口を開いた。


「ねぇ、ジン。この『レウル×ケイ、ケイ×レウル』とかって何?」

「え?」


 不意に聞かれたジンが言葉に詰まった。

 ジンも当初は意味が分からず、職員に聞いて意味を知る。


「……いや、俺も分からん。気にしなくて良いんじゃないか?」


 しかしジンはとぼける事にした。


「レウルとケイは意味が分かるの?」

「さぁ? 何かの隠語か?」

「……分からないなら、気になさらない方が良いと思います」


 ジンに目配せしたケイは、お互いに頷く。

 そしてジンは咳払いをした。


「とりあえず、お前に妙な不満を持っている奴が大勢いるって事だ」

「いや、どうしろってんだ? そもそも何でこんな事になってんだよ?」

「エニさんの恋人宣言が火をつけたみたいだな」


 眠り姫・ルキナの案件終了後。

 レウルに長年の想いを伝える事ができたエニは、嬉しさのあまりいろんな所で話をしていた。

 時に間違った憶測が周囲に広まり、レウルの許可を得て会社を通して正式にレウルと付き合っている事を宣言。

 過去の事も話された事から「それなら仕方ない」という雰囲気になり、事無きを得たはずだった。


「まぁ、純粋な嫉妬心って奴だな。本部の仕事は忙しくて、プライベートの時間が時には犠牲になる。ちなみに、何もしてくれないならボイコットも辞さないとさ」

「嘘だろ……」

「嘘なら良かったんだがな。正直、こっちも頭が痛い。で、どうにかしてくれ」


 ジンだけではなく、レウルとケイも頭を悩ませる。

 仕事上、本気でボイコットはしないだろうが、それでも影響が出る事を考えると放置はできなかった。


「エニに相談してみたら? こういうのはエニの方が得意なんじゃない?」


 リトが一通り読み終えて言う。

 その言葉に、レウルたち三人の表情が変わった。


「そうか。確かにエニに相談した方が良さそうだな」

「良く考えれば、エニ様はその手のプロ。良い案をくれるかもしれませんね」

「助かったよリトさん。じゃあ、この件はできるだけ早めに頼む」


 至急、エニに連絡をするレウルだった。


******


 夜、レウルの家……。

 レウルから救援要請を受けたエニは、リビングでレウルが受け取った職員のありがたい言葉を読んでいた。


「……なるほど、確かにちょっと面倒な事になっていますね」

「だろ? で、これはその道のプロにご教授願いたいと」

「何か良い手はありませんか?」


 一通り読み終えてエニが紙をテーブルに置く。

 レウルとケイはエニの言葉を待っていた。


「こういう欲望は、発散させるのが一番でしょう」

「発散ってどうすんだ?」


 エニは少し顎に手を当てて考える。


「実は丁度新しい事業を始めようと思ってまして。出会い系パーティーです」

「それって、あの恋人や結婚相手を探すアレか?」

「ですが、他でも普通にありますよね?」


 出会い系パーティーなどは他の業者もおり、特別珍しい物ではなかった。


「今回は現実でしますが、ゆくゆくは夢の中で行おうかと。そのデモンストレーションです」

「夢の中で?」

「知っての通り、我が社は障害福祉も行っております。動けない人は、そもそも出会うこと自体が難しい」

「そうですね。移動するのも大変でしょう」

「そこで、精神世界を繋げて一つにして、多くの人に出会いの場を作る計画を立てていました。ただ、まずは現実世界で行って問題点などをあぶりだそうかと」

「なるほどな。だからデモンストレーションか」

「夢、精神世界と言えど、いざとなれば会うのは現実ですからね。できるだけリアリティが欲しいのです」

「職員に出会いの場を与えて、嫉妬心を少しでも無くしてもらおうと言う訳ですね?」

「そうなりますわね」


 ケイの問いにニッコリとエニは笑顔で答えた。


「しかし、費用とかはどうしたもんかな。流石に本部から出す訳にはいかないし」

「それでしたら、無料で結構です」

「え!? それは悪くないか?」

「元々テスターを募集して無料で行う予定でしたので。ただし終わった後、必ず細かいレポートは書いていただきますが」

「なんか悪い気がするが、頼らせてもうらか」

「ただし、レウルとケイさんも参加して下さいね」

「私たちもですか?」

「今回お呼びするのは第一支部職員に限りますので、何かあった時のためにお二人が居ると何かと都合がいいのです」

「確かにそうだな。責任者としても顔を出さないとダメか。分かったよ。後で細かい事を詰めよう。しかし、これで肩の荷が下りたぜ……」


 大きな溜め息をレウルが吐く。

 こうして、エニ主催の「第一支部職員出会い系パーティー」が決定した。


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